言ってはいけない言葉だったと理解するには遅すぎた。

守屋海里

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順番が逆にもほどがある!

※『言ってはいけない言葉だったと理解するには遅すぎた。』の翌日です。



 ヴヴヴヴ、とバイブ音が聞こえた。スマホが震えているのかと思って手を伸ばそうとして、手首が固定されていることに気付いた。そして襲ってきたのはナカから込み上げてくる快感。



「あ、目ェ覚めた?」

「ぁぁッ、な、に……これ……」



 大塚が楽しげに目元を細めてオレを見下ろす。手にしているのはスマホだ。カシャカシャとシャッター音が聞こえて撮られていることに気付き、オレは「やめろ!」と叫んだ。それが気に入らなかったのか、オレにリモコンを見せつけて強のボタンを押した。



「ひゃぁああっ!」



 振動が強くなって躰が跳ねる。大塚はリモコンをベッドに置くと、スマホを構えたままバイブを掴みゆっくりとスイングさせる。ゾクゾクとしたものが躰中を巡り、息が荒くなっていく。大塚を見ると、うっとりと恍惚の表情を浮かべていた。

 ――なんで、と震える唇で問うと、大塚はただ微笑んだ。



「ここ、気持ちいいだろ?」



 バイブをぐりぐりと浅いところに押し付けられる。そこから強烈な快感が襲ってきて、オレは唇を噛み締めて声を殺す。ぬちゅぬちゅといやらしい音を響かせながら、大塚はバイブをスイングさせる。



「ナカの気持ちいいところ、たくさん触ってあげる」

「ひぁッ! ぁ、ァあああッ!」



 大塚はスマホを置くと手を伸ばしてオレの乳首を抓った。乳首への刺激とナカでの刺激でイってしまった。陰茎に一度も触ることなく……。オレが呆然としていると、大塚は優しく微笑みながらバイブを抜いた。スイッチを切って、それからオレの上に跨るようにベッドに乗り、オレの頬を撫でる。



「すっかりナカでイけるようになったな」

「……? それ、どういう――……」



 オレの口を塞ぐように大塚の唇が重なって、思わず目を大きく見開く。驚いて開いた唇の隙間から舌が入ってきて、舌を引っ込めようとしたら追いかけて絡まれた。なんで? なんでオレ大塚とキスしてんの? って言うかこの状況なんなんだよ!?



「んぅ……!」



 唇が重なったまま大塚の手が下へと向かい、的確にオレの乳首を捉えてクリクリと弄る。一度出して萎えた陰茎が再び頭をもたげる。舌を吸われて乳首を引っ張られて快感が広がって……奥がきゅんと疼いた。



「やっぱ落合の感じてる顔、可愛いな」



 長いキスが終わって、頭がぼーっとしていた。大塚がそんなオレを見て細く笑みを浮かべ、ぐっとオレの膝裏を持ち上げて熱いなにかを後孔に押し付ける。そして――……。



「ぁ、ァアアああっ!?」



 一気に貫かれた。なにが起こっているのか理解出来ない。したくない。ただ、オレの気持ちとは裏腹に、ナカはきゅうきゅうと嬉しそうに大塚の熱い肉棒を歓迎していた。



「や、やだ、やだやだッ!」

「なにがイヤ?」



 イヤイヤと首を振るオレに、大塚が腰を動かしながら聞いてくる。ゆっくりと奥をぐりぐりされて口から喘ぎ声が出る。なんでこんなに感じるのかがわからなくて怖い。大塚が別人のように見えて怖い。手首が縛られているのも怖い。怖いこと尽くしなのに気持ち良くて、涙がポロポロと出てくる。

 大塚はそれを舐め取って、もう一度優しく「なにがイヤ?」と尋ねてくる。



「こわ、怖いッ! なんでっ」

「なんで?」

「きもちい、の、ヤダっ」



 大塚はオレの腰を掴むと、激しく突いてきた。頭が真っ白になる感覚。涙で歪む視界で見えたのは、大塚の紅潮した表情だった。唇をぺろりと舐めて、ナカの感じるところを的確に刺激していく。なんでこんなに気持ちいいのかがわからない。だってそんなところ弄ったことなんてないのに。それともオレの躰は変態なのか。



「気持ちよくて良いんだよ、落合」

「ふっ、ぁ、やだぁ……ッ」

「だってずっと、俺が落合の躰をナカで感じるように触ってたんだから」

「…………え?」



 大塚の言っている意味がわからなくて聞き返そうとしたら、奥の奥へと大塚の肉棒が入り込んで来そうになって暴れた。どうして、なんで、なんのためにこんなことしているんだ――……。



「あ、ぁ、……ひっぁ、ァああっ」

「絶対俺、落合自身より落合の感じるところ知っているよ」



 ふふ、と笑って大塚が腰を動かす。奥へと入り込まれてビクビクと躰が痙攣した。目の前がチカチカとしてきて、わけのわからない快感の中でただ喘ぎ声を出すしか出来なくて、ひたすら「やだ」を繰り返す。



「寝てる時は『やだ』なんて言ったことないのに。やっぱ起きてると反応違うな。でも、ほら――ここ、気持ちいいだろ?」

「やっ、ぁ、またっ、い、イくッ! や、ァアアあっ!」



 ぐりっ! とナカを刺激されてぎゅうとナカが勝手に締まる。はっはっ、と浅い息を繰り返すと、大塚がぐっと眉を寄せた。そして、ドクンと肉棒が脈打つのがわかった。熱い液体がナカに出されて、オレも再び白濁の液体を吐き出す。



「……かわいい」



 ぽつりと大塚が呟く声が聞こえた。快感が抜けない。そもそもまだ大塚の肉棒がオレのナカに入っている。大塚はオレをぎゅっと抱きしめた。――オレ、また陰茎に触らずにイった……? 自分の躰がこんな風になっているなんて信じたくなくて、目を閉じるとナカの肉棒が再び大きくなっていくのがわかった。



「も、やだっ、抜けッ!」

「だめ。落合にはもっと俺を感じてもらわなきゃ」



 そう言ってまたピストンを始める大塚に、オレは気が遠くなった。そのまま気を失ってしまいたかったのに、大塚はそうさせてくれない。

 そしてその日、オレは何度も大塚の精液をナカで出されて、最終的には自ら腰を振って快楽を貪った。感じている間はなにも考えなくて良かったから。朝から始まった行為が終わったのは、夕方頃だった。



「なんで、こんなこと……」



 動けなくなったオレを大塚が備え付けの浴室まで運び、一緒にシャワーを浴びて躰を洗い、ナカの精液を掻き出された。ぐったりとしているオレに、流石にやり過ぎたと思ったのか大塚が甲斐甲斐しく世話を焼く。



「落合が好きだから」



 ――さらっと言われたけど、理解できなかった。好きだから? こんなことをした、と?



「落合だって俺のこと好きだろ?」

「どこから出るんだよ、その自信!」

「めっちゃ感じてたじゃん」

「それは大塚が! って言うか順番が逆にもほどがあるだろ!?」

「逃がしたくなかったから、俺じゃないとイけない躰にすればいいかなーって」



 …………同室の同級生が言っている意味がわからない。

 そしてオレは、大塚から寝ている間にしていたことについて聞かされ、開いた口が塞がらないとはこのことか、と理解した。



「お前バカだろ!」

「ついエスカレートしていって……。落合も気持ちよさそうだったし」



 寝ている間のことなんて覚えてねーよ! と頭を抱えると、ちゅっと髪にキスをされた。



「気持ち良かっただろ? 何度も後ろでイってたし」

「知らないッ!」



 オレはベッドに潜り込んで頭まですっぽりと布団をかぶった。うう、まだ大塚の肉棒が入っている気がする。って言うかこれ、本当に大塚が居ないとイけない躰になったら……と考えてゾクゾクした。後でちゃんと確認しよう……。三連休で明日も休みだし……。大塚が出掛けますように、と心の底から願った。









 とにかく可愛いとしか言いようがなかった。やだ、こわい、と涙を流す落合を抜かずに何度抱いただろうか。俺ってこんなにサディスティックだったっけ? と思わず首を傾げるくらい。

 落合に今までのことを告げると、事情が飲み込めていないようだったけど、理解すると顔を真っ赤にして怒鳴った。だけどさ、落合。お前本気で怒ってないだろってわかる怒鳴り声だった。

 落合のこういうところも好きだなぁと感じる。それにしても――俺が仕込んだこととは言え、陰茎に触れずに後ろと乳首だけで何度もイった落合は、果たしてノーマルに戻れるんだろうか。逃すつもりはないけれど。

 そんなことを考えてから眠り、翌日、売店で落合の好きなお菓子やジュースを買って寮の自室に戻ると、落合の姿が見えない。出掛けるとは聞いていないから、どこかには居るんだろうかと耳を澄ませると浴室のほうから掠れた声が聞こえた。

 買って来た商品を冷蔵庫に入れてからこっそりと浴室の扉を薄く開く。落合は鏡の前に座って目を閉じ、何度も陰茎を扱いていた。片手で陰茎を扱いて、片手で乳首を爪でカリカリと刺激していたけれど、イくことは出来ないようで、涙声で「なんでぇ」と扱く手を早めていた。

 そんなに乱暴にやったら痛いだけだろうに。でも一生懸命に扱いている姿が鏡に映っていてこれはこれで興奮する。

 昨日一度も陰茎に触れずにいたから不安になったんだろう。そして、その不安は的中した、と。



「……ッ、ぅぅう……」



 諦めたのか乳首を弄る手を下げて、恐る恐ると言うように足を開く落合の姿が見えた。目を閉じている落合は俺に見られていることに気付いていない。



「んぅッ」



 つぷっと落合の指が後孔に入る。探るように指を動かしているのを見て、俺は薄く笑みを浮かべた。感じる場所を探しているんだろう。自分のナカなのに感じる場所がわからないからか、落合は「も、やだぁ……」と涙を流す。やばい、めっちゃ可愛い……。昨日あれだけしたと言うのに、俺の下半身は欲望に正直だ。

 結局探り当てられなかったのか、自分でナカを刺激するのが怖くなかったのか、指を抜いて肩を震わせた落合。



「……なんで、奥が疼くの……。大塚のバカ、責任取れ!」

「……取って良いの?」

「ひっ!」



 背後から声を掛けられて落合の肩がビクンと揺れた。鏡越しに視線が合う。落合はばっと後ろを向いて俺の姿を認識すると顔を真っ赤にさせた。俺は落合に近付いてしゃがみこみ、キスをしながら落合の後孔に指を入れた。



「んぅ―ッ!」



 落合の感じるところをこりこりと刺激すると、落合はあっという間に精液を放った。……とはいえ、昨日散々出したから、粘度のあまりない液体だった。唇を離して落合の顔を見ると、瞳が潤んでとろんとした表情を浮かべていて「ぁ……ん」と甘い声を出した。



「前だけじゃイけないみたいだな」

「だっ、誰のせいだと……!」



 はっと我に返った落合が俺を睨んだけど、涙目で睨まれても可愛いだけで怖くない。って言うか俺の目にはどんな落合でも可愛く見えるのだから……。俺は黙って落合を立ち上がらせて鏡の前で手をつかせて大きく足を開かせる。さっきまでの快感で躰が言うことを聞かないのか、落合は大人しく鏡にくっついていた。



「お、おおおお、大塚!?」



 焦ったような落合の声が聞こえた。俺はそれを無視して落合の後孔に舌を伸ばして舐めた。



「やだっ! 大塚ッ! やだって……んァああっ!」



 舌をナカにねじ込むと一層高い声を上げる落合。下品な音を立てながら後孔を舐めていると落合の腰が揺れた。まるで物足りないとばかりに揺れる腰。俺は舌を抜いて落合の尻を揉む。ちゅっ、ちゅっと尻にキスをして、吸い付く。ここなら誰にも見られないだろ。昨日は落合の反応を見るのが楽しくてキスマークを付けるってことを忘れていた。



「お……つか……、おく……」

「奥まで欲しい?」



 こくんとうなずく落合に愛しさがこみ上げる。立ち上がってすっかり勃起した肉棒を取り出し落合の後孔に当てる。落合ははやく、とばかりに腰を動かす。その腰を掴んでぐっとナカへ挿れると、落合が嬉しそうに嬌声を上げた。



「あっあっあっ」



 ピストンを始めると俺の動きに合わせるように落合の口から喘ぎ声が漏れる。俺の肉棒をぎゅうぎゅうに締め付けて気持ちよさそうに腰を振る落合。そのうち足ががくがくとし始めたから、俺は繋がったままゆっくりと椅子へ座り、落合を俺の上に座らせた。自分の体重で深く肉棒が入り込んだことに落合が「ひぃぁああっ!」と可愛い声を上げる。



「ぁ、ぅ……きもちいい……」



 熱に浮かされたような甘い声。落合の胸元に手を回して両手で乳首を摘んでクリクリと捏ね繰り回す。ちゅっちゅっとリップ音を響かせてうなじにキスマークを付けた。落合は感じすぎているのか、ポロポロ涙を流しながら喘いでいる。

 あー……もう、本当、なんでこんなに可愛いかな……。

 乳首を刺激するとナカがうねる。まるで俺の精液を求めているかのように。



「あ、あぁあっ、い、イく、イっちゃう……ッ」

「ん、俺も……」

「あっ、あっ、ァアアあああッ!」

「――ッ」



 ナカに出すと落合がくたりと気絶してしまった。昨日の今日で……いや、土曜日から連続でヤっていたからか落合の体力が尽きたようだ。俺は落合の躰を綺麗に洗い、ベッドまで運んだ。

 一時間くらいしたら落合が目を覚まし、買ってきていたジュースを渡すとごくごくと一気に飲み干した。



「で、責任取って良いの?」

「……ッ!」



 顔を一気に真っ赤にさせた落合が視線をあちこちに彷徨わせる。



「喜んで責任取るよ、俺」

「う……」



 顔を俯かせた落合はちらちらと俺を見て、「あのさ」と口を開いた。俺は黙って落合の言葉を待つ。落合は数回深呼吸を繰り返してから顔を上げてじっと俺を見つめる。俺が首を傾げると、はぁーっとジト目でため息を吐かれた。



「……変態」

「うん」

「もうオレが寝ている間にするなよ」

「うん」

「写真消せ」

「ヤダ」

「おい!」



 怒った顔しているけど、本気で怒ってないのがわかる。落合はそれからバフっと枕に顔を埋めて、俺を横目見ると一言だけ、小さな声で呟いた。



「浮気するなよ」

「心配しなくて良いよ。俺、落合に心底惚れているから」



 落合が逃げようとしても、逃がしてあげられないくらいに、とは流石に言わなかった。

 一年以上掛かったけど、ようやく落合を手に入れることが出来た。入学式の時から目をつけていたとは言わないでおこう。最愛の恋人を手に入れて、これからの学校生活がとても楽しくなりそうだと舌で唇を舐める。

 ――ローター入れたまま授業を受けさせる、とかね? 顔を真っ赤にしてモジモジしている姿を想像して、やっぱり俺、サディスティックになっているような気がしてきた。……落合、どこまで許してくれるかな。許されるならどこまでも、俺が居ないとダメなくらいドロドロにして依存させたい。――俺なんかに捉まってかわいそうに。

 そっと落合の髪を撫でると、落合は顔を俺に向けてくすぐったそうに笑う。幸せそうなその表情を見て、俺も表情を緩めた。
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