言ってはいけない言葉だったと理解するには遅すぎた。

守屋海里

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佐々木先生と大塚兄が宅飲みして色々しちゃう話。

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「それでは、カンパーイ!」

「かんぱーい。……センパイ、ふたりで乾杯ってなんか虚しくないですか」

「え? そう?」



 とりあえず高く掲げられたビールジョッキを下げてもらう。今日は久しぶりに、センパイから声が掛かった。弟に恋人が出来た祝いだとたくさんのアルコール飲料を買って、宅飲みというわけだ。

 ひとり暮らしをしているセンパイの部屋は、きっちりと整理整頓されていてとても綺麗だ。おれとは正反対。おれの部屋は中々に散らかっているから、急に声を掛けられる時は大体センパイの部屋にお邪魔している。センパイはぐびぐびと美味しそうにビールを飲んで、おれもビールに口をつける。やっぱり最初の一口は最高にうまい!



「一輝に恋人が出来るなんてねー。あんな外面だけが良いヤツが」

「実の弟に対して厳しい態度ですねぇ」



 酒を買うついでにつまみも一緒に買った。ポテサラとかサラミとか。



「まぁ、おれも一輝が割と小さい頃からの付き合いだからわかるけど」



 あの時のおれは自分のことでいっぱいいっぱいで、一輝の外面の良さに気付いたのは結構遅かったけど。ほとんど寮に居るから関わりもなかったし。最初に気付いた時は、こいつも結構な闇を持ってんだなぁと思ったものだ。



「一輝は要領良いからね。冷めてるところもあったから、あのまま成長したら恋人なんて出来ないんじゃないかと思ったよ!」

「……その恋人も大変そうだったけどな……」



 今日のことを思い出して肩をすくめる。何だかんだと感じていたから、落合も満更ではなかったんだろうか。自慢したいがために振り回される落合も可哀想に。



「何かあったの? 落合君だっけ?」

「あ~……。一輝に振り回されている、ような……?」

「……自慢でもされた?」



 こくりとうなずくとセンパイはくすりと笑う。その笑みがどういう意味なのかわからなくて首を傾げると、センパイは声を弾ませた。



「好きな人を自慢したいなんて、一輝らしいよね。一度手に入れた物は『俺のだ』って言ってきかなかったもん。なつかしー」

「……そういう教育をしていたのは大塚家でしょうに……」



 そもそも一輝が冷めていたのも、一度手に入れた物を絶対に手放そうとしなかったのも、大塚家の家庭環境に問題があると思うのだが。俺も詳しく知るわけじゃないから、何とも言えないが。



「まー、うちの家庭環境も決して良いとは言えなかったからなぁ。仮面夫婦って丸わかりだし、浮気しているのも隠してなかったし、情操教育には悪いよねー」



 ……よくもまぁ、そんなことを明るい声で言えるものだ。



「まぁ、どっちもあんまり家に居なかったから佐々木を隠せたんだけど」



 肩をすくめるセンパイに、苦々しい記憶が蘇る。高校の頃に同級生数名に暴行されたという、消し去りたい過去。ボロボロになった俺をセンパイが介抱してくれた。その後、センパイが学校に手を回したのか俺に暴行を加えた連中は全員退学処分になっていた。他にも色々やらかしていたらしい。

 とはいえ、教室に向かうのは身体が拒絶して保健室登校をしていた。その時にただ優しく迎え入れてくれた保健医に救われた気がした。だからおれはこの道を選んだのだ。



「その節はお世話になりました」

「いえいえ。で、どう? 使ってくれてる?」

「使うわけねーでしょ」



 何が楽しくてディルドを使わなければならんのか。ぐびぐびとビールを飲み進めるセンパイ。ジョッキが空になりそうだったから残りのビールを注ぐと「ありがと」とまた飲む。今日は良く飲むな、この人。



「ちゃんとネコの子が気持ちいいって言ってた商品だよー?」

「いや、おれケツ使う気ないんで」

「乳首のは?」

「それも使う気ないんで」

「え~」



 酔っているのかセンパイの目が段々と据わってきているような気がしてきた。



「EDを治そうと色々開発してるのに~……」

「余計なお世話にもほどがあるでしょう……」



 呆れたように言えば、また「え~」と言われた。そして、ふと思いついたようにセンパイは立ち上がり、戸棚から紙袋を取り出すと戻ってきてテーブルにアダルトグッズを広げ始めた。



「何か気になるのないの?」

「ないからしまって下さい。なんか居た堪れないから!」



 ピンと張ってるディルドやら変な形のバイブやら、見たことあるようなピンクローターやこの前もらった乳首専用のローターとか。よくもまぁこんなに開発したものだ。しかしおれは乳首もケツも使う気がないからもらったところで処分に困るだけなんだが……。いっそ一輝に全部あげようか。……いや、一輝のことだからセンパイからもらっている可能性が高いな。



「そもそも、こういうのってセンパイは使ったことあるんですか?」

「え? ないよ。開発部のネコの子や気持ちいいことが好きって女性が試してるから」

「……ふーん……。あ、思い付いた。じゃあ、これら、センパイに使わせてよ」



 おれも酔っているんだろうか。ふと思いついたことを口にすると、センパイはきょとんとした顔をして「何それ実験?」と笑った。そして、思いもよらないことを言いだしたのだ。



「じゃあシャワー浴びないとね」

「……え?」

「試すんでしょ? 佐々木と俺の体型はあんまり変わらないから……いや、試すんなら気にしなくて良いか。バスローブだけ出しておくね、ほら、シャワー浴びる!」









 どうしてこうなった、と自分に問いたい。シャワーを浴びてドライヤーで髪を乾かして、寝室のベッドの上に座っている。冗談のつもりで言ったのに……あ、センパイやっぱり酔ってたんだ、きっと。シャワー浴びれば冷静になって、「ごめん、どうかしてた!」と口にするハズ――……。

 かちゃり、と寝室の扉が開いた。センパイもシャワーを浴びて上気した頬で紙袋を持っておれの隣に座る。そして、若干ワクワクしているように目を輝かせて「どれから試す?」と紙袋をおれに渡した。



「えーっと、本当に良いんですか、試しちゃって」

「うん、まぁ……佐々木なら良いかなって」

「そうですか。ふーん……。じゃあ、バスローブ脱いで横になって下さい」



 ちょっと恥じらうように頬を染めてバスローブの結び目を解く。ぱさりと軽い音を立ててバスローブが床に落ちた。そして、大事なところを隠すかのように片手を股間に置いてゆっくりとベッドに横になった。おれはごそごそと紙袋からローションっぽいものを取り出す。



「センパイ、これどういうの?」

「それははちみつ味のローション。そのまま舐めても美味しいよ。舐めても無害のヤツ」

「へぇ」



 キャップを開けて中蓋を外し、少しだけ指に取り出して舐めてみる。あ、本当にはちみつ味だ。甘い。さらさらしているかと思ったら結構粘り気があった。こういうのもセンパイたちが開発しているのか。



「色々足していったら冬場の保湿にちょい足しすると良いとか、女性たちに人気だったよ」

「……なんか饒舌ですね」

「緊張しているのかも、はは」



 ふぅん、と適当に返事をしてローションを手のひらにたっぷりと取り出す。このままだと冷たいだろうから手で温めて、センパイのお腹から塗っていく。マッサージ師にでもなった気分だ。ぴくんとセンパイの躰がちょっとだけ動いた。



「広げていきますね~」

「なんの真似、それ?」

「んー、悪徳マッサージ師?」



 あはは、と笑うセンパイ。どうやら緊張は解れたらしい。ローションを塗るとセンパイの躰がとても艶やかに見える。コリを解すように鎖骨を撫でる。マッサージを受けているような感覚なのだろうか。ぬるぬるになってちょっと手が滑る。まだ何もしていないのに、センパイの乳首が勃っているのが見えた。



「センパイ、ここ触って欲しそうにしてますよ」



 ちょん、と乳頭に指の腹で触れると「ァッ」とセンパイが小さく声を出した。その声がなんだか股間に響く気がして、もっと聞きたくなり乳首をきゅっと摘まんでみる。



「んぅッ」

「すっげぇコリコリしてますね。気持ちいいです?」

「な、んか……変な感じ……ッ」



 揉むように強弱をつけて摘むと、センパイの声が甘さを含む。……舐めても良いローションだし、と片方の乳首を含んで舌で転がしてみると、センパイが「ふぁッ」と驚いたような……いやむしろ嬉しそうな声で喘ぐ。



「あ、そう言えば……」



 紙袋の中に、一輝が落合に使っていたようなものがあったのを思い出し、手を伸ばして紙袋を漁る。

 目的の物を引っ張り出して、センパイの乳首につける。乳輪まですっぽりと吸引されて、落合の時はあまり思わなかったけど、エロいな、これ。じっくりと観察すると、センパイがもじもじと足を擦り合わせたのに気付いた。

 股間を隠していた手を剥いでみると、センパイの陰茎がトロトロと先走りを流して勃っていた。



「溜まってました?」

「ぅ……」



 図星みたいだ。まだ乳首くらいしか弄ってないのに。そう言えば吸引しただけでローターは使ってない。ローターを使うと、吸引カップから棒のようなものが出てきてセンパイの乳首回りをくるくると回りながら振動していく。



「んぁっ、ぁああ……ッ」



 センパイの陰茎に手を伸ばして、羨ましいなと思いつつ先端を撫でる。トプトプと先走りを流す窪みに爪を立てると、センパイが甘い声を上げた。気持ちよさそうな表情で喘いでいるのを見て、次はどれを使おうかと悩む。



「センパイ、これも使って良いの?」



 細めのバイブを紙袋から取り出して、センパイの頬にペタペタくっつける。センパイはバイブを見るとちょっとだけ悩むように黙ってしまったが、すぐにこくんとうなずいた。それじゃあ、とおれはローションを取り出して手に取り出し、擦り合わせるとセンパイの後孔に塗り付けた。

 ――慣らしていないのはめっちゃ痛いからな――……。突っ込まれた時を思い出して眉間に皺を刻むと、センパイが「……やめる?」と聞いてきた。



「え?」

「佐々木、なんか……つらそうだから」

「んー……。いや、やります。センパイの感じている声、結構好みですし」

「ァッ!」



 後孔に一本指を挿れた。広げるようにぐるぐると指を動かす。こりっとしたしこりを見つけて、そこを突くとセンパイはまるで魚のように跳ねた。



「……んぅ、ぁ、ぁあっ、そ、こ……!」

「センパイの躰が敏感なんですねぇ。生粋のネコだったりして」



 二本目の指を挿れてぐちゅぐちゅと音を立てて後孔を広げていく。ローションのおかげかとてもスムーズだ。三本目もすぐにはいった。



「じゃ、これ挿れますね」



 バイブの上にスキンをつけて、ローションをたっぷりと掛けた。初心者用っぽいし、これで充分だろ。後孔にバイブの先端で今から挿れますよとばかりにぐりぐり擦る。ゆっくりとバイブがセンパイの後孔にはいっていく。センパイはぴくぴくと小刻みに震えていたけど、気持ちよさそうな顔をしていた。



「全部はいりましたよ」



 かち、とスイッチを入れるとバイブが振動し始めた。弱にしているからまぁ大丈夫だろう。



「……ぁ、な、んか、すっごい……異物感……」

「そりゃそうでしょうね。じゃ、こっちのほう強めますか」



 乳首につけていたローターのリモコンを操作して、振動を強めた。センパイは「ァああっ!」と抑えきれない嬌声を上げる。センパイのイきたそうだな、と思い手で扱いた。センパイは溜まっていたせいもあるのか、すぐに「ひぁ、ァァァアアああっ!」と躰を弓なりに反らして達した。白濁の液体は派手に飛んで、おれの着ているバスローブまでに飛んできた。それに気付いたセンパイが、



「ご、ごめん」



 と起き上がっておれのバスローブを脱がそうとした。そして、ふたりで異変に気付く。

 ぱさりと乾いた音を立ててバスローブが床に落ち、全裸になったおれの股間にセンパイは目を大きく見開いて――それからポロポロ涙を流し始めた。

 緩くだが反応している。今まで全然、何をしてもダメだったのに……。



「さ、触っていい?」

「ど、どうぞ?」



 どもってしまうのは仕方ないだろう。ずっと勃たなかったものが反応していたのだ。センパイに言われてベッドの端に座り足を軽く広げ、センパイがベッドから降りておれの足の間に入るという格好になった。センパイは念のためにとローションを手にして、手を濡らすとそっと肉棒に触れた。冷たさにぴくんと躰が動く。くちゅくちゅと水音を立てながら扱いていく。先端をくるくる指で刺激したり、裏筋を擦ったり、カリ首を刺激したりされどんどんと大きくなっていく。

 久しぶりの快感すぎて小さく声が漏れる。センパイはうっとりとした表情でおれの肉棒を見つめて、先端にちゅっとキスをした。おれが驚いてセンパイを引き剥がそうとしたけど、それより早くセンパイはおれの肉棒を口に含んだ。

 舌で一生懸命に舐めて、口に含めないところは手で擦って、時々吸って。味わうようにねっとりとしたフェラを受けて、おれはすぐに達してしまうのを感じた。口の中に出すわけには、とセンパイに伝えようとした瞬間に、舌で先端を刺激されてあっという間に達してしまった。



「せ、センパイ!? すみません、大丈夫ですか?」

「んっんっ……」



 何度かにわけておれが出したものを嚥下してくのを見て驚いた。そして、全部飲み終わると「まだ出そう?」と潤んだ瞳で聞かれた。センパイがおれの肉棒を扱いてみると、みるみるうちに元気になっていった。



「すごい……」



 いい子いい子とばかりに肉棒を撫でるセンパイ。おれらは互いにごくりと唾を飲み込む。雰囲気に飲まれているのはわかっている。

 だけど――……。



「ね、……これ、挿れて?」

「……良いんですか?」



 首を縦に振るセンパイ。センパイはベッドに戻り横になると、自分で足を開いた。ブルブル震えているバイブの振動を切って静かに引き抜くと、誘うかのようにくぱくぱと後孔が収縮を繰り返す。

 スキンをつけて、センパイの後孔に肉棒を挿れていく。



「ぁぁあ……ッ」



 しこりを肉棒で擦ると、センパイが気持ちよさそうに喘ぐ。気持ちいい、気持ちいいとばかりに恍惚の表情を浮かべているのを見て、この人こんなに可愛い人だったっけ? と思ってしまった。

 最奥までゆっくりと進めていく。なるべくセンパイの躰に負担が掛からないように、だけど、センパイはおれの理性を試すようなことを言う。



「佐々木の……きもちいい……もっと、ほし……ァァああああっ!」

「……おれ、余裕ないんで煽んないでもらえます……ッ?」



 なにせ本当に久しぶりに勃ったもんだから。おれが動くとセンパイの口から嬌声が飛ぶ。それに、センパイも負けじと腰を動かし、ナカを締め付けるのだからすぐに達しそうになる。ぐちゅぐちゅと結合部から水音が部屋に響き、パンパンと肉のぶつかり合う音も響いた。



「ぁっ、ァァッ! んぁ、ァァああっ」



 気持ちよさそうなセンパイを見ていると、もっと気持ちよくしてあげたくて乳首につけているローターの振動を更に上げた。途端にきゅうっとナカを締め付けられ、思わずイきそうになった。



「センパイ、気持ちいいですか……ッ?」

「ふぁ、ぁ、んぅ……きもちいいっ」



 どうやらしっかり感じているみたいだ。……この人、本当に生粋のネコなんじゃ?

 おれも気持ちいいし、そこら辺はまぁ気にしなくても良いか。奥のほうを突いてみると、センパイの躰がビクビクと跳ねる。センパイも限界が近いのだろう。

 おれに向かって手を伸ばすセンパイ。躰を近付けるとぎゅっと抱き着いてきた。



「ん、ぁ、……ァァァああッ!」

「――ッ」



 センパイの陰茎を扱いているとナカがうねる。まるでおれの肉棒から精液を搾り取るかのように。スキンをしているとはいえ、センパイのナカで達してしまった。センパイはおれの髪を優しく撫でる。



「……きもちよかったぁ……」



 甘えたような言い方で言われて、おれもぽんとセンパイの頭を撫でた。だが、確実に明日、センパイは筋肉痛のようになっていると思うから、今日はここに泊めてもらうことになった。まさかセンパイでEDが治るとは……。そして躰の相性がここまで良いとは……。

 眠そうなセンパイを見て、このまま寝かせるべきかシャワーを浴びせるべきかと悩んだが、結局おれも眠さに負けてしまい、センパイのナカから肉棒を抜くと、センパイが「ぁん」と喘ぐ。それでも眠さには勝てないようで、そのまますやすやと眠ってしまった。

 おれも眠くなったし、悪いけどこのまま寝かせてもらおう……。目を閉じると睡魔はすぐに襲ってきた。









 後輩のEDが治った……ようだ。あれだけ立派なものを持ちながら、宝の持ち腐れだったもんな……。だが、EDが治ったのは限定的だったようだ。

 初めて佐々木に抱かれてから一ヶ月の月日が経ち、その間佐々木とは連絡を取っていなかった。昨日、珍しく佐々木から「飲めませんか」ってメールが来て、これは何かあったな、とすぐにわかった。

 だって、佐々木がおれに連絡をよこすのは、弟の一輝のことか相談したいことがある時くらいだ。今回は後者だろう。佐々木の部屋で飲むことになるのかと思ったが、俺の家が良いと言われたので招いた。



「じゃあ、カンパーイ」

「かんぱーい。……だからこれ、ふたりでやる意味あります?」



 ぐびぐびとジョッキを傾けてビールを飲む。この喉越しがたまらない!



「で? 相談でもあるの……?」



 ポテトチップスをつまみながらそう尋ねると、佐々木はずーんと肩を落とした。



「……センパイ、ちょっとおれの触ってくれません……?」

「はい?」

「勃たないんです……。自分でやってもAV見ても!」



 どういうことだ、と思わず目を丸くする。リビングだけどここで触っていいものか。ま、どうせおれの部屋だし構わないか。俺が無遠慮に服の上からぎゅむっと掴んでみると確かに柔らかい。



「もうちょい優しく触ってくれません!?」

「ごめんごめん」



 柔らかく揉んでいくと、段々と硬くなっていくような……? 何度も揉んでいると佐々木の顔が赤くなっていく。そして、それを感じ取っているのか、佐々木は自分の手で顔を覆い隠して「はぁ~」とため息を吐いた。



「反応しているみたいだけど?」

「ええ。勃つ時もあったんですよ、センパイとしてる時を思い出すと自分の手でも抜けたんです」

「佐々木の勃つ対象が俺だけってこと?」



 こくりとうなずく佐々木に、俺は目を瞬かせて――それからにっこりと微笑んで「そっかぁ」と明るく言う。



「それなら、もういっそ付き合っちゃう?」

「……へ?」

「セフレのほうが良い?」

「あの、なんで乗り気なんですか……?」

「え? だって佐々木の顔格好いいし? 付き合っている人もいないし? 恋人欲しいなぁと思ってたし……それに俺なら勃つんだろ?」



 すっかり大きくなった肉棒をぎゅむっと掴むと、佐々木は観念したかのように「……恋人でお願いします」と頭を下げた。

 ――まさか俺でEDが治るとは思わなかったけど……。

 俺がアダルトグッズ開発部に就職したのは佐々木のためと表向きでは言っていたが、実際のところは違う。元から興味はあったのだ、人の手ではなく、機械で人の性感を高めるってことに。自分自身で使うよりは人に使ってもらったほうが気持ち良さそうだったし。

 それになにより――高校の頃から佐々木の顔は好みだったのだ。あの日居合わせたのは本当に偶然だったけど、俺が思っている以上に佐々木の中で俺の存在が大きいみたい。佐々木が気付いているかは知らないけど。高校の時に付き合っていた彼女と別れてからずっと仕事一筋でやって来たんだ。こういうことがあっても別に良いよな?



「まずはそれ、どうにかしようか。飲むどころじゃないだろ?」

「はは、確かに……」



 俺にしか勃たないって言うなら、そのままでいて欲しい。決して俺から離れないように。一輝のことを言えないな、俺も。俺も大塚家の血を受け継いでいるんだなぁと思わず肩をすくめてしまう。









 ――つかまえた。









 心の奥底で、俺がそう呟いた。

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感想 1

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みんなの感想(1件)

小説を書ける皆様、尊敬してます!

好きすぎて困る!!w

もっと2人の話が読みたいです(灬╹ω╹灬)┣¨キ┣¨キ*

2020.09.19 守屋海里

感想ありがとうございます♪

わー、とっても嬉しいです!
もうちょっと続きますので、楽しみにして頂けると幸いです(*´▽`*)

解除

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