BL漫画の主人公に転生したから地味に生きる。……つもりだった。

守屋海里

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7話

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 翌日。今日から普通の授業の始まりだ。朝起きて、身支度を整えて食堂に向かい、朝食を食べてから学園へ。近くて良いねぇ。全寮制だから家が近くても全員寮生。家が近かったら徒歩通学も良いと思うんだけど、そう言うわけには行かないらしい。
 午前八時半、ショートホームルームを終え、九時から一時間目だ。今日は四時限目で終了。昼食を終えたらオリエンテーションが待っている。……部活動案内とか、各自委員会の紹介があるらしい。で、それらを踏まえて明日の一時間目をホームルームで決めるらしい。……ルイ先輩はそう言っていたけど、俺はもう生徒会に所属することになっているから色々免除。早速手伝ってと言われているので、昼食を終えたらユーゴと一緒に会場の準備だ。
 授業は滞りなく進み、何とか俺でもついていけそうだと思った。わからなくなったらルイ先輩に聞こう。
 二時間目は体育……と言う名の剣術だ。貴族は一応全員参加することになっている。なぜ一応かと言うと、身体の弱い人は無理だからだ。そう言う人は体力ではなく頭脳勝負になるようで戦術の授業になるらしい。ちなみに俺らは強制参加だ。戦っている時に、作戦が伝わらないのを危惧しているらしい。以前、何かあったのかもしれない。

「それじゃあ……あー、同じ生徒会役員同士、アーサーとユーゴ、前へ」

 ……なんでそこで生徒会のことをばらすかな、先生よ! 一気にクラスメイトたちがざわついたじゃないか!
 ……指定されたのだから仕方なく俺は前に出る。ユーゴも俺の隣に来た。

「剣術の経験は?」
「家で少し……」
「元騎士団長、直々に」

 嫌そうに、渋々と答えるユーゴ。元騎士団長から剣術習っていたってことだよなぁ。公爵家の次男って大変だなぁ……。いや、元騎士団長って風の噂でしか聞いたことのない人だけど……。先生は「それは……。いや、そうか」と言葉を濁していた。

「それじゃあ、基本からだ。型は習ったか?」
「……型?」
「アーサーは知らんのか。ユーゴは?」
「どの型ですか。一応一通り習いましたけど」

 型ってそんなにあるの!? と俺が驚いていると、先生はゆっくりと息を吐いた。そして、俺とユーゴを見て、「アーサー、どんな剣術を習ったんだ?」と尋ねられたので、俺は素直にこう言った。

「オリジナル……?」
「なんでそこで疑問系なんだ!」

 先生のツッコミが入った。だってそうとしか言いようがなかったから……。俺の剣術は多分、あまり知られていないと思うんだよね……。兄と一緒に「こんな剣術あったら楽しいよね!」とそんなコンセプトで作った剣術だから……。

「アーサーと打ち合いをしてみても?」
「……そうだな。互いの実力を見るためにも」
「ええと、あの。基本の型知らないんですけど、良いんでしょうか……?」
「お前の実力が気になる」

 気にしなくて良いのに。俺とユーゴは打ち合いすることになってしまった。互いに距離を取って、それから先生の「始め!」と言う掛け声。ただし、俺のほうからは動かない。動かない俺に先生たちがざわつく。

「それじゃ、こっちから行くぞ」
「はい」

 トン、と軽く跳ねてからユーゴが軽く剣を動かす。ゆっくりとした動きだから俺でも対応できる。カツン、と剣と剣がぶつかる。音が軽い。真剣ではないみたいだ。斬ると言うよりは型を覚えるための剣だ。
 ……耐えられるかな? と思いつつ、ちらりとゆっくりと視線をユーゴに移す。ユーゴの視線、身体の向き、足先の角度まで把握して、俺はどうしようかな、と思考を巡らせる。こう言うのってあまり使いたくないよなぁ……って思いつつも、一応見せないわけにはいかない、よな。実力を見るって言ってたし。

「……攻撃するので、右に避けてください」
「は?」

 ユーゴがちょっとだけ目を丸くした。それから俺は一度彼と距離を取って、今度はこっちから攻撃を仕掛ける。俺の言った通り、ユーゴは右に避けた。と、同時にそこを水の槍が通り抜ける。

「す、ストーップ!」

 先生の声で俺とユーゴは動きを止めた。そして、一気に周りの生徒たちがわぁっと湧いた。

「あ、アーサー、今のなに?」
「なんちゃって水の剣です」
「……な、なんちゃって水の剣?」
「いや、前に兄と属性剣使ってみたいという話になって、それなら自分の魔法を剣に纏わせて使えばそれに近くなるんじゃないかって……ただ、ひとつ問題があって……」

 俺が剣を先生に見せようとすると、その剣がボロっと崩れた。ぎょっとしたようなユーゴと先生に俺が肩をすくめると、ユーゴがすっごく目を輝かせて俺を見ていた。何かを期待するような視線を感じる。その視線を無視して、先生へと顔を向ける。

「強度の弱い剣だとこのように崩れてしまうんです」
「オリジナルってそう言うことだったのか……?」
「確かにオリジナルだろうけど……」

 家に居た頃はよく作っていたなぁ、属性剣。どのくらいの強度のものが良いのか、兄といっぱい話し合った。こういうの作るのって男のロマンじゃん? 兄は兄で、属性剣があれば魔法を使えない人でも魔法が使えるんじゃないかって考えたみたいだ。

「なぁ、それ後で詳しく聞かせてくれ!」
「え」
「俺も気になる!」
「僕も!」

 ……なんか一気にクラスメイトたちが俺に近付いて来た。別に秘密にしているわけじゃないから、良いんだけど……。誰も試したことなかったのかな?
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