57 / 163
season1
57話:トンデモ倉庫整理
しおりを挟む
その日、俺は弟のジェルと一緒に店の倉庫を整理をしていた。
俺の知り合いが美術館をオープンすることになったんだけど、手違いで展示品が足りなくなっちゃったんだ。
それで珍しい物をいろいろ取り扱ってるうちの店の力を借りたい、って相談があってさ。
「うちの倉庫に美術館に置けるような良い物があればいいんですけどねぇ……はっくしゅんっ!」
「おいおい、大丈夫か?」
ジェルは棚の上を確認しようとして盛大にくしゃみをした。最近、掃除してなかったからなぁ。埃がすげぇや。
「アレク、ぞうきん持ってきてください。良い機会だから掃除しながら寄贈できる品を探しましょう!」
俺がぞうきんを濡らして持ってくると、ジェルが一人でブツブツ言いながら品を選り分けていた。
「これは微妙ですね。あっちはまがい物だし。こっちは、あぁ。うーん。でもこれもなぁ……」
ジェルは棚から箱を引っ張りだして開けて確認すると、無造作にその辺に置いていく。箱の大きさを気にせず積み重ねていくから今にも崩れそうだ。
そう思った瞬間、上の方に積んでいた品が崩れて、俺の足元に巻物みたいなのが二つ転がってきた。
――やれやれ。ジェルは昔から、ひとつのことに夢中になると他が見えなくなるタイプだからなぁ。
俺は苦笑いしながら足元の品を拾って彼に声をかける。
「なぁジェル、この巻物みたいなの何だ?」
「……え。あぁ、掛け軸ですよ」
「へぇ、ってことは日本画か? そういうの美術館ウケ良いと思うしいいんじゃねぇか?」
俺は掛け軸の中を見ようと、しっかり結んである紐を解いた。
「あっ、アレクいけません! それはあなたの苦手な……あれ?」
「なんだこれ……?」
掛け軸を広げてみると、黄ばんだ和紙の上の方に少し柳が描かれているだけだ。真ん中は何も描かれてなくて、まるでそこに何かあったみたいに不自然な構図だった。
「あれ、おかしいですね。それは幽霊画のはずなのに……」
「ゆ、幽霊画! ――でも空っぽじゃねぇか!」
俺はジャパニーズゴーストは苦手だから幽霊画と聞いてちょっとびっくりしたが、これじゃ単なる柳の絵だ。
「なんだよ、おどかしやがって……」
「変ですねぇ……」
ジェルはまだ納得いかないらしくて、しきりに首をひねっている。
幽霊画の掛け軸がただの柳の絵だったことに安心した俺は、もう一枚の掛け軸の紐を解いて広げた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
そこには幽霊が隙間無くみっしりと詰まっていて、俺は絶叫した。
「あぁ。居ないと思ったら、そっちに移動してたんですね」
「なんでそんな極端なんだよぉ……ふぇぇぇ、びっくりした」
「……変ですねぇ。それにしてもやけに数が多いし、そもそも幽霊画ってこんなのじゃ無かった気がするんですが」
ジェルは釈然としないのか、あごに手を当てて考え込んでいる。
「……まるで満員電車のドアですね」
ジェルは考えるのを放棄したのか、そう一言感想を述べると何事もなかったかのように掛け軸をくるくると巻いて紐で縛った。
「とりあえず、どっちも美術館に寄贈するには向いてないかと」
「そうだな。あー、びっくりしたわー……」
まだ心臓がドキドキしてるぞ。本当うちの店の品はロクでもねぇなぁ。
大きく息を吐いて視線を移したその時、棚に見慣れない雑誌があることに気づいた。
雑誌の表紙には、魔法使いの格好をしたおねぇちゃんが箒(ほうき)片手にニッコリ笑ってる写真が載っていて『すてきな魔女さん』って文字がデカデカと書かれている。
「なんだこれ、魔女って……?」
「あぁ、それは魔女の世界の業界誌ですねぇ。先月号の『季節のハーブで作る毒薬レシピ』は興味深かったです」
「やべぇな、それ。そんな物騒なもんが載ってるのかよ」
好奇心に駆られてパラパラと中身を見てみると『マンネリ脱出! 気分がUPする黒ミサ特集』や『イケメンダケで作る香水アレンジ』といった、わけわかんねぇ内容が可愛い色使いの浮かれた文字で書かれていた。
「すげぇ世界だな……」
「ワタクシは、その中の魔女のお悩み相談室が好きなんですよ」
ジェルに言われて後ろの方のページをめくると、読者コーナーの後半にその記事があった。
「どれどれ。魔女のお悩み相談室『ヒツジとヤギの区別がつかないと友人に笑われました』……どういうこった。毛が真っ直ぐなのがヤギで、モコモコしてんのがヒツジでいいんじゃねぇのか?」
不思議に思いながらページをめくると、ベテランらしいしわくちゃでワシ鼻の貫禄ある魔女の写真と一緒に回答が書かれていた。
「回答:サバトに連れて行ってサタンが降臨すればヤギです。……ってこれサタン来なかったらどうしたらいいんだ?」
「ジンギスカンパーティでもすればいいんじゃないですかね」
「食うのかよ!」
「――とりあえず、雑誌見てたら作業が進みませんからそれくらいにして……あ、これどうですか? きっと美術館の目玉になると思いますよ」
ジェルの手には小さな箱が乗っている。箱を開くと大粒の青い宝石が光っていた。
俺の知り合いが美術館をオープンすることになったんだけど、手違いで展示品が足りなくなっちゃったんだ。
それで珍しい物をいろいろ取り扱ってるうちの店の力を借りたい、って相談があってさ。
「うちの倉庫に美術館に置けるような良い物があればいいんですけどねぇ……はっくしゅんっ!」
「おいおい、大丈夫か?」
ジェルは棚の上を確認しようとして盛大にくしゃみをした。最近、掃除してなかったからなぁ。埃がすげぇや。
「アレク、ぞうきん持ってきてください。良い機会だから掃除しながら寄贈できる品を探しましょう!」
俺がぞうきんを濡らして持ってくると、ジェルが一人でブツブツ言いながら品を選り分けていた。
「これは微妙ですね。あっちはまがい物だし。こっちは、あぁ。うーん。でもこれもなぁ……」
ジェルは棚から箱を引っ張りだして開けて確認すると、無造作にその辺に置いていく。箱の大きさを気にせず積み重ねていくから今にも崩れそうだ。
そう思った瞬間、上の方に積んでいた品が崩れて、俺の足元に巻物みたいなのが二つ転がってきた。
――やれやれ。ジェルは昔から、ひとつのことに夢中になると他が見えなくなるタイプだからなぁ。
俺は苦笑いしながら足元の品を拾って彼に声をかける。
「なぁジェル、この巻物みたいなの何だ?」
「……え。あぁ、掛け軸ですよ」
「へぇ、ってことは日本画か? そういうの美術館ウケ良いと思うしいいんじゃねぇか?」
俺は掛け軸の中を見ようと、しっかり結んである紐を解いた。
「あっ、アレクいけません! それはあなたの苦手な……あれ?」
「なんだこれ……?」
掛け軸を広げてみると、黄ばんだ和紙の上の方に少し柳が描かれているだけだ。真ん中は何も描かれてなくて、まるでそこに何かあったみたいに不自然な構図だった。
「あれ、おかしいですね。それは幽霊画のはずなのに……」
「ゆ、幽霊画! ――でも空っぽじゃねぇか!」
俺はジャパニーズゴーストは苦手だから幽霊画と聞いてちょっとびっくりしたが、これじゃ単なる柳の絵だ。
「なんだよ、おどかしやがって……」
「変ですねぇ……」
ジェルはまだ納得いかないらしくて、しきりに首をひねっている。
幽霊画の掛け軸がただの柳の絵だったことに安心した俺は、もう一枚の掛け軸の紐を解いて広げた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
そこには幽霊が隙間無くみっしりと詰まっていて、俺は絶叫した。
「あぁ。居ないと思ったら、そっちに移動してたんですね」
「なんでそんな極端なんだよぉ……ふぇぇぇ、びっくりした」
「……変ですねぇ。それにしてもやけに数が多いし、そもそも幽霊画ってこんなのじゃ無かった気がするんですが」
ジェルは釈然としないのか、あごに手を当てて考え込んでいる。
「……まるで満員電車のドアですね」
ジェルは考えるのを放棄したのか、そう一言感想を述べると何事もなかったかのように掛け軸をくるくると巻いて紐で縛った。
「とりあえず、どっちも美術館に寄贈するには向いてないかと」
「そうだな。あー、びっくりしたわー……」
まだ心臓がドキドキしてるぞ。本当うちの店の品はロクでもねぇなぁ。
大きく息を吐いて視線を移したその時、棚に見慣れない雑誌があることに気づいた。
雑誌の表紙には、魔法使いの格好をしたおねぇちゃんが箒(ほうき)片手にニッコリ笑ってる写真が載っていて『すてきな魔女さん』って文字がデカデカと書かれている。
「なんだこれ、魔女って……?」
「あぁ、それは魔女の世界の業界誌ですねぇ。先月号の『季節のハーブで作る毒薬レシピ』は興味深かったです」
「やべぇな、それ。そんな物騒なもんが載ってるのかよ」
好奇心に駆られてパラパラと中身を見てみると『マンネリ脱出! 気分がUPする黒ミサ特集』や『イケメンダケで作る香水アレンジ』といった、わけわかんねぇ内容が可愛い色使いの浮かれた文字で書かれていた。
「すげぇ世界だな……」
「ワタクシは、その中の魔女のお悩み相談室が好きなんですよ」
ジェルに言われて後ろの方のページをめくると、読者コーナーの後半にその記事があった。
「どれどれ。魔女のお悩み相談室『ヒツジとヤギの区別がつかないと友人に笑われました』……どういうこった。毛が真っ直ぐなのがヤギで、モコモコしてんのがヒツジでいいんじゃねぇのか?」
不思議に思いながらページをめくると、ベテランらしいしわくちゃでワシ鼻の貫禄ある魔女の写真と一緒に回答が書かれていた。
「回答:サバトに連れて行ってサタンが降臨すればヤギです。……ってこれサタン来なかったらどうしたらいいんだ?」
「ジンギスカンパーティでもすればいいんじゃないですかね」
「食うのかよ!」
「――とりあえず、雑誌見てたら作業が進みませんからそれくらいにして……あ、これどうですか? きっと美術館の目玉になると思いますよ」
ジェルの手には小さな箱が乗っている。箱を開くと大粒の青い宝石が光っていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

