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season2
125話:アレク、小説を書く
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いきなりですが、人間というのは春になって暖かくなってくると「何か新しいことを始めなきゃ」という気になるものなんでしょうかね。
というのも、兄のアレクサンドルが小説を書きはじめたらしいんですよ。
世の中には「小説投稿サイト」というものがあるそうで、彼はそれを熱心に見た結果、すっかり感化されてしまい自分も書いてみようとなったらしいのです。
彼の話によると、アレク以外にもたくさんの人がそのサイトに投稿していて、そこから人気がでて書籍化したなんてケースもあるんだとか。
「……どうしよう、俺の小説も本になっちゃったりして! さらにアニメ化とかしたらヤバいよな!」
アンティークの店「蜃気楼」の商品棚を掃除しながら、アレクは夢見がちな目で投稿サイトの話に声を弾ませています。
「まだ始めたばかりなのに、気が早いんじゃないですかね」
ワタクシは店のカウンターに座って、スマホを眺めながら答えました。
実際、彼は今まで小説なんて書いたことが無い超初心者なのです。そう上手くいくはずがありません。
「でもさぁ、やっぱり書き始めたら夢見ちゃうもんなんだよ。ジェルは小説書いてみようとか思わないのか?」
「ワタクシは読むだけで満足してますからねぇ……で、これがその小説投稿サイトですか?」
「そうそう、これこれ」
アレクに教えてもらったスマホの画面には、細かい文字で文章が記載されています。
どうやら人気ランキングのようです。
「これな、読者が気に入った作品に評価ポイントを入れて応援できるんだよ。それでポイントの多い人がランキング入りするんだ!」
「なるほど、ランキングに入りたければポイントをもらう必要があるんですね」
つまりここに並んでいるのは、たくさんポイントを得た人気作品ということですね。
「えーっと……“異世界転生して最強のスキルを手に入れた俺はパーティを追放されたけどチートだった。成り上がってSSS級ハーレムがあるから今更戻ってきて欲しいと言われてももう遅い”――これはあらすじですか?」
「いや、タイトルらしいぞ」
「ずいぶん長いですね」
ランキングを見た感じ、どれも同じように長いタイトルばかり並んでいます。
「最近はそういうのが流行してるんだよ。パッとみて内容がわかるタイトルがウケるんだってさ」
「そういうもんですか」
「それに本当かどうか知らんが、最近は皆スマホでこういうの読むから、あんまり短いタイトルだとタップするスペースが小さくてタップできないから面積でかくする為にも良いらしい」
「へぇ。紙の本だとこんな長いタイトルは表紙デザインを損ねてしまいそうですが、スマホ前提だと利点もあるんですねぇ」
今の時代に合った変化ということなんでしょうか。冗談みたいな話ではありますが、興味深いことです。
「――それで、アレクの小説は何位なんですか?」
「俺のは圏外だな。でもまだ1話目だからな! これからだ!」
「なるほど。では早速、読ませていただきましょうかね」
ワタクシがアレクの投稿している小説を探そうとすると、彼は棚の掃除をぴたりと止めて、落ち着かない表情でこちらを見つめています。
「え、今から読むのか?」
「そうですけど」
「なんか目の前で読まれるの恥ずかしいなぁ。――そうだ、お兄ちゃんお菓子でも買いに出かけてくるからさ、その間に読んで後で感想教えてくれよ」
そう言い残して、アレクは掃除道具を放り出して出かけてしまいました。
他人に見てもらいたいから投稿したはずなのに、読まれるのが恥ずかしいとはどういうことでしょうか。
ワタクシには分かりかねる感情ですが、そういうもんなんですかね。
じゃあ、彼が出かけている間に読んでおくとしましょうか。
というのも、兄のアレクサンドルが小説を書きはじめたらしいんですよ。
世の中には「小説投稿サイト」というものがあるそうで、彼はそれを熱心に見た結果、すっかり感化されてしまい自分も書いてみようとなったらしいのです。
彼の話によると、アレク以外にもたくさんの人がそのサイトに投稿していて、そこから人気がでて書籍化したなんてケースもあるんだとか。
「……どうしよう、俺の小説も本になっちゃったりして! さらにアニメ化とかしたらヤバいよな!」
アンティークの店「蜃気楼」の商品棚を掃除しながら、アレクは夢見がちな目で投稿サイトの話に声を弾ませています。
「まだ始めたばかりなのに、気が早いんじゃないですかね」
ワタクシは店のカウンターに座って、スマホを眺めながら答えました。
実際、彼は今まで小説なんて書いたことが無い超初心者なのです。そう上手くいくはずがありません。
「でもさぁ、やっぱり書き始めたら夢見ちゃうもんなんだよ。ジェルは小説書いてみようとか思わないのか?」
「ワタクシは読むだけで満足してますからねぇ……で、これがその小説投稿サイトですか?」
「そうそう、これこれ」
アレクに教えてもらったスマホの画面には、細かい文字で文章が記載されています。
どうやら人気ランキングのようです。
「これな、読者が気に入った作品に評価ポイントを入れて応援できるんだよ。それでポイントの多い人がランキング入りするんだ!」
「なるほど、ランキングに入りたければポイントをもらう必要があるんですね」
つまりここに並んでいるのは、たくさんポイントを得た人気作品ということですね。
「えーっと……“異世界転生して最強のスキルを手に入れた俺はパーティを追放されたけどチートだった。成り上がってSSS級ハーレムがあるから今更戻ってきて欲しいと言われてももう遅い”――これはあらすじですか?」
「いや、タイトルらしいぞ」
「ずいぶん長いですね」
ランキングを見た感じ、どれも同じように長いタイトルばかり並んでいます。
「最近はそういうのが流行してるんだよ。パッとみて内容がわかるタイトルがウケるんだってさ」
「そういうもんですか」
「それに本当かどうか知らんが、最近は皆スマホでこういうの読むから、あんまり短いタイトルだとタップするスペースが小さくてタップできないから面積でかくする為にも良いらしい」
「へぇ。紙の本だとこんな長いタイトルは表紙デザインを損ねてしまいそうですが、スマホ前提だと利点もあるんですねぇ」
今の時代に合った変化ということなんでしょうか。冗談みたいな話ではありますが、興味深いことです。
「――それで、アレクの小説は何位なんですか?」
「俺のは圏外だな。でもまだ1話目だからな! これからだ!」
「なるほど。では早速、読ませていただきましょうかね」
ワタクシがアレクの投稿している小説を探そうとすると、彼は棚の掃除をぴたりと止めて、落ち着かない表情でこちらを見つめています。
「え、今から読むのか?」
「そうですけど」
「なんか目の前で読まれるの恥ずかしいなぁ。――そうだ、お兄ちゃんお菓子でも買いに出かけてくるからさ、その間に読んで後で感想教えてくれよ」
そう言い残して、アレクは掃除道具を放り出して出かけてしまいました。
他人に見てもらいたいから投稿したはずなのに、読まれるのが恥ずかしいとはどういうことでしょうか。
ワタクシには分かりかねる感情ですが、そういうもんなんですかね。
じゃあ、彼が出かけている間に読んでおくとしましょうか。
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