それは非売品です!~残念イケメン兄弟と不思議な店~

白井銀歌

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season3

156話:神様の助力

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「うちの神社でよければ場所はあるけど」

 アレクの言葉にシロが反応すると、アレクはポケットからスマホを取り出しました。

「偉い人に電話して話通しておくからさ、ユリちゃんを助けてくれよ!」

「しかし、こんな大きな木の植え替えとなると簡単にはいかないですし、ちゃんと根付くかも心配ですねぇ」

 そもそも移植するには周囲の土を掘り返して、巨大な木を地面から持ち上げなければなりません。
 もっと理想を言えば、周囲の土ごと移動できれば木への負担もかなり軽減されるのですが、どちらにせよ大きなクレーンが必要です。
 しかし、この道にそんな重機が入るスペースはありません。

「とにかく地面と切り離しさえできれば、ワタクシの転送魔術で別の場所に移動はできるんですけど……」

「じゃあ僕、神社に戻ってスサノオ様に相談してみるよ」

 スサノオ様はシロの上司で、日本の神話にも登場する偉い神様です。
 きっと何とかしてくださることでしょう。

「ユリちゃん、絶対助けるからな!」

「あきらめないで待っててくださいね」

 その言葉に応えるように、サァッと枝が揺れたのを見届けてワタクシ達は帰宅しました。

 神社に戻ったシロから連絡があったのは、数時間後のことでした。
 我が家にスサノオと共に現れたのは、白い衣に褐色肌が映える精悍な顔をした黒髪の男性です。

「こちらは天之狭土神あめのさづちのかみ。その名の通り、土の神だ」

「俺様の力を借りたいってのはアンタか。よろしくな!」

「ご足労いただき恐縮です。ワタクシはジェルマン、こちらは兄のアレクサンドルです」

「なぁ神様、ユリちゃんは助かるのか?」

 アレクは真剣な顔でスサノオたちに問いかけます。

「愚問であるな。我々が力を貸すのだぞ」

「要は土ごと動かしちまえばいいんだろ。俺様に任せろ!」

 なんとも頼もしい答えです。
 ワタクシ達は打ち合わせをして人気の無い夜中になるのを待ってから、ユリノキの元へ向かいました。

「お~し、俺様の出番だな! どれどれ――」

 天之狭土神が両手を木の根元にかざすと、地響きと共にまるで綺麗にくりぬいたかのように木が周辺の地面ごと浮かびました。

「さすがですね!」

「ハッ、俺様にかかればこんなもんよ!」

 そしてワタクシが事前に描いておいた魔法陣の上で木が停止したので、すかさず転送魔術を使いました。

「――さぁ、後はスサノオ様とシロが上手く取り計らってくれているはずですが……」

 その後、神社に移動したワタクシ達が目にしたのは、境内の木立に混ざって真っ直ぐ生えたユリノキでした。
 まるで最初からそこに生えていたかのように、しっかり根付いています。

「見て! 周囲の土ごとだったおかげで、問題なく移植できたよ!」

「大儀であったな、アレク。木は移動に疲れたらしく今は眠りについているが、無事であるぞ」

「シロ、スサノオ、ありがとう~! 今度良い酒持ってくるからな!」

 涙声で喜ぶアレクの隣で、天之狭土神がふんぞり返って得意げに笑いました。

「ハーハッハッハ! 俺様にも感謝しろよな! なんなら祭ってくれてもいいんだぜ?」

「神様ありがとう! 俺のパン男ロボの隣でよければ祭るぞ!」

「やっぱ祭らなくていいわ」

 ――何はともあれ、無事にユリノキの移植が完了してホッとしました。
 十分な広さもありますし、きっとここなら無事に暮らせることでしょう。

 それから数日後。
 シロから連絡をうけたワタクシ達は、再び神社を訪れました。

「二人ともいらっしゃい、実は新しい巫女さんがうちでお勤めすることになってね」

 シロの視線の先には、先日のユリノキがあります。

「ほら、恥ずかしがらずに出ておいで」

 木の影から、ひょっこりと現れたのは真っ赤な袴の巫女装束を着た少女です。

「ユリちゃん!」

「アレクさん、ジェルさん、ありがとうございました!」

「ユリちゃん、無事だったんだな!」

「よかったですねぇ」

 大きな黄緑色の花が咲く木の下で、ワタクシ達は再会を喜び合ったのでした。
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