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魔王の城
8話:魔物たちとのディナー
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「そ、それではもうすぐガル様も来られますので、席にお座りくださいませ」
キールさんに案内された席に座って、しばらくするとガルがやって来た。
ざわついていた魔物たちが急に静かになって姿勢を正している。
明るいところで見た彼は、とても魅力的で気品のある姿だった。
上品な真紅の正装に身を包んだ彼はすらりとした美男子で、黒い髪から左右に生える角も魔王としての風格を感じる。
「……キール。どうして皆が一堂に会しているのだ。仕事はどうした?」
「それはその……ぜひ聖女殿のお姿を見たいと集まって来たのです」
「そうなのか。たくさん集まっているから驚いたぞ」
そう言って、私の方を見た。
「シエラ、ここに集まった者たちが俺の家来だ。他にも飛竜やこの城の周囲に住んでいる者も居るが、それはまた後日あらためて紹介しよう」
「えぇ、楽しみにしておくわ」
ガルはとりあえず納得したようで、席に着いた。
すかさずハッピーが駆け寄り、尻尾をパタパタと振ってアピールする。
「ハッピー。ちゃんとシエラを案内できたか?」
「うん、できたよ。あのね、食堂に来たらシエラがみんなに挨拶したの。だから、みんなびっくりしてたの!」
「……そうか。それは驚いただろうな」
ガルが愉快そうな表情を浮かべてハッピーの頭を軽く撫でると、彼女はさらに尻尾を振って喜んだ。
「皆の者もシエラの為に集まってくれたことに感謝する。……では、食事にするとしようか。各自、持ち場に戻れ」
彼がそう言うと、魔物たちはお辞儀をして食堂を出て行った。
出て行ったうちの何人かは料理担当だったらしく、しばらくすると大きな皿に盛られた料理をいくつも運んで戻ってきた。
目の前に見たこと無いような料理を乗せた皿が、どんどん並べられる。
大きなトカゲを丸焼きにしたと思われるものや、奇妙な棘を生やした真っ赤な実、そして何の生き物かわからないけど内臓のような物など、普段の食事ではまず出てこないであろうグロテスクな物ばかりだ。
もちろん、どれも今まで口にしたことなんて一度も無い。
料理を運んで来た魔物たちは不安そうな表情で、私の反応をしきりに気にしているように見えた。
「さぁ、聖女殿もどうぞ。ぜひ冷めないうちにお召し上がりくださいませ」
「キール。今夜の食事は、やけに見た目が変わった品ばかり集められているように思うが、気のせいか?」
「たまたまでございましょう」
キールさんは口ではそう言いながら、値踏みするような目で私を見た。
たぶんわざとこんな変わった見た目の料理を出してきたのだろう。
きっと私が「こんな気もち悪い料理なんて食べられない!」と音を上げるのを待っているのだ。
――でも残念だったわね、キールさん。今の私は超おなかが空いているのよ!
「ありがとう。どれも美味しそうね、いただきます!」
「なっ……!」
私は目の前の、切り分けられたトカゲの丸焼きに手を伸ばした。
――美味しい。スパイスの香ばしさと鶏肉に似た旨みが口の中いっぱいに広がる。空腹の時に食べる肉は本能に訴えかけるものがあるなぁ。
次々と料理を手に取って食べる様子を見て驚いている一つ目の大男に、私は話しかけた。
「この料理は、あなたが作ったの? とても美味しいわね」
「あ、ありがとう、ございますだよ」
「この赤い実はどうやって食べるのかしら?」
「これは半分に割って食べるんだ。棘があって危ねぇから、向こうでオラが割ってくるだよ。ちょっと待ってな」
そう言って、大男は赤い実の皿を持って調理場へ戻って行った。
その間にも周囲の魔物達に話しかけながら、私はどんどん食事を進めていく。
どれも見た目こそグロテスクだが、とても美味しい物ばかりだ。
噂を聞きつけたのか、また魔物たちが集まって来て食堂を覗いている。
「シエラさん、その魚は小骨が多いので気をつけて!」
「聖女さま、この肉もおいしいから食べてみなされ」
「さっきの実を割って持ってきただよ、さぁ食べてくれ!」
魔物たちは口々に料理を勧めては、私が食べる様子をうれしそうに見ていた。
「聖女様も、オラ達と同じ物を食べるんだなぁ」
「俺らが作った料理なんて、気味悪がって食べないかと思ったのに……」
「たくさん食べてくれて、うれしいだよ~!」
自分から話しかけることで、少しでも彼らと打ち解けることができればと思っただけだったのに、予想以上に賑やかな食事になってしまった。
キールさんの方を見ると、露骨に面白くないという顔をしている。
ガルはその光景を見ながら、クククッ……と笑いをこらえているようだった。
さすがに料理を見た時はびっくりしたけど、食べてみたら美味しかったし、皆と仲良くなれたし本当によかった。
キールさんに案内された席に座って、しばらくするとガルがやって来た。
ざわついていた魔物たちが急に静かになって姿勢を正している。
明るいところで見た彼は、とても魅力的で気品のある姿だった。
上品な真紅の正装に身を包んだ彼はすらりとした美男子で、黒い髪から左右に生える角も魔王としての風格を感じる。
「……キール。どうして皆が一堂に会しているのだ。仕事はどうした?」
「それはその……ぜひ聖女殿のお姿を見たいと集まって来たのです」
「そうなのか。たくさん集まっているから驚いたぞ」
そう言って、私の方を見た。
「シエラ、ここに集まった者たちが俺の家来だ。他にも飛竜やこの城の周囲に住んでいる者も居るが、それはまた後日あらためて紹介しよう」
「えぇ、楽しみにしておくわ」
ガルはとりあえず納得したようで、席に着いた。
すかさずハッピーが駆け寄り、尻尾をパタパタと振ってアピールする。
「ハッピー。ちゃんとシエラを案内できたか?」
「うん、できたよ。あのね、食堂に来たらシエラがみんなに挨拶したの。だから、みんなびっくりしてたの!」
「……そうか。それは驚いただろうな」
ガルが愉快そうな表情を浮かべてハッピーの頭を軽く撫でると、彼女はさらに尻尾を振って喜んだ。
「皆の者もシエラの為に集まってくれたことに感謝する。……では、食事にするとしようか。各自、持ち場に戻れ」
彼がそう言うと、魔物たちはお辞儀をして食堂を出て行った。
出て行ったうちの何人かは料理担当だったらしく、しばらくすると大きな皿に盛られた料理をいくつも運んで戻ってきた。
目の前に見たこと無いような料理を乗せた皿が、どんどん並べられる。
大きなトカゲを丸焼きにしたと思われるものや、奇妙な棘を生やした真っ赤な実、そして何の生き物かわからないけど内臓のような物など、普段の食事ではまず出てこないであろうグロテスクな物ばかりだ。
もちろん、どれも今まで口にしたことなんて一度も無い。
料理を運んで来た魔物たちは不安そうな表情で、私の反応をしきりに気にしているように見えた。
「さぁ、聖女殿もどうぞ。ぜひ冷めないうちにお召し上がりくださいませ」
「キール。今夜の食事は、やけに見た目が変わった品ばかり集められているように思うが、気のせいか?」
「たまたまでございましょう」
キールさんは口ではそう言いながら、値踏みするような目で私を見た。
たぶんわざとこんな変わった見た目の料理を出してきたのだろう。
きっと私が「こんな気もち悪い料理なんて食べられない!」と音を上げるのを待っているのだ。
――でも残念だったわね、キールさん。今の私は超おなかが空いているのよ!
「ありがとう。どれも美味しそうね、いただきます!」
「なっ……!」
私は目の前の、切り分けられたトカゲの丸焼きに手を伸ばした。
――美味しい。スパイスの香ばしさと鶏肉に似た旨みが口の中いっぱいに広がる。空腹の時に食べる肉は本能に訴えかけるものがあるなぁ。
次々と料理を手に取って食べる様子を見て驚いている一つ目の大男に、私は話しかけた。
「この料理は、あなたが作ったの? とても美味しいわね」
「あ、ありがとう、ございますだよ」
「この赤い実はどうやって食べるのかしら?」
「これは半分に割って食べるんだ。棘があって危ねぇから、向こうでオラが割ってくるだよ。ちょっと待ってな」
そう言って、大男は赤い実の皿を持って調理場へ戻って行った。
その間にも周囲の魔物達に話しかけながら、私はどんどん食事を進めていく。
どれも見た目こそグロテスクだが、とても美味しい物ばかりだ。
噂を聞きつけたのか、また魔物たちが集まって来て食堂を覗いている。
「シエラさん、その魚は小骨が多いので気をつけて!」
「聖女さま、この肉もおいしいから食べてみなされ」
「さっきの実を割って持ってきただよ、さぁ食べてくれ!」
魔物たちは口々に料理を勧めては、私が食べる様子をうれしそうに見ていた。
「聖女様も、オラ達と同じ物を食べるんだなぁ」
「俺らが作った料理なんて、気味悪がって食べないかと思ったのに……」
「たくさん食べてくれて、うれしいだよ~!」
自分から話しかけることで、少しでも彼らと打ち解けることができればと思っただけだったのに、予想以上に賑やかな食事になってしまった。
キールさんの方を見ると、露骨に面白くないという顔をしている。
ガルはその光景を見ながら、クククッ……と笑いをこらえているようだった。
さすがに料理を見た時はびっくりしたけど、食べてみたら美味しかったし、皆と仲良くなれたし本当によかった。
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