【完結】婚約破棄されたので美形の魔王を脅して幸せに暮らします!

白井銀歌

文字の大きさ
8 / 28
魔王の城

8話:魔物たちとのディナー

しおりを挟む
「そ、それではもうすぐガル様も来られますので、席にお座りくださいませ」

 キールさんに案内された席に座って、しばらくするとガルがやって来た。
 ざわついていた魔物たちが急に静かになって姿勢を正している。

 明るいところで見た彼は、とても魅力的で気品のある姿だった。
 上品な真紅の正装に身を包んだ彼はすらりとした美男子で、黒い髪から左右に生える角も魔王としての風格を感じる。

「……キール。どうして皆が一堂に会しているのだ。仕事はどうした?」

「それはその……ぜひ聖女殿のお姿を見たいと集まって来たのです」

「そうなのか。たくさん集まっているから驚いたぞ」

 そう言って、私の方を見た。

「シエラ、ここに集まった者たちが俺の家来だ。他にも飛竜やこの城の周囲に住んでいる者も居るが、それはまた後日あらためて紹介しよう」

「えぇ、楽しみにしておくわ」

 ガルはとりあえず納得したようで、席に着いた。
 すかさずハッピーが駆け寄り、尻尾をパタパタと振ってアピールする。

「ハッピー。ちゃんとシエラを案内できたか?」

「うん、できたよ。あのね、食堂に来たらシエラがみんなに挨拶したの。だから、みんなびっくりしてたの!」

「……そうか。それは驚いただろうな」

 ガルが愉快そうな表情を浮かべてハッピーの頭を軽く撫でると、彼女はさらに尻尾を振って喜んだ。

「皆の者もシエラの為に集まってくれたことに感謝する。……では、食事にするとしようか。各自、持ち場に戻れ」

 彼がそう言うと、魔物たちはお辞儀をして食堂を出て行った。
 出て行ったうちの何人かは料理担当だったらしく、しばらくすると大きな皿に盛られた料理をいくつも運んで戻ってきた。

 目の前に見たこと無いような料理を乗せた皿が、どんどん並べられる。

 大きなトカゲを丸焼きにしたと思われるものや、奇妙な棘を生やした真っ赤な実、そして何の生き物かわからないけど内臓のような物など、普段の食事ではまず出てこないであろうグロテスクな物ばかりだ。

 もちろん、どれも今まで口にしたことなんて一度も無い。
 料理を運んで来た魔物たちは不安そうな表情で、私の反応をしきりに気にしているように見えた。

「さぁ、聖女殿もどうぞ。ぜひ冷めないうちにお召し上がりくださいませ」

「キール。今夜の食事は、やけに見た目が変わった品ばかり集められているように思うが、気のせいか?」

「たまたまでございましょう」

 キールさんは口ではそう言いながら、値踏みするような目で私を見た。
 たぶんわざとこんな変わった見た目の料理を出してきたのだろう。

 きっと私が「こんな気もち悪い料理なんて食べられない!」と音を上げるのを待っているのだ。

 ――でも残念だったわね、キールさん。今の私は超おなかが空いているのよ!

「ありがとう。どれも美味しそうね、いただきます!」

「なっ……!」

 私は目の前の、切り分けられたトカゲの丸焼きに手を伸ばした。

 ――美味しい。スパイスの香ばしさと鶏肉に似た旨みが口の中いっぱいに広がる。空腹の時に食べる肉は本能に訴えかけるものがあるなぁ。

 次々と料理を手に取って食べる様子を見て驚いている一つ目の大男に、私は話しかけた。

「この料理は、あなたが作ったの? とても美味しいわね」

「あ、ありがとう、ございますだよ」

「この赤い実はどうやって食べるのかしら?」

「これは半分に割って食べるんだ。棘があって危ねぇから、向こうでオラが割ってくるだよ。ちょっと待ってな」

 そう言って、大男は赤い実の皿を持って調理場へ戻って行った。

 その間にも周囲の魔物達に話しかけながら、私はどんどん食事を進めていく。
 どれも見た目こそグロテスクだが、とても美味しい物ばかりだ。
 噂を聞きつけたのか、また魔物たちが集まって来て食堂を覗いている。

「シエラさん、その魚は小骨が多いので気をつけて!」

「聖女さま、この肉もおいしいから食べてみなされ」

「さっきの実を割って持ってきただよ、さぁ食べてくれ!」

 魔物たちは口々に料理を勧めては、私が食べる様子をうれしそうに見ていた。

「聖女様も、オラ達と同じ物を食べるんだなぁ」

「俺らが作った料理なんて、気味悪がって食べないかと思ったのに……」

「たくさん食べてくれて、うれしいだよ~!」

 自分から話しかけることで、少しでも彼らと打ち解けることができればと思っただけだったのに、予想以上に賑やかな食事になってしまった。
 キールさんの方を見ると、露骨に面白くないという顔をしている。
 ガルはその光景を見ながら、クククッ……と笑いをこらえているようだった。

 さすがに料理を見た時はびっくりしたけど、食べてみたら美味しかったし、皆と仲良くなれたし本当によかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される

鍛高譚
恋愛
「スカーレット・ヨーク、お前との婚約は破棄する!」 王太子アルバートの突然の宣言により、伯爵令嬢スカーレットの人生は一変した。 すべては“聖女”を名乗る平民アメリアの企み。でっち上げられた罪で糾弾され、名誉を失い、実家からも追放されてしまう。 頼る宛もなく王都をさまよった彼女は、行き倒れ寸前のところを隣国ルーヴェル王国の公爵、ゼイン・ファーガスに救われる。 「……しばらく俺のもとで休め。安全は保証する」 冷徹な印象とは裏腹に、ゼインはスカーレットを庇護し、“形だけの婚約者”として身を守ってくれることに。 公爵家で静かな日々を過ごすうちに、スカーレットの聡明さや誇り高さは次第に評価され、彼女自身もゼインに心惹かれていく。 だがその裏で、王太子とアメリアの暴走は止まらず、スカーレットの両親までもが処刑の危機に――!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます

ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。 理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。 ……正直、めんどくさい。 政略、責任、義務、期待。 それらすべてから解放された彼女は、 聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。 毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。 何もしない、何も背負わない、静かな日常。 ところが―― 彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、 一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが 異様なほど平和になっていく。 祈らない。 詠唱しない。 癒やさない。 それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。 「何もしない」ことを選んだ元聖女と、 彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。 これは、 誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、 いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

追放されたヒロインですが、今はカフェ店長してます〜元婚約者が毎日通ってくるのやめてください〜

タマ マコト
ファンタジー
王国一の聖女リリアは、婚約者である勇者レオンから突然「裏切り者」と断罪され、婚約も職も失う。理由は曖昧、けれど涙は出ない。 静かに城を去ったリリアは、旅の果てに港町へ辿り着き、心機一転カフェを開くことを決意。 古びた店を修理しながら、元盗賊のスイーツ職人エマ、謎多き魔族の青年バルドと出会い、少しずつ新しい居場所を作っていく。 「もう誰かの聖女じゃなくていい。今度は、私が笑える毎日を作るんだ」 ──追放された聖女の“第二の人生”が、カフェの湯気とともに静かに始まる。

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

処理中です...