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魔王の城
10話:下着泥棒あらわる⁉
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しばらくすると、ドアをドンドンと何かがぶつかる音がした。
ドアの向こうから「シエラ!」と呼ぶ声がする。
しゃべる犬のハッピーだ。
ドアを開けると、元気よく尻尾を振るふわふわのクリーム色の毛が視界に映る。
「シエラ、お風呂の準備ができたから呼びに来たよ!」
「ありがとう、ハッピー」
「普段は皆で大きなお風呂に入るんだけど、ガル様が”シエラはまだこの城に来たばかりだから、一人でゆっくり入りたいだろう”って、今日は特別にシエラが入っている間だけ貸切にしてくれたよ!」
ガルは食堂でも私のことを気遣ってくれていたが、そんなところまで細やかに配慮にしてくれることに驚いた。
「じゃあ、ハッピーが案内するね! 付いて来て!」
ハッピーは先導してチャッチャッチャッと音をたてて元気よく歩く。
歩くたびに長い耳が楽しそうに揺れているのが可愛らしい。
「お風呂とても温かくて気持ちいいよ! シエラもきっと気に入ると思う!」
「そうね、楽しみだわ」
私たちは、城の一階にある大浴場へと足を運んだ。
清潔感のあるシンプルな脱衣所で服を脱ぎ、浴場へ続く扉を開けると湿った暖かい空気が流れ込んできた。
そこには大きな岩をくりぬいて作ったと思われる浴槽がある。
草花の模様が彫られた彫刻で飾られていて、豪華な印象だ。
床も石作りではあるが、足元が滑らないように丁寧に細かい溝が刻まれている。
浴槽には、なみなみとお湯が注がれ続けていて白い湯気がゆらゆらと立っていた。
湯量の豊富な温泉があって、お湯が使い放題だからこそできる光景だ。
「すごいね……!」
「えへへ、良いでしょ! じゃあハッピーはこっちのお部屋で待ってるからシエラはゆっくりお湯に入ってきてね!」
ハッピーは脱衣所で待機するらしい。貸し切りにしてもらってるし、あまり待たせないようにしないと。
浴槽に手を入れてみるとちょうど良い温かさだった。
私はたっぷりお湯を使って髪と体を洗い、浴槽に浸かった。
「はぁ…………」
気持ちいい。
温かい湯に包まれて、体の疲れがいっきに溶けていくような心地よさに思わず声が漏れる。
今日はあまりにもいろんなことがありすぎたなぁ。
突然の婚約破棄に始まり、王宮を追放され、森で置き去りにされて。
そして魔王ガルトマーシュと出会い、自分が聖女だって言われて。
まさか自分が魔王の城で暮らすことになるなんて。
「しかも、魔王の城がこんなに快適だなんて想像もつかなかったわね……」
ご飯も美味しかったし、皆も優しいし、ここなら安心して暮らしていけるかもしれない。
そんなことを思いながらお湯に浸かっていると、外が騒がしいことに気付いた。
浴槽に浸かったまま脱衣所の方向に耳をすましてみると、ハッピーの甲高い声がする。
「もう! シエラがお風呂に入ってるんだから、早く出て行ってちょうだい! 今日は貸切ってガル様も言ってたでしょ!」
「しっ、静かにしろ、ハッピー。おそらくここに例の指輪があるはずなのだ」
声から察するにどうやら入ってきたのはキールさんらしい。
「指輪さえ奪ってしまえば、聖女などただの小娘にすぎん。ガル様の脅威を排除するのは配下である我々の役目であろう。だから貴様も協力するのだ」
なるほど、私の指輪を探しているのね。
おそらく入浴中なら指輪を外していると思ったんだろうけど。
残念だけど指輪はつけたまま入ってるから、いくら探しても無駄なのに。
「くそ、どこだ!」
ハッピーが止めるのも構わず、キールさんは周囲を物色しはじめた。
――えっ、ちょっと待って。そこには私の脱いだ服や下着があるんだけど。
私は慌てて浴槽を出てドアを少しだけ開けて顔を覗かせててみると、キールさんが手にしているのは私の下着⁉
反射的に思わず大声を出した。
「いやぁぁぁぁぁ!!!! 変態!!!! 痴漢よ~!!!! 誰か助けてぇぇぇ~!!!!」
こんな大声を出したのは何年ぶりだろう、というくらい大声をだしてしまった。
きっとこれで誰かが様子を見に来るに違いない。
そして駆けつけて来たのは、ある意味キールさんにとって一番来て欲しくなかったであろう相手だった。
「何事だ! ……キール⁉ そこで何をしている⁉」
「ガル様! いえ、あのこれには訳がありまして――」
「貴様が手にしているのは下着ではないか! それをどうするつもりだったんだ⁉」
ガルは険しい顔でキールさんを見ている。気のせいかな、ガルの周囲に魔力のオーラみたいなのがバチバチ見えるのは。
「あの、ガル――」
「シエラ! 無事か⁉ キールに何もされなかったか⁉」
「あ、うん。私は大丈夫だから……その、あまり怒らないであげてね」
「いくら心優しい聖女であっても下着泥棒に温情をかけてやる必要は無いと思うけどな。キールは俺が責任を持って処罰を与えておくから安心してくれ」
「そんな、ガル様! 誤解です!」
キールさんは悲痛な声をあげたが、そのままガルに部屋の外へと連行されて行った。
「ちょっと可哀想だったかな……」
「シエラ、ごめんね。ハッピー、ちゃんと見張り番が出来なかった」
ハッピーがクゥーンと鼻を鳴らして尻尾を下げてしょんぼりしているので、私は優しく頭を撫でる。
「ううん、ハッピーはちゃんと止めてくれたじゃない。ありがとうね……ハクシュンっ!」
「シエラ、大変! 風邪ひいちゃう!」
私は再びお湯に浸かって温まってから、大浴場を後にした。
ドアの向こうから「シエラ!」と呼ぶ声がする。
しゃべる犬のハッピーだ。
ドアを開けると、元気よく尻尾を振るふわふわのクリーム色の毛が視界に映る。
「シエラ、お風呂の準備ができたから呼びに来たよ!」
「ありがとう、ハッピー」
「普段は皆で大きなお風呂に入るんだけど、ガル様が”シエラはまだこの城に来たばかりだから、一人でゆっくり入りたいだろう”って、今日は特別にシエラが入っている間だけ貸切にしてくれたよ!」
ガルは食堂でも私のことを気遣ってくれていたが、そんなところまで細やかに配慮にしてくれることに驚いた。
「じゃあ、ハッピーが案内するね! 付いて来て!」
ハッピーは先導してチャッチャッチャッと音をたてて元気よく歩く。
歩くたびに長い耳が楽しそうに揺れているのが可愛らしい。
「お風呂とても温かくて気持ちいいよ! シエラもきっと気に入ると思う!」
「そうね、楽しみだわ」
私たちは、城の一階にある大浴場へと足を運んだ。
清潔感のあるシンプルな脱衣所で服を脱ぎ、浴場へ続く扉を開けると湿った暖かい空気が流れ込んできた。
そこには大きな岩をくりぬいて作ったと思われる浴槽がある。
草花の模様が彫られた彫刻で飾られていて、豪華な印象だ。
床も石作りではあるが、足元が滑らないように丁寧に細かい溝が刻まれている。
浴槽には、なみなみとお湯が注がれ続けていて白い湯気がゆらゆらと立っていた。
湯量の豊富な温泉があって、お湯が使い放題だからこそできる光景だ。
「すごいね……!」
「えへへ、良いでしょ! じゃあハッピーはこっちのお部屋で待ってるからシエラはゆっくりお湯に入ってきてね!」
ハッピーは脱衣所で待機するらしい。貸し切りにしてもらってるし、あまり待たせないようにしないと。
浴槽に手を入れてみるとちょうど良い温かさだった。
私はたっぷりお湯を使って髪と体を洗い、浴槽に浸かった。
「はぁ…………」
気持ちいい。
温かい湯に包まれて、体の疲れがいっきに溶けていくような心地よさに思わず声が漏れる。
今日はあまりにもいろんなことがありすぎたなぁ。
突然の婚約破棄に始まり、王宮を追放され、森で置き去りにされて。
そして魔王ガルトマーシュと出会い、自分が聖女だって言われて。
まさか自分が魔王の城で暮らすことになるなんて。
「しかも、魔王の城がこんなに快適だなんて想像もつかなかったわね……」
ご飯も美味しかったし、皆も優しいし、ここなら安心して暮らしていけるかもしれない。
そんなことを思いながらお湯に浸かっていると、外が騒がしいことに気付いた。
浴槽に浸かったまま脱衣所の方向に耳をすましてみると、ハッピーの甲高い声がする。
「もう! シエラがお風呂に入ってるんだから、早く出て行ってちょうだい! 今日は貸切ってガル様も言ってたでしょ!」
「しっ、静かにしろ、ハッピー。おそらくここに例の指輪があるはずなのだ」
声から察するにどうやら入ってきたのはキールさんらしい。
「指輪さえ奪ってしまえば、聖女などただの小娘にすぎん。ガル様の脅威を排除するのは配下である我々の役目であろう。だから貴様も協力するのだ」
なるほど、私の指輪を探しているのね。
おそらく入浴中なら指輪を外していると思ったんだろうけど。
残念だけど指輪はつけたまま入ってるから、いくら探しても無駄なのに。
「くそ、どこだ!」
ハッピーが止めるのも構わず、キールさんは周囲を物色しはじめた。
――えっ、ちょっと待って。そこには私の脱いだ服や下着があるんだけど。
私は慌てて浴槽を出てドアを少しだけ開けて顔を覗かせててみると、キールさんが手にしているのは私の下着⁉
反射的に思わず大声を出した。
「いやぁぁぁぁぁ!!!! 変態!!!! 痴漢よ~!!!! 誰か助けてぇぇぇ~!!!!」
こんな大声を出したのは何年ぶりだろう、というくらい大声をだしてしまった。
きっとこれで誰かが様子を見に来るに違いない。
そして駆けつけて来たのは、ある意味キールさんにとって一番来て欲しくなかったであろう相手だった。
「何事だ! ……キール⁉ そこで何をしている⁉」
「ガル様! いえ、あのこれには訳がありまして――」
「貴様が手にしているのは下着ではないか! それをどうするつもりだったんだ⁉」
ガルは険しい顔でキールさんを見ている。気のせいかな、ガルの周囲に魔力のオーラみたいなのがバチバチ見えるのは。
「あの、ガル――」
「シエラ! 無事か⁉ キールに何もされなかったか⁉」
「あ、うん。私は大丈夫だから……その、あまり怒らないであげてね」
「いくら心優しい聖女であっても下着泥棒に温情をかけてやる必要は無いと思うけどな。キールは俺が責任を持って処罰を与えておくから安心してくれ」
「そんな、ガル様! 誤解です!」
キールさんは悲痛な声をあげたが、そのままガルに部屋の外へと連行されて行った。
「ちょっと可哀想だったかな……」
「シエラ、ごめんね。ハッピー、ちゃんと見張り番が出来なかった」
ハッピーがクゥーンと鼻を鳴らして尻尾を下げてしょんぼりしているので、私は優しく頭を撫でる。
「ううん、ハッピーはちゃんと止めてくれたじゃない。ありがとうね……ハクシュンっ!」
「シエラ、大変! 風邪ひいちゃう!」
私は再びお湯に浸かって温まってから、大浴場を後にした。
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