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この世界は

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着替えから顔を隠すように薄手のブランケットを被り外に出た。正面突破は、多分できない。散歩する度、騎士のような人達が正門の辺りにいるのを見かけたし。


「…やっぱり抜け穴から行くのが安全よね」


これも散歩の時に見つけた。ここなら成人女性くらいは軽々と抜けられそうな穴。むしろ何故このままなのか不思議に思ったけれどこれはラッキーだ。服が少し汚れたけど、抜け出せたことに安心した。夜だし、街に行ってもどうにもならないのだから森へ進もう。とりあえず歩けるだけ歩いて登れそうな大きな木を見つけた。睡眠を取るにはちょうどいい、地面に寝るよりはマシだからそのまま眠った。




















そして目覚めたら知らない天井なんてどんなデジャヴ。ため息しか出てこない、ベッドから出て部屋を見回るけど誰もいない。でも生活感はあるから待ってれば誰かしら帰ってくるだろう。森で眠ったときはこんなログハウス見えなかったけど近くにあったのなら恥ずかしい。


「いつになったら元の世界に戻れるのよ…」

「元の世界?」


知らない声に振り向くと、ドアの前にまた髪の長いイケメンが立っていた。


「あ…すいません」

「目覚めたんだ、元気そうでなにより」

「貴方が助けてくれたんですか?」

「助けた?君が神木の上に現れたんだろう?」


2人で頭にはてなが浮かぶ状況になった。状況を整理するために話をした結果、私はどうやらワープしてきてしまったようだ。王都から遠く離れた辺境の地まで飛んでいたらしい。彼が言った神木というのは彼等の種族エルフが信仰してる木のことで王都にも神木から枝分かれした木がたまたまあったのでないかと言っていた。木から木へワープなんてするのか半信半疑で聞いていたけど、私が異世界から来たから出来ることらしい。


「王都にいたのに何も教えてもらえなかった?」

「生きることに精一杯だったので」


それから私が王都で生活について根掘り葉掘り聞かれたのでありのまま答えた。ヴァンパイア系譜の種族だった事も伝えれば珍しい種族だなって軽く笑ってた。


「名乗り忘れてたがリンランディアだ、よろしく」

「レミです。よろしくお願いします。」

「敬語はいらない、気楽に話してくれ」

「じゃあ、よろしく」

「早速この家を案内しておくよ」

「え、ここにいていいの?」

「構わない。話を聞いている限り行く場所もないんだろう?好きなだけいてくれて構わない。」

「ありがとう、助かる」

「それと君はこっちの世界の常識を知る必要がある」

「それは分かってるけど…」

「何処まで知ってる?」

「王都の名前と基本的な貴族のマナーは覚える必要があったから知ってるよ。簡単な文字と単語は読み書きできるし」


小さく舌打ちしてたけど何か気分悪くなることでも言ったかな。


「殆ど分からないってことか」

「うん、そうだね。働いてたお屋敷以外は殆ど出たことなかったから、買い物もできないしどんな所か知らないの」

「ひと通り生活できるようになるまでは、私が面倒を見るよ。」

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