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25:御前会議
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「…と言うわけで、此度の候補は残念ながら不適格と言わざるを得ません」
大聖堂の最奥に設けられた部屋の中で、四人の男女がテーブルを囲み、顔を突き合わせていた。モーリス・ブリアンは先ほど目の前で起きた出来事に未だ憤懣やるかたなく、額に青筋を立てたまま報告を続ける。
「彼女の浄化魔法は、制御不能です。本人は自分の意志で魔法を発動させているつもりでいますが、とんでもない!彼女はいわば、塩や胡椒の詰まった瓶の様なもの。蓋を開けて瓶を振れば否応なく塩胡椒が出るのと同じで、彼女が剣を突くと、その意思に関わらず浄化魔法が暴発するのです」
「…」
モーリスが捲し立てるように報告する傍らで、隣に座るフランシーヌが青い顔でテーブルの木目を見つめたまま、唇を噛んでいる。モーリスはそんなフランシーヌの思い詰めた顔に一瞬目を向けるが、再び前を向き、二人の男に対して訴えた。
「確かに彼女の浄化魔法は、対アンデッドの点で考えると、非常に有効でしょう。その火力は、お二方も先ほど修練場で目にされた通り、折り紙付きです。ですが、それも使い手が制御できてこそのもの。のべつ幕なしに殺人光線をばら撒くような者を聖女に認定しては、教会、ひいては帝国の権威の失墜に繋がります」
「…フランシーヌ、君はどう思う?」
モーリスの報告を受けた二人のうち、年嵩の恰幅の良い男がフランシーヌに尋ねた。フランシーヌは顔を上げ、青い顔色のまま、それでも決然とした表情で男に答える。
「…流石に私も、あのままの彼女を聖女に推薦するわけにはいかないと、痛感しております。ですが、それは、彼女の存在を否定しているのではありません。彼女は言うなれば、伝説の剣を持って生まれた赤ん坊です。今でこそその挙動に細心の注意を払わねばなりませんが、その責任は親である私が負うべきもの、彼女を見放すつもりは毛頭ございません。
…彼女はまだ、生まれて3週間です。教皇猊下は、入信して3週間の修道僧に、枢機卿としての見識を求めますか?皇帝陛下は、剣を振り始めて僅か3週間の兵士に、万を超える軍隊を率いさせますか?彼女には何よりも、時間が必要です。自身が手にする『剣』の重さを知り、大きさを知り、危うさを知り、そして効能と意義を理解し、自らと一体化する。その時間が必要です。それにどれほどの時間が要するか分かりませんが、私は最後まで彼女を支援し、見守っていく覚悟です」
「そうか…」
フランシーヌの決意を見た教皇は頷き、傍らに座る男に目を向ける。
「…陛下は、如何様にお考えで?」
「…」
教皇の問いに皇帝は即座に答えず、モーリスに尋ねる。
「…モーリス。聖女として考慮せず、対アンデッドのみに焦点を当てた場合、君は彼女の力をどう見る?」
「『天敵』です」
皇帝の質問に、モーリスは即座に答えた。
「兵器として見れば、リュシー・オランドに並ぶ者は居りません。彼女の魔法は、弾速、貫通力、速射性、連射性、燃費の五つにおいて他の追従を赦しません。此処に浄化魔法としてのアンデッド特効が加わるので、アンデッド側からすれば悪夢としか思えんでしょうな。北部戦線に居るカサンドラ様と比較しても、劣るのは攻撃範囲のみ、それも連射で容易に覆せます」
「何しろ、連続詠唱の疲労より刺突の繰り返しによる疲労が先に来ますからね…」
モーリスの報告を聞いたフランシーヌが、あまりの低燃費ぶりに呆れたように応じる。フランシーヌの諦観の如き呟きを打ち消すように、皇帝の声が部屋の中に響き渡った。
「…わかった。皆の意見を元に、余が最終判断を下そう。フランシーヌ、引き続き、彼女の面倒を見てくれ」
「畏まりました、陛下」
***
「嗚呼ぁぁぁぁぁぁぁ…坊ちゃん、一体、私はどうしたら好いんでしょう」
「俺に聞くなよ…」
帝都のラシュレー家の館に戻った私は、坊ちゃんの部屋のソファに身を投げ出し、クッションを頭から被って嘆いていた。向かいに座る坊ちゃんも不貞腐れた表情を浮かべ、投げやりに答える。
剣だけだと思っていたのに、刃物なら何でもよくなっちゃった。私、もう、ご飯の時にナイフ使えない。
あそこまでやらかしては、流石に聖女になれるとは思えない。お義父様と呼べる千載一遇のチャンスが遠のき、対邪神様用ホウ酸団子の夢も潰えようとしている状況を前に、日頃ちょっとやそっとでは動じない私も意気消沈し、暗澹たる思いを募らせる。見かねた坊ちゃんが、私に慰めの言葉を掛けてくれた。
「もうこの際、死人や怪我人が出ずに済んで良かったと割り切るしかないんじゃないか?聖女になるつもりで上京したのに、咎人になっては目も当てられない」
「うぅぅ…そうですね、もう、そう考えます…」
これ以上取り返しのつかない事をやらかして、お義父様や坊ちゃんにご迷惑をかけるわけにもいかない。元々平民出の一侍女には過ぎた話だったと踏ん切りをつけていたところで、部屋の扉がノックされた。
「…シリル様、ノエミです。入ってもよろしいでしょうか」
「ああ、構わん」
「失礼します」
坊ちゃんの応えを受け入室して来たノエミは、クッションを頭から被り、ソファにうつ伏せている私を見て眉を顰める。
「…リュシーさん、あなた、シリル様の前で何をやっているんですか?」
「ままならない人生を嘆いていたの…」
「ままならないのは、あなたの態度でしょうが…シリル様、リュシーさんの事、ちゃんと躾けて下さい」
「ああ、これからは気を付けるよ。悪いな、ノエミ」
「ノエミ、私の事、室内犬か何かだと思ってない?」
「少なくとも侍女には見えませんよ?」
うっ、痛いトコ突かれた。反論しようのない指摘に渋々身を起こす私を余所に、ノエミが坊ちゃんに報告する。
「シリル様に、宮廷から呼び出しが参りました。明日、聖女候補と共に参内せよ、との事です」
「明日?…やはり、先ほどの失態が駄目押しになったか…」
「うぅぅ、すみません、坊ちゃん」
「…まぁ、気にするな。元々聖女候補なんて、降って湧いた話なんだ。右手も治ったし、これからはちゃんと俺の侍女として働いて貰うぞ?」
ソファの上で正座し、しょげ返っている私を見て、坊ちゃんが溜息をつく。その表情は、何故か嬉しそうだった。
***
「ふわぁぁぁぁぁ…」
翌日、皇帝陛下がお住まいになられる宮殿へと赴いた私は、坊ちゃんに続いて馬車から顔を出した途端、その壮麗さに圧倒され思わず声を上げた。
領都サン=スクレーヌにあるラシュレー家の邸宅だって十分に大きいけど、皇帝陛下の宮殿と比べると足元にも及ばない。白亜の宮殿という表現が相応しい純白の壁が世界を区切るように一直線に横たわり、整然と並ぶ大きな窓を飾るステンドグラスが陽の光を浴びて燦然と輝く。重厚な柱や壁に彫られた模様は、まるで楽曲を奏でるように繊細な流れをもって静寂と躍動を表現する。私は王宮という名の巨大な彫刻画に魅入られ、しばし呆然と見上げていた。
「…お前、何をぼうっとしているんだ?早く手を出せ」
「…え?」
我に返った私が目を向けると、坊ちゃんが馬車の傍らに立ち、馬車から身を乗り出したままの私に右手を差し伸べている。私は慌てて手を振り、坊ちゃんの申し出を断った。
「坊ちゃん!?そんな、私なんぞエスコートされなくとも…」
「お前なぁ、今日の自分の身なりを考えろ。これでエスコートしなかったら、俺の評価が落ちるだろうが」
「あ…」
手を差し伸べたまま坊ちゃんが放った言葉に、私は自分の衣装に目を落とした。今日の私はいつものお仕着せの地味なワンピースではなく、薄桃色のドレスに身を包んでいた。謁見があるだろうとこの日のためにわざわざマリアンヌ様からいただいたドレスは、胸元から下を鮮やかに彩り、首元から肩にかけて露わになった白い肌を惹き立てる。胸元は大きく開き、私の張りのある二つの膨らみが優雅な曲線を描き、深い谷を形成していた。私は首元に絡みつく漆黒のチョーカーの感触を意識しながら、頬を染め、おずおずと坊ちゃんの手を取った。
「申し訳ありません、坊ちゃん」
「謝るな。…しかし、お袋のセンスも悪くないな。お前に良く似合っている」
「えっ?…きゃっ!?」
「おっと」
坊ちゃんの手を借り馬車を降りようとしていた私は、突然の坊ちゃんの評価に驚き、タラップを踏み外した。地面に崩れ落ちそうになった私の右脇に坊ちゃんが素早く手を差し込み、私は坊ちゃんに正面から抱きかかえられる。
「大丈夫か、お前?足、挫かなかったか?」
「だ、大丈夫です…お騒がせしました…」
坊ちゃんの堅い体と私の張りのある膨らみが触れ合い、心臓が一つ大きく跳ねた。坊ちゃんの首元から漂う、お義父様とは異なる匂いが肺を満たし、鼓動を乱す。体温が上がり、私から離れていく男性の感触が名残惜しい。
「お前、本当に大丈夫か?下ばかり向いて」
「大丈夫です…ちょっと靴が慣れないだけですから…」
な、何か調子狂うな。坊ちゃんにエスコートされているせいかな。
私は自分の頬を伝う熱に戸惑い、坊ちゃんにエスコートされたまま、顔の火照りが引くまで下を向いて歩いていた。
大聖堂の最奥に設けられた部屋の中で、四人の男女がテーブルを囲み、顔を突き合わせていた。モーリス・ブリアンは先ほど目の前で起きた出来事に未だ憤懣やるかたなく、額に青筋を立てたまま報告を続ける。
「彼女の浄化魔法は、制御不能です。本人は自分の意志で魔法を発動させているつもりでいますが、とんでもない!彼女はいわば、塩や胡椒の詰まった瓶の様なもの。蓋を開けて瓶を振れば否応なく塩胡椒が出るのと同じで、彼女が剣を突くと、その意思に関わらず浄化魔法が暴発するのです」
「…」
モーリスが捲し立てるように報告する傍らで、隣に座るフランシーヌが青い顔でテーブルの木目を見つめたまま、唇を噛んでいる。モーリスはそんなフランシーヌの思い詰めた顔に一瞬目を向けるが、再び前を向き、二人の男に対して訴えた。
「確かに彼女の浄化魔法は、対アンデッドの点で考えると、非常に有効でしょう。その火力は、お二方も先ほど修練場で目にされた通り、折り紙付きです。ですが、それも使い手が制御できてこそのもの。のべつ幕なしに殺人光線をばら撒くような者を聖女に認定しては、教会、ひいては帝国の権威の失墜に繋がります」
「…フランシーヌ、君はどう思う?」
モーリスの報告を受けた二人のうち、年嵩の恰幅の良い男がフランシーヌに尋ねた。フランシーヌは顔を上げ、青い顔色のまま、それでも決然とした表情で男に答える。
「…流石に私も、あのままの彼女を聖女に推薦するわけにはいかないと、痛感しております。ですが、それは、彼女の存在を否定しているのではありません。彼女は言うなれば、伝説の剣を持って生まれた赤ん坊です。今でこそその挙動に細心の注意を払わねばなりませんが、その責任は親である私が負うべきもの、彼女を見放すつもりは毛頭ございません。
…彼女はまだ、生まれて3週間です。教皇猊下は、入信して3週間の修道僧に、枢機卿としての見識を求めますか?皇帝陛下は、剣を振り始めて僅か3週間の兵士に、万を超える軍隊を率いさせますか?彼女には何よりも、時間が必要です。自身が手にする『剣』の重さを知り、大きさを知り、危うさを知り、そして効能と意義を理解し、自らと一体化する。その時間が必要です。それにどれほどの時間が要するか分かりませんが、私は最後まで彼女を支援し、見守っていく覚悟です」
「そうか…」
フランシーヌの決意を見た教皇は頷き、傍らに座る男に目を向ける。
「…陛下は、如何様にお考えで?」
「…」
教皇の問いに皇帝は即座に答えず、モーリスに尋ねる。
「…モーリス。聖女として考慮せず、対アンデッドのみに焦点を当てた場合、君は彼女の力をどう見る?」
「『天敵』です」
皇帝の質問に、モーリスは即座に答えた。
「兵器として見れば、リュシー・オランドに並ぶ者は居りません。彼女の魔法は、弾速、貫通力、速射性、連射性、燃費の五つにおいて他の追従を赦しません。此処に浄化魔法としてのアンデッド特効が加わるので、アンデッド側からすれば悪夢としか思えんでしょうな。北部戦線に居るカサンドラ様と比較しても、劣るのは攻撃範囲のみ、それも連射で容易に覆せます」
「何しろ、連続詠唱の疲労より刺突の繰り返しによる疲労が先に来ますからね…」
モーリスの報告を聞いたフランシーヌが、あまりの低燃費ぶりに呆れたように応じる。フランシーヌの諦観の如き呟きを打ち消すように、皇帝の声が部屋の中に響き渡った。
「…わかった。皆の意見を元に、余が最終判断を下そう。フランシーヌ、引き続き、彼女の面倒を見てくれ」
「畏まりました、陛下」
***
「嗚呼ぁぁぁぁぁぁぁ…坊ちゃん、一体、私はどうしたら好いんでしょう」
「俺に聞くなよ…」
帝都のラシュレー家の館に戻った私は、坊ちゃんの部屋のソファに身を投げ出し、クッションを頭から被って嘆いていた。向かいに座る坊ちゃんも不貞腐れた表情を浮かべ、投げやりに答える。
剣だけだと思っていたのに、刃物なら何でもよくなっちゃった。私、もう、ご飯の時にナイフ使えない。
あそこまでやらかしては、流石に聖女になれるとは思えない。お義父様と呼べる千載一遇のチャンスが遠のき、対邪神様用ホウ酸団子の夢も潰えようとしている状況を前に、日頃ちょっとやそっとでは動じない私も意気消沈し、暗澹たる思いを募らせる。見かねた坊ちゃんが、私に慰めの言葉を掛けてくれた。
「もうこの際、死人や怪我人が出ずに済んで良かったと割り切るしかないんじゃないか?聖女になるつもりで上京したのに、咎人になっては目も当てられない」
「うぅぅ…そうですね、もう、そう考えます…」
これ以上取り返しのつかない事をやらかして、お義父様や坊ちゃんにご迷惑をかけるわけにもいかない。元々平民出の一侍女には過ぎた話だったと踏ん切りをつけていたところで、部屋の扉がノックされた。
「…シリル様、ノエミです。入ってもよろしいでしょうか」
「ああ、構わん」
「失礼します」
坊ちゃんの応えを受け入室して来たノエミは、クッションを頭から被り、ソファにうつ伏せている私を見て眉を顰める。
「…リュシーさん、あなた、シリル様の前で何をやっているんですか?」
「ままならない人生を嘆いていたの…」
「ままならないのは、あなたの態度でしょうが…シリル様、リュシーさんの事、ちゃんと躾けて下さい」
「ああ、これからは気を付けるよ。悪いな、ノエミ」
「ノエミ、私の事、室内犬か何かだと思ってない?」
「少なくとも侍女には見えませんよ?」
うっ、痛いトコ突かれた。反論しようのない指摘に渋々身を起こす私を余所に、ノエミが坊ちゃんに報告する。
「シリル様に、宮廷から呼び出しが参りました。明日、聖女候補と共に参内せよ、との事です」
「明日?…やはり、先ほどの失態が駄目押しになったか…」
「うぅぅ、すみません、坊ちゃん」
「…まぁ、気にするな。元々聖女候補なんて、降って湧いた話なんだ。右手も治ったし、これからはちゃんと俺の侍女として働いて貰うぞ?」
ソファの上で正座し、しょげ返っている私を見て、坊ちゃんが溜息をつく。その表情は、何故か嬉しそうだった。
***
「ふわぁぁぁぁぁ…」
翌日、皇帝陛下がお住まいになられる宮殿へと赴いた私は、坊ちゃんに続いて馬車から顔を出した途端、その壮麗さに圧倒され思わず声を上げた。
領都サン=スクレーヌにあるラシュレー家の邸宅だって十分に大きいけど、皇帝陛下の宮殿と比べると足元にも及ばない。白亜の宮殿という表現が相応しい純白の壁が世界を区切るように一直線に横たわり、整然と並ぶ大きな窓を飾るステンドグラスが陽の光を浴びて燦然と輝く。重厚な柱や壁に彫られた模様は、まるで楽曲を奏でるように繊細な流れをもって静寂と躍動を表現する。私は王宮という名の巨大な彫刻画に魅入られ、しばし呆然と見上げていた。
「…お前、何をぼうっとしているんだ?早く手を出せ」
「…え?」
我に返った私が目を向けると、坊ちゃんが馬車の傍らに立ち、馬車から身を乗り出したままの私に右手を差し伸べている。私は慌てて手を振り、坊ちゃんの申し出を断った。
「坊ちゃん!?そんな、私なんぞエスコートされなくとも…」
「お前なぁ、今日の自分の身なりを考えろ。これでエスコートしなかったら、俺の評価が落ちるだろうが」
「あ…」
手を差し伸べたまま坊ちゃんが放った言葉に、私は自分の衣装に目を落とした。今日の私はいつものお仕着せの地味なワンピースではなく、薄桃色のドレスに身を包んでいた。謁見があるだろうとこの日のためにわざわざマリアンヌ様からいただいたドレスは、胸元から下を鮮やかに彩り、首元から肩にかけて露わになった白い肌を惹き立てる。胸元は大きく開き、私の張りのある二つの膨らみが優雅な曲線を描き、深い谷を形成していた。私は首元に絡みつく漆黒のチョーカーの感触を意識しながら、頬を染め、おずおずと坊ちゃんの手を取った。
「申し訳ありません、坊ちゃん」
「謝るな。…しかし、お袋のセンスも悪くないな。お前に良く似合っている」
「えっ?…きゃっ!?」
「おっと」
坊ちゃんの手を借り馬車を降りようとしていた私は、突然の坊ちゃんの評価に驚き、タラップを踏み外した。地面に崩れ落ちそうになった私の右脇に坊ちゃんが素早く手を差し込み、私は坊ちゃんに正面から抱きかかえられる。
「大丈夫か、お前?足、挫かなかったか?」
「だ、大丈夫です…お騒がせしました…」
坊ちゃんの堅い体と私の張りのある膨らみが触れ合い、心臓が一つ大きく跳ねた。坊ちゃんの首元から漂う、お義父様とは異なる匂いが肺を満たし、鼓動を乱す。体温が上がり、私から離れていく男性の感触が名残惜しい。
「お前、本当に大丈夫か?下ばかり向いて」
「大丈夫です…ちょっと靴が慣れないだけですから…」
な、何か調子狂うな。坊ちゃんにエスコートされているせいかな。
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