13 / 23
12.
しおりを挟む
週が明け、今日も今日とて学校が始まる。
鈴里怜の時に社会人として働いていた経験がある今、改めてゆっくり学生生活を過ごすことができるというのは中々に楽しい。
日本とは歴史やマナーなどが異なる為、勉強自体が楽なわけではない。
それでも現役の学生に比べれば自分に合う勉強方法くらいは理解しているので多少は有利かもしれない。
それに世界観を学べると思うと勉強も趣味の内な気分になる。
『キミと輝く星の未来』はストーリーもキャラクターも好みではあったが、そもそもの世界観が好きだったのだ。
異世界に転生してしまったのは衝撃ではあったが、好きなゲームの世界に行くことができたのは運が良かったのかも知れない。
「結果がどうなるかは分からないけど、一応推しの婚約者にはなれたんだしね。」
「推し、ですか?」
無意識のうちに声に出してしまっていたようだ。
言葉を繰り返したエリーゼ様に曖昧な笑みを返す。
もちろん、笑みだけで流されてくれるエリーゼ様ではない。
「…授業が終わりましたら、ご説明いたしますわ」
「あまりお話ししていると先生に叱られてしまいますものね!では、のちほど。」
推し、という単語だけであれば問題はないだろうが、うっかり口に出してしまうのは注意しないといつか墓穴を掘る事になりそう…
ちょっと気をつけるようにしようと心に決め、ペンを握り直した。
--------------------------------------
お昼のランチボックスを手に、中庭の休憩スペースへと向かう。
自由に使えるテーブルと椅子が常設されており、テーブル同士の距離がある程度取られている中庭は
ゆっくりと話をするのに最適なスペースなのだ。
「では人に薦めたいほど好きな、といった意味を含んでいる言葉ということなのですね。心がときめくような、好きとはまた違う尊いような表現の難しい感情のこと…」
「えぇ。私も以前他の方が仰っていた言葉を聞いて、私のこの感情に言葉を当てはめるならまさにそれかもしれないと思って使っただけなので、正しい使い方なのかどうかは分からないのですが…物語の登場人物や、舞台の俳優の方々に対して使われる事が多いみたいですね。」
正直、きちんと意味を調べて使っていたわけではないのでどういう意図で使っていたかといった表現でエリーゼ様に説明をする。
「そして、婚約者様…サスティ様がレイチェル様にとっての推し、なのですか?」
そこまで聞こえていたのか、と少しソワソワしながら小さく頷く。
「そうですね。私からすると好きと気軽に言えるような感覚よりは、憧れとかそういったもの方が近いのかもしれません。」
「先日のお茶会でのお話でもそうでしたが、なんだか不思議な関係性ですのね。近いのに、遠いというか…レイチェル様はあまり乗り気ではないのですか?」
「いえ!まさかそんな!憧れに近い方とのご縁ですから、不満なんてないのです。ただ、そうですね…私がお側にいることに違和感は感じています。私よりよっぽどお似合いな方がいらっしゃるんじゃないかな、とか」
言いながら、そうなんだよな、と暗い気持ちに包まれていく。
セオドア様の隣でヒロインが微笑んでいるスチルしか見たことがないのだ。
隣に自分がいる姿には違和感しか無い。
隣にいるべきはヒロインで、間も無く私の居場所は彼女と入れ替わるのです。
彼の隣に居られなくなることが怖くて、踏み込めないのです。
なんて言うことはもちろんできないので、伝えられる言葉にすり替えて答える。
「まぁ!レイチェル様は優秀ですもの。優しい方ですし、未来の公爵夫人としてなんの心配も無いとの噂ですわよ?ましてこの婚約はお家同士の契約ですもの。そうそう崩れる関係ではございません。不安に思うよりも前向きに受け入れてご自身の自信を増やしていく方がよほど効率的ですわよ!」
そう、揺るぐことのない関係なのであればそれが1番なのだ。
うじうじと落ち込む暇があれば、他者に負けないよう自分を鍛えた方が有用なのはわかっている。
それが1番セオドア様のためになる事も。
普通揺るぐことがないと、この世界の誰もが思っているこの婚姻関係は
一年後、あっさりと無くなってしまうような縁なのだ。
なんならブームか?と思うくらい、攻略対象全員分の婚約破棄が起きる可能性がある。
滅多にない事象が、いっぺんに5件発生する可能性があることを私は知っている。
頑張れば頑張るほど虚しさが大きくなりそうで、前向きになれない自分はなんて臆病なのだろうか。
前向きに!と励ましてくれるエリーゼ様に伝えることはできずに、色々な言葉を飲み込んだ。
「そう、ですね。前向きになれるように頑張りますわ」
鈴里怜の時に社会人として働いていた経験がある今、改めてゆっくり学生生活を過ごすことができるというのは中々に楽しい。
日本とは歴史やマナーなどが異なる為、勉強自体が楽なわけではない。
それでも現役の学生に比べれば自分に合う勉強方法くらいは理解しているので多少は有利かもしれない。
それに世界観を学べると思うと勉強も趣味の内な気分になる。
『キミと輝く星の未来』はストーリーもキャラクターも好みではあったが、そもそもの世界観が好きだったのだ。
異世界に転生してしまったのは衝撃ではあったが、好きなゲームの世界に行くことができたのは運が良かったのかも知れない。
「結果がどうなるかは分からないけど、一応推しの婚約者にはなれたんだしね。」
「推し、ですか?」
無意識のうちに声に出してしまっていたようだ。
言葉を繰り返したエリーゼ様に曖昧な笑みを返す。
もちろん、笑みだけで流されてくれるエリーゼ様ではない。
「…授業が終わりましたら、ご説明いたしますわ」
「あまりお話ししていると先生に叱られてしまいますものね!では、のちほど。」
推し、という単語だけであれば問題はないだろうが、うっかり口に出してしまうのは注意しないといつか墓穴を掘る事になりそう…
ちょっと気をつけるようにしようと心に決め、ペンを握り直した。
--------------------------------------
お昼のランチボックスを手に、中庭の休憩スペースへと向かう。
自由に使えるテーブルと椅子が常設されており、テーブル同士の距離がある程度取られている中庭は
ゆっくりと話をするのに最適なスペースなのだ。
「では人に薦めたいほど好きな、といった意味を含んでいる言葉ということなのですね。心がときめくような、好きとはまた違う尊いような表現の難しい感情のこと…」
「えぇ。私も以前他の方が仰っていた言葉を聞いて、私のこの感情に言葉を当てはめるならまさにそれかもしれないと思って使っただけなので、正しい使い方なのかどうかは分からないのですが…物語の登場人物や、舞台の俳優の方々に対して使われる事が多いみたいですね。」
正直、きちんと意味を調べて使っていたわけではないのでどういう意図で使っていたかといった表現でエリーゼ様に説明をする。
「そして、婚約者様…サスティ様がレイチェル様にとっての推し、なのですか?」
そこまで聞こえていたのか、と少しソワソワしながら小さく頷く。
「そうですね。私からすると好きと気軽に言えるような感覚よりは、憧れとかそういったもの方が近いのかもしれません。」
「先日のお茶会でのお話でもそうでしたが、なんだか不思議な関係性ですのね。近いのに、遠いというか…レイチェル様はあまり乗り気ではないのですか?」
「いえ!まさかそんな!憧れに近い方とのご縁ですから、不満なんてないのです。ただ、そうですね…私がお側にいることに違和感は感じています。私よりよっぽどお似合いな方がいらっしゃるんじゃないかな、とか」
言いながら、そうなんだよな、と暗い気持ちに包まれていく。
セオドア様の隣でヒロインが微笑んでいるスチルしか見たことがないのだ。
隣に自分がいる姿には違和感しか無い。
隣にいるべきはヒロインで、間も無く私の居場所は彼女と入れ替わるのです。
彼の隣に居られなくなることが怖くて、踏み込めないのです。
なんて言うことはもちろんできないので、伝えられる言葉にすり替えて答える。
「まぁ!レイチェル様は優秀ですもの。優しい方ですし、未来の公爵夫人としてなんの心配も無いとの噂ですわよ?ましてこの婚約はお家同士の契約ですもの。そうそう崩れる関係ではございません。不安に思うよりも前向きに受け入れてご自身の自信を増やしていく方がよほど効率的ですわよ!」
そう、揺るぐことのない関係なのであればそれが1番なのだ。
うじうじと落ち込む暇があれば、他者に負けないよう自分を鍛えた方が有用なのはわかっている。
それが1番セオドア様のためになる事も。
普通揺るぐことがないと、この世界の誰もが思っているこの婚姻関係は
一年後、あっさりと無くなってしまうような縁なのだ。
なんならブームか?と思うくらい、攻略対象全員分の婚約破棄が起きる可能性がある。
滅多にない事象が、いっぺんに5件発生する可能性があることを私は知っている。
頑張れば頑張るほど虚しさが大きくなりそうで、前向きになれない自分はなんて臆病なのだろうか。
前向きに!と励ましてくれるエリーゼ様に伝えることはできずに、色々な言葉を飲み込んだ。
「そう、ですね。前向きになれるように頑張りますわ」
0
あなたにおすすめの小説
俺が許すよ
mahiro
恋愛
私は私を許せない。
それがたとえ前世の出来事だったとしても、到底許せるものではなかった。
転生した世界は前世の世界とは大きく異なり、何の力も存在しない平和そのままだ。
そんな世界で息を潜めながら生活をしていると、現世でも自分の姉であるミファーからとある相談を受けた。
それはミファーの変わりにとある男性と婚約してくれないかというものだった。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
悪役の烙印を押された令嬢は、危険な騎士に囚われて…
甘寧
恋愛
ある時、目が覚めたら知らない世界で、断罪の真っ最中だった。
牢に入れられた所で、ヒロインを名乗るアイリーンにここは乙女ゲームの世界だと言われ、自分が悪役令嬢のセレーナだと教えられた。
断罪後の悪役令嬢の末路なんてろくなもんじゃない。そんな時、団長であるラウルによって牢から出られる事に…しかし、解放された所で、家なし金なし仕事なしのセレーナ。そんなセレーナに声をかけたのがラウルだった。
ラウルもヒロインに好意を持つ一人。そんな相手にとってセレーナは敵。その証拠にセレーナを見る目はいつも冷たく憎しみが込められていた。…はずなのに?
※7/13 タイトル変更させて頂きました┏○))ペコリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる