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恋のライバル
僕はオッサンではないと何度言えば分かるんですか。
しおりを挟む「ぐっ、茶番はここまでですよ‥‥少年。それに、お子様はもう家に帰る時間です。
いつまでも僕の澪の家に図々しく居座るのは、どうかと思いますね。」
千鶴は下顎をさすりながら苦しそうに立ち上がると、威嚇するようにして葵くんを冷ややかな目で睨み付ける。
あたかも自分がこの家の主人だと言わんばかりの態度だ。
ていうか!今の今まで図々しかったのはアンタだ。
図々しいという言葉が日本一ふさわしいよ。
と、私はヤツにそう言いかけたのだが、喉元でその言葉は塞き止められ、代わりに出たのは渇いた溜め息だった。
「はあ?何で俺がオッサンに指図されなきゃならないのさ。
オッサンが出て行きなよ。」
すると私が言いたかった台詞を、葵くんが的確に言ってくれた。
「何故です?僕は澪の恋人です。
出て行く理由なんて、世界のどこを探しても見付かりやしませんよ。それと、僕はオッサンではないと何度言えば分かるんですか。
学習能力に欠けていますね。」
一方、千鶴は千鶴で負けるものかと大人気なく1人よがりな理屈を並べたて始めたので、私は呆れ果てながらソファに座り、2人の言い争いを傍観することにした。
「だってさ、オッサンはオッサンだもの。俺の目にはそう映るんだから仕方ないじゃん。
否定するなら年齢教えてよ。
バカじゃない?」
葵くんが含み笑いをしながら生意気にそう言えば、千鶴の口の端がほんのわずかだがピクリと引きつった。
「‥‥君に教える筋合いはありませんよ。
それと、僕は断じて馬鹿じゃありません。」
「あっそう。それじゃ、オッサンもバカ呼ばわりも撤回できないやぁ。
教えられないくらい、老けてるってことでしょ?」
追い討ちをかけるように、葵くんが天使の笑顔でそう言い終えた後、リビングは氷点下のピリピリとした空気にたちまち包まれた。
もはや余裕の笑みさえ浮かべられなくなった千鶴は、私がどんなに酷い台詞で罵った時よりも、数倍衝撃を受けた表情をしていた。
「‥‥あ、葵くん。
そのくらいにしておいたら?」
その時ふいに口から漏れたのは、自分自身でも予想しなかった台詞だった。
だって私も散々葵くんに辛口言われてたから‥‥。
正直、千鶴の気持ちが分からなくもないのだ。
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