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恋のライバル
消えた葵くん
しおりを挟む葵くんは、人の痛いところをオブラートに包まずに言ってくる。
その露骨な嫌味たらしい物言いはまるで小さな子供の口喧嘩を聞いているかのようで、私は思わず制裁してしまった。
「‥‥‥‥。」
葵くんは私の言葉を受けると黙り込み、眉間に皺を寄せながら口を真一文字にしてギュッと閉じ出した。
「いや、あのね?
葵くんは悪くないのよ、全然!
‥‥でも、ちょっと言い過ぎかなぁ~と‥‥。」
あーあ。何やってんだろ、私。
ここで口の聞き方に対して説教するなんて、千鶴との口論を口実にしてるだけだ。
本当は、自分が言われた時に注意すべきだったのに。
私はそう思いを巡らせると、明らかに怒っている葵くんの顔をおそるおそる覗き込む。
すると葵くんはその視線をかわすように顔を背けて立ち上がり、玄関に向かって無言で歩き出した。
「‥‥え、ちょっと!」
それを引き止めようと葵くんの華奢な腕を掴んだが、その手は彼によってすぐに振り落とされる。
「‥‥るさい。」
「え?」
震えた声が小さすぎて聞き取れず、私がもう一度言ってくれという意味を含めたマヌケな返答を返すと、葵くんは間を空けずに再び同じ言葉を放った。
「うるさいよ!‥‥俺が出て行けばいいんでしょ!」
―バタン!!
ヒステリックに叫ばれた大きな声が壁を反響したかと思うと、それに続いて玄関のドアが乱暴に閉められた。
私は呆気に取られたまま行き場の無い手を見つめ、たった今起こった出来事を脳細胞の少ない頭で懸命に整理をした。
‥‥よく分からないけど、すごく怒らせてしまったのは確かだ。
「はぁ、やっと消えてくれました。」
背後から千鶴のあからさまに安堵した声が聞えたが、そんなのお構いなしで私は困惑したまま口を開けっぱなしにした。
「全く、盛りのついた中学生は嫌ですね。とんだ泥棒猫ですよ。」
元を正せば、コイツが葵くんに大人気なく言い返していたのが原因だ。
眉をひそませながらそう思い、ドアの方を見つめたまま私は立ち尽くした。
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