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恋のライバル
いい歳して駄々をこねる変態
しおりを挟むそして凪から真横にいる変態に視線を移して再び口を開く。
「アンタもさっさとカ・エ・レ‥‥ッ!」
ベッタリと寄り添ってくる千鶴の頭を押しやりながら、途切れ途切れに言った。
言うのがかなり遅れたけどさ‥‥
ホントもう、頼むから早く帰ってくれ!
「イ・ヤ・で・す!!」
それに抵抗する千鶴は、私が言い放った口調を真似して尚更すり寄ってきた。
「ちょっと~、目の前でラブラブしないで下さぁい。」
凪は目を反らし口を尖らせながら『見てられないわよ、このバカップル』と言わんばかりの台詞を寄こしてきた。
「ラブラブじゃねー!
どちらかと言えばギスギスだよ!
てゆーか熱い!くっつくな!
帰れ帰れ帰れぇ!!」
「澪‥‥?」
物凄い剣幕で叫ぶ私を、千鶴は悲しそうな目で見つめてきた。
「そんな顔しても駄目だからね!
ハイ、とっとと帰った。」
パンパンと2回手を叩きながら仕切るようにしてそう言ってやると、千鶴は首をかしげながら口を開いた。
「‥‥熱いなら、コタツから出たらどうですか?」
「‥‥‥‥。」
―ドカァッ!
しばし静止した後、強烈な正拳突きをヤツのどてっ腹にお見舞いした。
やっぱり‥‥口で言っても駄目みたいだから、ね。
武力行使しかないわ。
「澪~!まだ一緒にいたいです!」
床に吹っ飛ばされた千鶴は、横たわりながら地団太をこね始めた。
「ええい!いい歳こいて、駄々をこねるな!駄々を!」
「そんな、いい歳って‥‥。
やれやれ。澪は僕の歳、知らないじゃないですか。」
「うっせー!んなもん一生涯知らなくてもイイわぁ!」
私は声を張り上げると、いい歳こいたであろう変態の首根っこを猫のように掴み上げ、玄関口につまみ出した。
すると千鶴は、観念したのか立ち上がって俯き出した。
「分かりました‥‥今日はもう帰ります。」
ほう、今日はえらく物分かりがイイじゃない。
‥‥そう思った矢先に注がれた、変態の非難の眼差し。
「‥‥僕が出て行けばいいんでしょ!」
―バタバタバタ‥‥ガチャン!
千鶴は少女漫画の悲劇のヒロインのごとく、涙を風に乗せながら走って出て行った。
さっき葵くんが放った捨て台詞を真似て叫びながら。
「いやいや‥‥葵くんの真似したって、追いかけたりしませんからね?」
嵐が過ぎ去った後、私はポツリとそう独り言を漏らした。
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