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恋のライバル
調教のススメ
しおりを挟む「お姉~?ちょっと来てぇ~。」
すると凪が後ろから甘ったるい声を出し、おいでおいでの仕草をしてきた。
「何よ‥‥。」
私は疲弊したかのような溜め息をついて投げやりにそう言うと、再び凪の向かいに着席した。
「上手くいってんじゃんっ。」
ニコニコした妹は、唐突にそう言った。
「何が?」
「も~、千鶴さんのコトだよ!
調教するって宣言、まさか忘れたワケじゃないよねぇ?」
「調教ぉー?」
何のこと?という意味で私はそう返すと、凪はじれったそうにして甲高い声を大きくした。
「ハァ~?もう、お姉ったら~!
ついこの前話し合いしたじゃん。
ほら、千鶴さんを手なずけるってさ!」
手なずけるぅ?
「‥‥‥‥ああ。」
しばし凪の顔を見つめた後、やっと思い出した。
そういえば調教するとかなんとか‥‥決心してたわ、私。
すっかり忘却していた記憶を呼び覚ますと、何故か急に疲労がのしかかってきたのを感じた。
「‥‥今日は学校で恥ずかしい歌は披露するわ、ベランダから家に侵入してくるわ、靴を盗もうとするわ‥‥。
どう?これでも上手くいくって思う?」
人事だと思って‥‥全く。
今日の出来事を嫌味ったらしく一気に話すと、凪は目をパチクリした。
「え~。じゃあ、止めちゃうの?
ちょーきょー。」
「止めるってか、無理!アイツは強烈すぎる。
達成出来ない目標は、立てないものね‥‥思い知った。」
私はハァーッと大げさな溜め息をつきながら喋った。
凪はそれを聞いているのかいないのか、天井を見つめながらのん気にソファの上で左右に頭をゆらゆらと揺らしている。
私は煙草に火を点けると、ヤジロベエみたく揺れている妹を横目で見た。
「‥‥じゃあ、私がもらっちゃおうかな‥‥。」
「は?」
私は紫煙を口から吹き出しながら、マヌケな返答をした。
「‥‥千鶴さん。
私がもらっちゃおーっと。」
自分の分身が真面目な顔でそう言った瞬間、胸の中で何かモヤモヤとしたモノが湧いた。
私はそれを煙草の煙だろうと思うことにした。
―思えば、この時はまだ知らなかったのだ。
妹が胸の内に秘めている悩みを。
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