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恋の忘れ形見②
あんな風に可愛くなれたら
しおりを挟む私も、あんな風に可愛くなれたらいいのに。
先生きっとモテるんだろうなぁ。
閉められた喫煙所のドアを見つめながらそんなことを考え、バッグを持って席を立った。
「‥‥あれ、何で帰らないでここに来たんだっけ?」
マヌケな独り言を呟いた後、肩に掛けたバッグに目をやった。
あ‥‥!
凪のレポートのことを思い出した時には既に遅かった。
走って会議室まで行ってしまった先生は、もうこの階にはいないだろう。
そう思案すると、私はげんなりとした溜め息をついて喫煙所を出た。
思いの他会話が弾んだんで、すっかり渡しそびれちゃった。
凪に理由を話して、提出は明日にしてもらおう。
雨宮先生なら遅れても咎めなさそうだしね‥‥。
鈴の転がるような彼女の声を頭の中で響かせながら、私は帰路に着いた。
―ガチャ‥‥
凍てついた自宅のドアをそっと開ける。
そして頭を左右に振り、人影が無いかどうかを確認してから中へ入った。
何で自分の家なのに、こんな警戒しなきゃいけないのよ‥‥。
まぁ、理由は1つだけどね。
リビングに立って体を静止させると、辺りはシーンと静まり返った。
よし、気配は無いわね。
‥‥いや、待てよ。
もしかしたら天井に張り付いているかもしれない!
バッ!と構えると、すぐに私は天井を見た。
ハハ‥‥まさかね。
いくらアイツでも、忍者じゃあるまいし。
ハハハと渇き笑いをすると、凪の部屋に入った。
「ただいま。凪、体調どう?」
「あ~うん。微熱くらい~。」
凪はベッドに横たわりながら雑誌を読んでいる。
「そう、すっかり熱も下がって良かったわね。
さっき、雨宮先生と会ったんだけどレポート渡しそびれちゃったから、提出また明日でもいい?」
「えぇ~?何で会ったのに渡しそびれるのぉ?」
凪は雑誌に視線を落としたまま、興味無さそうにして聞いてきた。
「いや、話してたら忘れちゃったのよ。ゴメンね?」
先ほどの会話を思い出しながらそう言った。
すると突然凪は雑誌から目を離し、驚いた顔でこっちを見てきた。
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