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恋の忘れ形見②
いつも救われている…?
しおりを挟む―ガチャ‥‥
帰宅して家に入ると、先ほどの賑やかな雰囲気が消えていた。
そしてお決まりのように、千鶴が真っ先に駆け付けてきた。
私は不機嫌丸出しで乱暴に靴を脱ぐ。
「お帰りなさい澪。お風呂にしますか?ご飯にしますか?
それとも、この僕にしますか?」
「‥‥‥‥。」
目に付くもの手当たり次第に破壊しそうな、そんな穏やかで無い私の様子を瞬時に察知した千鶴は、一瞬固まる。
「お、お勧めは3番の僕ですが‥‥。」
「‥‥うるさい。」
「どうしたんですか。いつになく眉間に皺が寄っていますよ?」
「黙れ。」
しかし次の瞬間には、恐いモノ知らずの変態に戻る。
「‥‥ハァ、せっかく邪魔者も退散したというのに。」
『やれやれ』と溜め息をつく千鶴の言葉を聞いて、ふとリビングに目をやった。
葵くんがいない。
「‥‥アンタ、また酷いこと言って葵くんを追い出したんじゃないでしょーね。」
険しく顔を歪ませながら私は言った。
「失礼な。
心優しい僕がそんな追い出すような真似、するわけが無いですよ。」
ああそうかい。
その潔いまでのシラの切り方に、敬服するよ。
「じゃ、何で帰ったのよ。」
「凪さんの猛烈アピールがしつこかったみたいで、逃げるようにして帰りました。」
「それ、誰かさんと誰かさんみたいね‥‥。」
顔を引きつらせながら目の前の変態を睨んだ。
それに対し千鶴は不敵な笑みを浮かべ、私の方をチラチラ横目で見てくる。
「ええ、どこぞのラブラブカップルみたいです。」
「まぁいいわよ‥‥。
あ、凪は?」
葵くんに気を取られ、すっかり病み上がりの妹を忘れていた。
「凪さんは『葵ちゃん帰っちゃったぁ。つまんな~い』と言いながら、部屋に戻りました。」
「こ、細かな説明ありがとう‥‥。」
凪の甲高い声まで正確に似せてきたので、思わず口許をゆるめて笑いそうになってしまった。
‥‥あ。
いつの間にか、克哉のこと忘れてた。
あんなにイライラしてたのに。
そう思い顔を上げると、千鶴の涼しい顔があった。
何だかんだ言って、いつも救われていると感じるのは‥‥
気のせい?
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