117 / 399
恋の忘れ形見②
垣間見る千鶴の過去
しおりを挟む私はソファに座るとレジ袋から煙草を取り出した。
ライターで白い細筒に火を点け、煙をひと吸いする。
「1本いいですか?」
すると千鶴が私の隣に座り、重低音の声でそう言ってきた。
「アンタ吸うの!?」
「ここ何年かは吸っていませんね。」
「‥‥何、禁煙してたの?」
「禁煙というか、興味が失せたので吸わなくなっただけです。」
千鶴は私から煙草を1本もらうと『ありがとうございます』と一言だけ呟き、自前のジッポーで着火した。
リビングに2本分の紫煙がユラユラと舞い、数秒の沈黙が流れた。
「てか、何で禁煙してるのにジッポーなんか携帯してるのよ。」
煙を吐き出しながら私は沈黙を破った。
「ああ、これですか?
澪が喫煙するので、ライターのオイルが無くなった時にいつでも火を差し出せるよう、常に持ち歩いているんですよ。」
「ふ、ふぅん。」
何よ、そこまでしてくれなくても‥‥。
「‥‥まで、使わないようにしていましたから。」
「え?」
「‥‥何でもありません。」
千鶴がボソリと小さく呟いたので前半部分を聞き逃した。
「‥‥な、何よ。
ひとりでたそがれちゃって馬鹿みたい。」
一瞬、千鶴が思い出に浸って遠くを見るような顔をしたので、私はつい顔をしかめてしまった。
「‥‥このジッポーは高校生の時、友人に貰った物なんです。」
「へぇ~。」
後生大事に持っているそのジッポーを見つめ、私はそっけなく呟いた。
友達‥‥いたんだ。
ん、待てよ?
「‥‥って、ちょっと待って。
もしかしてアンタ、高校の時に煙草吸ってたの?」
そうだよな。
ジッポーを貰うということは、大方喫煙しているもの。
「はい。」
無表情で言う千鶴。
片膝に肘を載せて煙草を吸う姿が様になっている。
「はい‥‥って、不良じゃん。」
「そうですか?
珍しくも無いと思いますけど。」
「いや、不良だよ。
アンタ、お坊っちゃんでしょ!?」
「まぁ、法律違反ですけど時効ですしね。」
千鶴はフフンと不敵に笑った。
ほんの一瞬だけ、冷たい目をして斜に構えるように何かを見つめていた。
錯覚だろうか?別人に見える。
私はそんな千鶴を見て、何故か背筋に冷たいモノが走った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる