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恋はさざ波に似て
ネクタイを解く仕草に…
しおりを挟む「う、うるさい!
電車に乗ったのなんて、人生のうちで3回目なんだから!
でも乗れるわよ、多分!
改札で切符を買うのよね!?」
「先行きが思いやられますね。
素直に『1人で乗れない』とおっしゃったらどうですか?」
「う……。
じゃ、タクシーで帰るもん……」
「ここから澪の家までどのくらいあると?2時間はかかりますよ。所持金、足りますかね」
「うぅ~最悪っ。帰りたい」
「それは勿論、帰れますよ。
いずれの話ですが……ね」
あああ、空気がドロドロしてきた。アンタの存在、もはやホラーだよホラー。
「いずれっていつよ」
私は蔑むように横目で視線を送る。
しかし千鶴は、いつもより不敵な笑みを端正な顔に浮かべていて。
企んでいる時のコイツの笑みほど邪悪なモノはないわ。
「さあ……どうでしょう。
少なくとも、今夜でないことは確かです」
――シュル……
千鶴はタイに長い指を絡ませ、それをゆるゆるとほどいていった。
皺の1つも見当たらない、まっさらな襟から生えた
白い首がさらけ出される。
ぼっこりと突出した喉仏を目の辺りにして、『これは無いな』と無音状態だった頭の中でそう言った。
これは無い。有り得ない、という意味だ。
自分の喉の辺りで熱い液体がゴポッと音を鳴らしたような気がしたけど、きっとそれは体調不良のせい。
気のせいとも言う。
「……耳が赤いですね、可愛い」
重低音の色気たっぷりの声が鼓膜をかすめた瞬間、私は頭頂部から噴火した。
これは俗に『キレた』とも言う。
「っっざっっけんっっなぁっ!!!」
――バキャ!!
「ぅべほっ!!」
私が叫んだと同時に右の拳が千鶴の左頬を綺麗に直撃。
あっと言う間に美形が台無しになった。
大体、『ぅべほっ』とか言っちゃう時点でお前は美形じゃねぇ。
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