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恋はさざ波に似て
アイドルヲタクの設定
しおりを挟む「何が可愛いだ!
いちいち喉元見せんじゃねえ!
アンタよか、な……南条セイヤの方がよっぽど色仕掛け上手いっつーの!!」
「……なんじょうせいや……?」
『信じられない!ダディにも殴られたことないのに!』と、今にも言い出しそうな顔をした坊っちゃん・藤堂千鶴(年齢不詳)は目を白黒させると、私の台詞を馬鹿の1つ覚えのように繰り返してきた。
「そぉー!南条セイヤ!私、南条セイヤの大っっっファンなの!
今日、ここに来たのもセイヤのシークレットライヴがあるって知ったから!もー、超~会いたかった!
つーか、目ん玉飛び出るほどカッコ良かった!!」
――ハァ……ハァ……
軽い目眩を起こしながら、息継ぎ無しで大声を張り上げたことに後悔した。
閉じかけた目をこすって無理矢理ピントを合わせれば、今にも泣き出してしまいそうな大の大人が1人。
真っ赤な左の頬を押さえながら、殴られ吹き飛んだ際についた尻餅のままの体勢で空中を見上げている。
まるで優雅に飛び回る蝶々を目で追いかけるかの光景。
「……澪の……馬鹿」
すると頭を下げ、前髪で歪んだ顔を隠す。
泣いているのだろうか。
「馬鹿で結構!
セイヤ馬鹿だもん」
「……」
私がふんぞり返ってフンッと鼻息を鳴らす一方、千鶴は再び黙り込んでしまう始末。
「黙ってないで何か言いなさいよ!」
「……浮気者」
「いやいや浮気以前に、本命はセイヤだからっ」
あれー。
いつの間に自分がセイヤフリークの設定に?勢い任せってコワイ。
けど、まぁいいや。
「1番は僕だって……あの日言いました……嘘、だったんですね」
いや、待て。
そんな『あの日』はありませんからね。
だがしかし。
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