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恋はさざ波に似て②
酔いと宵闇と
しおりを挟むあまりの恐怖に、歯をガチガチと鳴らし始めた総大くんの必死の哀願も空しく、南条セイヤはどこ吹く風で私に眩しい笑顔を向ける。
「そーいやミオちゃんはさぁ、どこの部屋から来たの?」
「えっ……桜の間、ですケド」
「ふぅ~ん。じゃ、泊まってきなよ!
僕の部屋、この旅館で一番広いよ~」
まるで『飴あげるからオジサンに着いておいで』と言わんばかりの誘い文句だ。
「はぁ」
「夜は、一緒に寝よっ」
「駄目っって言ってんでしょがー!!」
野良犬の猛々しい遠吠えを思わせる総大くんの悲痛の叫びが、とっぷりと暮れた夜空に響き渡った。
星が、1……2……3……。
真っ暗な空に
キラキラと煌めいて。
闇に落とした金色の砂のようだ。
私は久々のビールを喉に流し込みながら、
漆黒の空をアイツの髪に重ねて眺めていた。
まだ……くたばってんのかな。
そんな色気の無い思考を巡らせながら。
イイ感じに酔いが回ってきた頭に、ほとほと嫌気が差すけれど。
だけど、
放っておけば自然と千鶴の顔が
目の裏側に浮かぶ。
何故かしら。
絶対、これって
重症。
ああ、世界が回る……。
「ソーダイ、氷はぁ~?」
「はいはい、今持ってくるッスよ」
朱色の顔をした皆のアイドルこと南条セイヤは、サービスショットを狙ったかのように生足を浴衣から投げ出している。
女の子みたいにツルツルな脚を見て、思わず嫉妬してしまった。
あれから何時間、飲んだんだろう。
合間にゲームやら談笑やらしていたけど、7杯目を飲み干した辺りから記憶がまちまちだ。
私は酒に弱いというのに。
ああ、そういえば酔っぱらった南条セイヤが急に踊り出して、『ミオちゃんおどろ~』とか言って私の手を取って、ミュージカルよろしく激しいダンスに巻き込まれたのだ。
その後、馬鹿高そうな花瓶を割った辺りでどんちゃん騒ぎに終止符が打たれ、今に至る……んだっけ?
う、ぷっ。
喉元でビール独特の酸味がつっかえ、私は親父みたいなしゃっくりをしてしまった。
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