Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました～

恋はさざ波に似て③

頭を撫でる手は

「！？」


目玉が飛び出るか飛び出ないかのところで、驚きを受け止めた。

ちょっと待って、ここどこよ!?

まさか、えっと、あれ？確か……南条セイヤ……の部屋で、司？と一緒に喋っていたはずよ。

ん？司はセイヤか。

え、ちょっと待てってば。

司＝セイヤ、セイヤ＝司の公式は正真正銘、本当なのか？

って……んな下らない情報は、
どうだってイイ！

それよか……



「頭いてーっ！！」



胡桃割り人形に頭をかち割られる胡桃の気持ちが、今ならよく分かる。

ガン、ガン、ガン、ガン！！

真っ二つに割れるほど、頭が痛い！！
目玉の裏側から『ズクンズクン』だなんて音が聞こえてくる。

何コレ！目玉から何か出てきそう！何が出てくるっていうのよ！

エイリアン!?
エイリアンだろコレは！
エイリアンが目玉突き破って出てくる痛みだろ、コレ！！

ていうことは、エイリアン＝宇宙人？＝司＝セイヤでしょ!?

嫌だー！目玉から南条セイヤが出てくるなんて、悪夢だ！
気持ちが悪いにも程があるだろ！
バッカみたーい！！


『う』という音に濁点を付けたようなうめき声が、勝手に口から洩れてくる。
断末魔のようなそれは、白い枕に片っ端から吸収されていく。

バスドラムが鳴り響く頭を抱えながら、
私は誰のモノかも分からない布団の中でひたすらうめいていた。

しかし頭蓋骨の中身が落ち着くよう祈りを捧げたお陰か、私の痛んだ頭に、慈悲に満ちたマリアの救いの手がそっと差し伸べられた！

……ように、思えたが。

きっとこのゴツゴツした重みのある手は、決してマリアのモノでは無い。



「澪、痛みますか……？」


「痛い、触るな！うっ……」


まさか自分の大声で頭痛に拍車をかけるだなんて、思いもしなかった。

どれだけの量を飲めば、
こんな破滅的な頭痛にまで発展するというのよ！
この、二日酔いめ！！

頭蓋骨の中で二日酔いと戦争勃発中の私を慰めるように、千鶴はただ頭を撫で付けてくる。

ああ。マリアの手ではなく、
魔物の手だったなんて。