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恋の焼け跡④
高級車に乗って
しおりを挟むそんなこんなで一般ピープルの私は人生初、高級車の乗車体験をすることになった。
おそるおそる足を踏み入れた先は、映画でしか見たことが無い世界。
どっしりと構えたフカフカのシートが前にも後ろにも横にもあり、サイドに設置された横長のテーブルの上には、たくさんのグラスやフルーツなんかが置いてあった。
ちょっとしたバーの催しである。
「シ、シートベルト、これ?」
あまりのカルチャーショックに私が行った動作といえば、真っ先にシートベルトを探すことだった。
そんな情けない一般人を余所に、セレブリティなお2人さんは陽気に喋り続ける。
「いやあ、驚きましたなぁ。
まさか弥生様が既に澪様と仲良しとは!
まるで姉妹のようでございます」
「じいやったら、褒めすぎですわ!」
いや、それ褒めてんの?
弥生ちゃんの価値観の基準がいまいち掴めないが、今はそれどころじゃない。
あまりの乗り心地の良さに不覚にも舞い上がってしまい、低俗にも『セレブ』という単語が私の脳内を占拠してしまった。
……ちょっと待って。
たった今気付いた。
今まで千鶴のことを馬鹿だのクソ野郎だの罵ってきたけど、もしかして私はとても愚かな所業をしてきたのでは?
無礼にも程があるだろう。
殴る蹴るぶん投げるはもちろん、変態扱いが日常茶飯事になっていたのだから。
忘れていたけど、アイツは藤堂の御曹司なんだった。
それに気付いた途端、汗が吹き出た。
『マズイ』の3文字が混乱状態の頭を揺るがす。
まさか私が日常的に殴ったりしていることを、貝森さんに告げ口してないでしょうね(もはやイジメ加害者の心理状態である)!?
ちょっとしたホテルの一室ほどある広々とした車内だというのに、貝森さんは何故か私の隣にわざわざ腰をかけてきた。
その上こちらを観察するように見つめてくる。
今にも『よくも千鶴様を!』って怒鳴られるんじゃないかと、気が気じゃなかった。
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