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恋の焼け跡④
思い出せ
しおりを挟む「……っ!」
背中がナイフで裂かれたように痛み始めた。熱を孕んで今にも炎上しそうだ。
苦しい……、誰か、ああ、外に貝森さんがいるはず……。
声にならない声が、絞められた喉で塞き止められる。
息が、できない。
意識を手放さないように汗だくの体を強張らせていると、突然、髪を鷲掴みにされた。
——ガタンッ!ガシャン!
体のあちこちが椅子に叩き付けられると、そのまま床にねじ伏せられてしまった。
「……いっ、」
私は木製の床に顔面を擦り付け、うめき声を上げた。
両腕は背中の後ろで拘束され、完全に身動きができなくなった。
背中が、焼けていく。
背後から、男の声が呪詛のように呟かれた。
「教えてあげようか」
「っ……な、にを」
「お前が忘れていることをさ」
服が引き裂かれた。
「——っ!!!!」
涙が床に滲んでいく。
露になった背中は、自分の熱気から解放され強張った。
ジンジンと脈を打っている。
ふいに背筋をそっと指でなぞられた感触に、頭の天辺からつま先まで震え上がった。
「ああ、あった。
この傷を覚えているかい」
——傷?
傷なんて、背中に無い。
そう反論することも叶わず、男は矢継ぎ早に言葉を発していった。
「これはあの男がお前に付けた傷だ」
「あの……男……って」
力を振り絞り声を上げた。
「名前を呼ぶことすら忌々しい、あの、男だよ。
お前が恋焦がれて止まない千羽鶴さ」
……千羽鶴……千鶴?
「10年前だ。思い出せ。
そしてあの男を心の底から憎め」
千鶴……千羽鶴……。
悲しい顔をした、病院の屋上で出会った、男の子。
お兄ちゃん。
背中が炎上したかと思うと、私の意識は遥か遠くへ飛んでいった。
高く、高く、高く。
誰の手にも届かないほど高く。
体を放れ、男から放れ、何もかもを置き去りにして、真っ白な彼方へ舞い上がった。
…………
…………
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