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魔法少女と悲劇へのカウントダウン
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「反応も無ければ、痕跡もないわね……」
天城からブルーコレットの事を聞いて直ぐに行動を起こしたマリンだったが、初日は何も収穫がなかった。
ブルーコレットが何か行動を起こしてくれれば直ぐに発見できるのだが、今の所なんの反応もない。
或いは妖精界に行ってくれれば、履歴が残るので、そこから追う事も出来る。
それはブルーコレットに限った話ではなく、イニーもだ。
新魔大戦を境に世界的に指名手配され、突如として姿を消した魔法少女。
まともにイニーを探そうとしている魔法少女は、魔法局の息が掛った者ばかりだ。
イニーに助けられて来た魔法少女や、ランカーの派閥に属している者たちは探そうとしていない。
まだ居なくなって2日しか経っていないが、魔法局派閥の魔法少女と、ランカー派閥の魔法少女で亀裂が入り始めていた。
まともな考えならば、ランカーに勝てるなどと思わないだろうが、ランカー達はそれぞれ忙しく、構っている余裕がない。
ランカー以外の魔法少女同士となれば、戦いの結果は分からなくなる。
魔女という脅威が現れた中、魔法少女たちは結束しようとせず、それぞれの思惑のままの行動していた。
(早くイニーを見つけて、魔法局を何とかしないと……)
M・D・Wやドッペル。そして、今回のマスティディザイア。
その他にもリンネやロックヴェルトを知っているマリンは、魔女の脅威を正しく理解している内の1人だろう。
ランカーを足止めしている間に、複数のM・D・Wを召喚されるだけで、世界は荒廃とした世界になるだろう。
ランカーたちも頑張っているが、新たに1人行方不明になっている。
おそらく、魔女たち破滅主義派の誰かに殺されたのだろう。
マリンはイニーに会いたいのもあるが、イニーが見せた異質な力が今は必要だと思っている。
SS級の魔物を軽く葬って見せた、覚醒とは違ったイニーの力。
それ位の力が、今は必要なのだろうと考えている。
魔法少女に変身していれば、雪の寒さも平気だが、止むことなく降ってくる雪は、気が滅入るものがある。
『こちらオペレーター。マリン応答せよ』
「こちらマリン。どうかしましたか?」
『マリンの付近で魔物の出現予兆を捉えました。申し訳ないですが、お願いできないでしょうか?』
ブルーコレットを探している状態で、目立つような事をしたくないマリンだが、ここで断る選択肢は最初からない。
魔法少女として魔物からは逃げない。
そう、マリンは決めている。
「時間と場所。魔物の階級と数を教えて下さい」
『ありがとうございます。魔物は推定C級となり、1体のみだと思われます。場所は1キロ程先にある市街地となります。端末にデータを送りますので、確認をお願いします』
「分かったわ」
マリンは通信を切り、直ぐに移動を開始した。
指定された地点の近くにある、もっとも高い建物の屋上に立ち、弓を構える。
複数体魔物が居るなら刀の方が良いが、魔物が1体であり、あまり目立たない方が良い今の状態では、弓の方が都合が良い。
(全く。仕方ないのは分かるけど、何で私の近くに魔物が現れるのよ)
制限時間は3日だが、初日の午前中は代わりの魔法少女の準備が出来ていなかったため、通常通り討伐をこなした。
実質2日半だが、3日目の夜までには見つける必要がある。
なので、3日とは言われたものの、あまり時間がないのだ。
マリンが弓を構えて待っていると、白い雪の中に黒い靄が立ち込め、魔物が現れる。
魔法で生み出した矢をつがえ、しっかりと狙いを定めて矢を放つ。
矢は吸い込まれるように魔物の頭に刺さり、魔物は塵となって消えていく。
(C級なら、こんなものね)
マリンはイニーとの戦闘によって、完全に覚醒してからは魔力量が増えただけではなく、戦いのセンスが良くなっていた。
既に新人どころか、下手な魔法少女より強くなっている。
そんなマリンにとって、C級1体など敵ではない。
だが、こんな時に時間を取られるのは嫌だった。
「こちらマリン。魔物を討伐しました」
『はい。確認出来ました。無理を聞いていただき、ありがとうございます』
「これくらいは構いません。それと、スターネイルは今どちらに?」
マリンにとってスターネイルは、面倒くさい先輩と言ったところだろう。
ブルーコレットと一緒に居る時のスターネイルはあまり関わりたくないが、1人の魔法少女としてはそこまで悪いとは思っていない。
マリンが落ち込んだり、引きこもった際も、何かと声を掛けていたりしていた。
色々と思うこともあるが、気に掛けてもらった分は、気に掛けておこうと思ったのだ。
特に最近は会うたびに顔色が悪くなっているため、一応心配もしている。
『スターネイルでしたら、茨城東部から探索を開始しました。先ほどまで、自宅でお昼ごはんを食べていたそうです』
お昼ごはん。
時間を考えればおかしくないが、マリンは違和感を感じた。
そう、”自宅”と言う言葉に違和感を感じたのだ。
スターネイルが1人で暮らしているのは、北関東支部なら誰でも知っている。
マリンが知る限り、スターネイルはお昼ご飯を魔法局の食堂で食べる事がほとんどだった。
マリンが北関東支部に所属してからは一度として、自宅で食べたなんて聞いたことがなかったのだ。
しかも、こんな時に一々自宅に戻るなど、何かあると自白している様なものだ。
(何かありそうね)
スターネイルがブルーコレットを匿ってるなんてことはないだろうが、探りは入れといた方がいいだろうと、マリンは思った。
「そう。今日は雪も降って視界が悪いから、2人で一緒に探索するって局長に伝えといて下さい」
『分かりました。それでは、引き続き頑張って下さい』
マリンは通信を切って直ぐに、スターネイルに連絡を入れる。
『こちらスターネイル。どうしたのマリンちゃん?』
マリンの眉がピクリと動く。
マリンはスターネイルに任務中はちゃん付けするな、と何度も言ってるのだが、スターネイルはちゃん付けを止めないのだ。
いつもなら小言の1つや2つを言うのだが、今日はグッと我慢する。
「雪のせいで視界も悪く、情報のすり合わせもしたいので、一緒に捜索をしましょう。局長に連絡済みです」
許可自体は出ていないが、問題があるなら直ぐに連絡が来るはずだ。
連絡が来たとしても、捜索の効率化のためと言えば大丈夫だろうと、マリンは思っている。
『分かったけど、集合はどうするの?』
「私が魔法局のテレポーターでそちらに飛ぶので、10分ほど待っていて下さい」
幸いマリンの場所から北関東支部までは、頑張れば5分で行くことが出来る。
簡易テレポーターで帰ってもいいが、もしかしたら魔法局に向かっている途中で、ブルーコレットを見つけられる可能性もある。
通信を切ったマリンは、雪の中を走った。
通常もなら一般人の視線などを気に掛けるが、こんな雪の中で外出している人間は、そうそういない。
居るのは、魔物討伐に駆り出されている魔法少女位だろう。
マリンが魔法局に向かう間も、2人程魔法少女を見かけた。
(やっぱり、魔物の数が増えてるわね)
魔女の宣言があったその日から、魔物の出現数が増えた。
それは、魔法少女全員が感じていることであるだろう。
日本の支部はそれぞれ行動を起こしているが、本部は重い腰を上げずにいる。
それどころか、イニーを探す様に、本部の息が掛っている魔法少女に命令を出し、破滅主義派に関しては最小限でしか動いていない。
あからさまな行動に、顔をしかめる魔法少女も少なくない。
マリンも憤慨して、辞表を出すほどだった。
「お疲れ様マリン。どうかしましたか?」
マリンが北関東支部に入ると、受付の女性が声を掛けて来た。
「スターネイルと合流する為に戻ってきました、テレポーターを使用しますね」
「分かりました。行ってらっしゃい」
マリンはそのままテレポーター室に向かい、スターネイルから送られてきた座標を入力した。
「あっ。マリンちゃんこっちだよー」
「呼ばなくても見えてますよ」
茨城は群馬に比べれば雪は弱いが、それでも多少吹雪いていた。
マリンがテレポートしてきた事に気づいたスターネイルは手を振って、マリンを呼ぶ。
その顔色は雪のせいで分かり難いが、朝よりはマシになっている様に見える。
「さて、朝は聞きそびれましたが、ブルーコレットと最後に会ったのはいつですか?」
「コレットと? 会ったのは一昨日の朝に魔法局で会ったきりだよ。それからは別れたから知らないよ」
「そうですか……何かおかしな言動とかは?」
スターネイルは何て言えばいいかを考える。
最近のブルーコレットは常に不機嫌であり、危ない発言も多かった。
私がこんな境遇なのは間違ってる。
私はもっと戦えるはずだ。
マリンばかりちやほやされてむかつく。
そんな発言ばかりしているのだ。
「うーん。最近はずっと荒れてたから、おかしいと言えばずっとおかしかったね……」
そう言えば会うたびに嫌な顔をされたり、誰かと言い争ってるのをよく見かけたなと、マリンは思った。
学園やイニーの近くに居る事が多いマリンですら、そう感じているのだ。
スターネイルの言葉に、嘘はないだろう。
「誰かに会うとか、どこかに行くとかは言ってました?」
「それらしい事は何も言ってなかったよ」
「そうなると、やはり虱潰しに探すしかないですか……」
マリンは眉をハの字にして、不満をこぼす。
限られた時間でブルーコレットを探すのは不可能に近い。
妖精界に逃げたり、魔法少女に変身した場合は魔法局が察知出来るので、ブルーコレットが逃げる場合は現実で公共機関を使うか、自分の足しかないとマリンやスターネイルは考えている。
なので、まだ北関東のどこかに居るはずだ。
しかし、今のブルーコレットは魔女によってその性質を大きく変えてしまっていた。
探そうとしたところで、見つからないのだ。
「そう言えば、朝に比べると体調が良くなった様に見えますが、何かありましたか? それと、珍しく家で昼食を済ませたみたいですね」
マリンは仕方ないと諦めた後に、気になっていた事を聞いた。
スターネイルの顔色は、朝に比べれば良くなって、ふらつく様な素振りも見せていなかった。
スターネイルはどう答えようかと、人差し指を頬に当てながら考える。
スターネイルが元気になった理由は、風瑠――実際はハルナになるのだが、彼女のおかげだ。
しかし、謎の多い風瑠の事を話して良いのだろうかと悩む。
出会いからして、普通ではなかったのだ。
何より、今風瑠が居なくなった場合、自分は耐えられないだろうと、スターネイルは薄々理解している。
「少し前からペットを飼っていて、その子の世話をするために帰ってたの。もしかして、心配してくれてたの?」
「まあ、一応同じ魔法局の仲間ですからね。それにしても、ペットですか……」
マリンは少し頬を赤くして素っ気なく返し、ペットについて考える。
スターネイルに家族が居るなら、ペットを飼っていたとしてもおかしくないが、1人暮らしでペットを飼うのは少しおかしいと感じた。
魔法少女をやっていれば、いつ命を落とすか分からない。
そんな状態でペットなんて、普通飼うだろうか?
少々きな臭さを感じるが、今はあまり関係ないことだ。
素直に、スターネイルの体調が良くなった事を喜ぶことにした。
なお、ペット呼ばわりされた風瑠はベッドで寝ている。
「ともかく、今日は当てもなく探すしかなさそうですね」
「うん。早く見つかると良いね」
マリンとスターネイルは高い場所から辺りを見渡し、ブルーコレットを探す。
この日の探索は夕方まで行われ、成果無しで北関東支部に帰ることとなった。
「戻りました」
「どうやら見つからなかったようね」
北関東支部に戻った2人は天城に報告をしようしたところ、不在ということで、代わりに白橿へ報告をしに来ていた。
「……あの、その白菜は一体何ですか?」
報告をしようとしたスターネイルだったが、白橿の脇に置かれた、2つの大きな白菜に目を奪われる。
「ああ、これ? 情報収集してる時に、知り合いに沢山貰ったのよ。これはネイルとマリンの分よ」
「ありがとうございます。何か情報はありましたか」
マリンは少し微妙な顔をするが、直ぐに気を取り直す。
白菜が嫌いってわけではないのだが、ここまで立派な白菜が珍しかったのだ。
「残念ながら、それらしい情報は無かったわね。妖精局や、知っていそうな人にも話を聞いてい見たけど、駄目だったわ」
「そうですか……分かりました。明日も引き続き探してみます」
「ええ。辛い役目を押し付ける事になると思うけど、どうか被害が出る前に、コレットを見つけて上げて」
一般人を殺してしまった時のようになれば、もうブルーコレットは後戻りできなくなる。
せめて魔法少女どうしの争いとなれば、言い訳のしようはある。
だが、もうブルーコレットが戻ることはない。
白橿はそう思っている。
もう、手遅れなのだろう。
「もしもの時は私が手を下します。それが、私の魔法少女としての務めです」
「わ、私も一緒に戦うわ! コレットちゃんが間違いを起こすっていうなら、友達である私が最後を務めます!」
「そう……でも、無理はしないでちょうだいね。今日はもう帰って大丈夫よ。あっ、白菜は忘れないでね」
明日は12月31日となり、通常ならば家で休んだり、家族で過ごす人がほとんどだろう。
しかし、魔物が存在する限り、魔法少女に休みはない。
せめて新しい年は…………。
誰もがそう思う中、今年最後の日を迎えることとなる。
魔法少女たちの今年最後の戦いが、始まりの幕を上げる。
天城からブルーコレットの事を聞いて直ぐに行動を起こしたマリンだったが、初日は何も収穫がなかった。
ブルーコレットが何か行動を起こしてくれれば直ぐに発見できるのだが、今の所なんの反応もない。
或いは妖精界に行ってくれれば、履歴が残るので、そこから追う事も出来る。
それはブルーコレットに限った話ではなく、イニーもだ。
新魔大戦を境に世界的に指名手配され、突如として姿を消した魔法少女。
まともにイニーを探そうとしている魔法少女は、魔法局の息が掛った者ばかりだ。
イニーに助けられて来た魔法少女や、ランカーの派閥に属している者たちは探そうとしていない。
まだ居なくなって2日しか経っていないが、魔法局派閥の魔法少女と、ランカー派閥の魔法少女で亀裂が入り始めていた。
まともな考えならば、ランカーに勝てるなどと思わないだろうが、ランカー達はそれぞれ忙しく、構っている余裕がない。
ランカー以外の魔法少女同士となれば、戦いの結果は分からなくなる。
魔女という脅威が現れた中、魔法少女たちは結束しようとせず、それぞれの思惑のままの行動していた。
(早くイニーを見つけて、魔法局を何とかしないと……)
M・D・Wやドッペル。そして、今回のマスティディザイア。
その他にもリンネやロックヴェルトを知っているマリンは、魔女の脅威を正しく理解している内の1人だろう。
ランカーを足止めしている間に、複数のM・D・Wを召喚されるだけで、世界は荒廃とした世界になるだろう。
ランカーたちも頑張っているが、新たに1人行方不明になっている。
おそらく、魔女たち破滅主義派の誰かに殺されたのだろう。
マリンはイニーに会いたいのもあるが、イニーが見せた異質な力が今は必要だと思っている。
SS級の魔物を軽く葬って見せた、覚醒とは違ったイニーの力。
それ位の力が、今は必要なのだろうと考えている。
魔法少女に変身していれば、雪の寒さも平気だが、止むことなく降ってくる雪は、気が滅入るものがある。
『こちらオペレーター。マリン応答せよ』
「こちらマリン。どうかしましたか?」
『マリンの付近で魔物の出現予兆を捉えました。申し訳ないですが、お願いできないでしょうか?』
ブルーコレットを探している状態で、目立つような事をしたくないマリンだが、ここで断る選択肢は最初からない。
魔法少女として魔物からは逃げない。
そう、マリンは決めている。
「時間と場所。魔物の階級と数を教えて下さい」
『ありがとうございます。魔物は推定C級となり、1体のみだと思われます。場所は1キロ程先にある市街地となります。端末にデータを送りますので、確認をお願いします』
「分かったわ」
マリンは通信を切り、直ぐに移動を開始した。
指定された地点の近くにある、もっとも高い建物の屋上に立ち、弓を構える。
複数体魔物が居るなら刀の方が良いが、魔物が1体であり、あまり目立たない方が良い今の状態では、弓の方が都合が良い。
(全く。仕方ないのは分かるけど、何で私の近くに魔物が現れるのよ)
制限時間は3日だが、初日の午前中は代わりの魔法少女の準備が出来ていなかったため、通常通り討伐をこなした。
実質2日半だが、3日目の夜までには見つける必要がある。
なので、3日とは言われたものの、あまり時間がないのだ。
マリンが弓を構えて待っていると、白い雪の中に黒い靄が立ち込め、魔物が現れる。
魔法で生み出した矢をつがえ、しっかりと狙いを定めて矢を放つ。
矢は吸い込まれるように魔物の頭に刺さり、魔物は塵となって消えていく。
(C級なら、こんなものね)
マリンはイニーとの戦闘によって、完全に覚醒してからは魔力量が増えただけではなく、戦いのセンスが良くなっていた。
既に新人どころか、下手な魔法少女より強くなっている。
そんなマリンにとって、C級1体など敵ではない。
だが、こんな時に時間を取られるのは嫌だった。
「こちらマリン。魔物を討伐しました」
『はい。確認出来ました。無理を聞いていただき、ありがとうございます』
「これくらいは構いません。それと、スターネイルは今どちらに?」
マリンにとってスターネイルは、面倒くさい先輩と言ったところだろう。
ブルーコレットと一緒に居る時のスターネイルはあまり関わりたくないが、1人の魔法少女としてはそこまで悪いとは思っていない。
マリンが落ち込んだり、引きこもった際も、何かと声を掛けていたりしていた。
色々と思うこともあるが、気に掛けてもらった分は、気に掛けておこうと思ったのだ。
特に最近は会うたびに顔色が悪くなっているため、一応心配もしている。
『スターネイルでしたら、茨城東部から探索を開始しました。先ほどまで、自宅でお昼ごはんを食べていたそうです』
お昼ごはん。
時間を考えればおかしくないが、マリンは違和感を感じた。
そう、”自宅”と言う言葉に違和感を感じたのだ。
スターネイルが1人で暮らしているのは、北関東支部なら誰でも知っている。
マリンが知る限り、スターネイルはお昼ご飯を魔法局の食堂で食べる事がほとんどだった。
マリンが北関東支部に所属してからは一度として、自宅で食べたなんて聞いたことがなかったのだ。
しかも、こんな時に一々自宅に戻るなど、何かあると自白している様なものだ。
(何かありそうね)
スターネイルがブルーコレットを匿ってるなんてことはないだろうが、探りは入れといた方がいいだろうと、マリンは思った。
「そう。今日は雪も降って視界が悪いから、2人で一緒に探索するって局長に伝えといて下さい」
『分かりました。それでは、引き続き頑張って下さい』
マリンは通信を切って直ぐに、スターネイルに連絡を入れる。
『こちらスターネイル。どうしたのマリンちゃん?』
マリンの眉がピクリと動く。
マリンはスターネイルに任務中はちゃん付けするな、と何度も言ってるのだが、スターネイルはちゃん付けを止めないのだ。
いつもなら小言の1つや2つを言うのだが、今日はグッと我慢する。
「雪のせいで視界も悪く、情報のすり合わせもしたいので、一緒に捜索をしましょう。局長に連絡済みです」
許可自体は出ていないが、問題があるなら直ぐに連絡が来るはずだ。
連絡が来たとしても、捜索の効率化のためと言えば大丈夫だろうと、マリンは思っている。
『分かったけど、集合はどうするの?』
「私が魔法局のテレポーターでそちらに飛ぶので、10分ほど待っていて下さい」
幸いマリンの場所から北関東支部までは、頑張れば5分で行くことが出来る。
簡易テレポーターで帰ってもいいが、もしかしたら魔法局に向かっている途中で、ブルーコレットを見つけられる可能性もある。
通信を切ったマリンは、雪の中を走った。
通常もなら一般人の視線などを気に掛けるが、こんな雪の中で外出している人間は、そうそういない。
居るのは、魔物討伐に駆り出されている魔法少女位だろう。
マリンが魔法局に向かう間も、2人程魔法少女を見かけた。
(やっぱり、魔物の数が増えてるわね)
魔女の宣言があったその日から、魔物の出現数が増えた。
それは、魔法少女全員が感じていることであるだろう。
日本の支部はそれぞれ行動を起こしているが、本部は重い腰を上げずにいる。
それどころか、イニーを探す様に、本部の息が掛っている魔法少女に命令を出し、破滅主義派に関しては最小限でしか動いていない。
あからさまな行動に、顔をしかめる魔法少女も少なくない。
マリンも憤慨して、辞表を出すほどだった。
「お疲れ様マリン。どうかしましたか?」
マリンが北関東支部に入ると、受付の女性が声を掛けて来た。
「スターネイルと合流する為に戻ってきました、テレポーターを使用しますね」
「分かりました。行ってらっしゃい」
マリンはそのままテレポーター室に向かい、スターネイルから送られてきた座標を入力した。
「あっ。マリンちゃんこっちだよー」
「呼ばなくても見えてますよ」
茨城は群馬に比べれば雪は弱いが、それでも多少吹雪いていた。
マリンがテレポートしてきた事に気づいたスターネイルは手を振って、マリンを呼ぶ。
その顔色は雪のせいで分かり難いが、朝よりはマシになっている様に見える。
「さて、朝は聞きそびれましたが、ブルーコレットと最後に会ったのはいつですか?」
「コレットと? 会ったのは一昨日の朝に魔法局で会ったきりだよ。それからは別れたから知らないよ」
「そうですか……何かおかしな言動とかは?」
スターネイルは何て言えばいいかを考える。
最近のブルーコレットは常に不機嫌であり、危ない発言も多かった。
私がこんな境遇なのは間違ってる。
私はもっと戦えるはずだ。
マリンばかりちやほやされてむかつく。
そんな発言ばかりしているのだ。
「うーん。最近はずっと荒れてたから、おかしいと言えばずっとおかしかったね……」
そう言えば会うたびに嫌な顔をされたり、誰かと言い争ってるのをよく見かけたなと、マリンは思った。
学園やイニーの近くに居る事が多いマリンですら、そう感じているのだ。
スターネイルの言葉に、嘘はないだろう。
「誰かに会うとか、どこかに行くとかは言ってました?」
「それらしい事は何も言ってなかったよ」
「そうなると、やはり虱潰しに探すしかないですか……」
マリンは眉をハの字にして、不満をこぼす。
限られた時間でブルーコレットを探すのは不可能に近い。
妖精界に逃げたり、魔法少女に変身した場合は魔法局が察知出来るので、ブルーコレットが逃げる場合は現実で公共機関を使うか、自分の足しかないとマリンやスターネイルは考えている。
なので、まだ北関東のどこかに居るはずだ。
しかし、今のブルーコレットは魔女によってその性質を大きく変えてしまっていた。
探そうとしたところで、見つからないのだ。
「そう言えば、朝に比べると体調が良くなった様に見えますが、何かありましたか? それと、珍しく家で昼食を済ませたみたいですね」
マリンは仕方ないと諦めた後に、気になっていた事を聞いた。
スターネイルの顔色は、朝に比べれば良くなって、ふらつく様な素振りも見せていなかった。
スターネイルはどう答えようかと、人差し指を頬に当てながら考える。
スターネイルが元気になった理由は、風瑠――実際はハルナになるのだが、彼女のおかげだ。
しかし、謎の多い風瑠の事を話して良いのだろうかと悩む。
出会いからして、普通ではなかったのだ。
何より、今風瑠が居なくなった場合、自分は耐えられないだろうと、スターネイルは薄々理解している。
「少し前からペットを飼っていて、その子の世話をするために帰ってたの。もしかして、心配してくれてたの?」
「まあ、一応同じ魔法局の仲間ですからね。それにしても、ペットですか……」
マリンは少し頬を赤くして素っ気なく返し、ペットについて考える。
スターネイルに家族が居るなら、ペットを飼っていたとしてもおかしくないが、1人暮らしでペットを飼うのは少しおかしいと感じた。
魔法少女をやっていれば、いつ命を落とすか分からない。
そんな状態でペットなんて、普通飼うだろうか?
少々きな臭さを感じるが、今はあまり関係ないことだ。
素直に、スターネイルの体調が良くなった事を喜ぶことにした。
なお、ペット呼ばわりされた風瑠はベッドで寝ている。
「ともかく、今日は当てもなく探すしかなさそうですね」
「うん。早く見つかると良いね」
マリンとスターネイルは高い場所から辺りを見渡し、ブルーコレットを探す。
この日の探索は夕方まで行われ、成果無しで北関東支部に帰ることとなった。
「戻りました」
「どうやら見つからなかったようね」
北関東支部に戻った2人は天城に報告をしようしたところ、不在ということで、代わりに白橿へ報告をしに来ていた。
「……あの、その白菜は一体何ですか?」
報告をしようとしたスターネイルだったが、白橿の脇に置かれた、2つの大きな白菜に目を奪われる。
「ああ、これ? 情報収集してる時に、知り合いに沢山貰ったのよ。これはネイルとマリンの分よ」
「ありがとうございます。何か情報はありましたか」
マリンは少し微妙な顔をするが、直ぐに気を取り直す。
白菜が嫌いってわけではないのだが、ここまで立派な白菜が珍しかったのだ。
「残念ながら、それらしい情報は無かったわね。妖精局や、知っていそうな人にも話を聞いてい見たけど、駄目だったわ」
「そうですか……分かりました。明日も引き続き探してみます」
「ええ。辛い役目を押し付ける事になると思うけど、どうか被害が出る前に、コレットを見つけて上げて」
一般人を殺してしまった時のようになれば、もうブルーコレットは後戻りできなくなる。
せめて魔法少女どうしの争いとなれば、言い訳のしようはある。
だが、もうブルーコレットが戻ることはない。
白橿はそう思っている。
もう、手遅れなのだろう。
「もしもの時は私が手を下します。それが、私の魔法少女としての務めです」
「わ、私も一緒に戦うわ! コレットちゃんが間違いを起こすっていうなら、友達である私が最後を務めます!」
「そう……でも、無理はしないでちょうだいね。今日はもう帰って大丈夫よ。あっ、白菜は忘れないでね」
明日は12月31日となり、通常ならば家で休んだり、家族で過ごす人がほとんどだろう。
しかし、魔物が存在する限り、魔法少女に休みはない。
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支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
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