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第一章
24.息子の名前は天使だから、神様が迎えにきたとかじゃねえだろうな
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方法はオークション。
行われる場所はイギリス。
サライは忙しくキーボードを叩く。
「あと、もうひとつ、おかしなことがある。この館はどこのセキュリティ会社にも登録していない」
「何、簡単な理由さ。私はセキュリティ会社と契約していない」
「正気か?コレクションがたんまりあるんだろ?泥棒にどうぞ盗みに来てくださいって?」
「盗みにはくるよ。だが、驚いて逃げていく。たまに失禁するのもいて迷惑だ」
ロレンツォの口ぶりは自信満々。
どうやら、自宅には特殊な仕掛けがされているようだ。
「話題を変えようか?君、さっき、絵は嫌いだと吐き捨てるように言ったね。それって、オレノ村の自宅から持ち去られた絵が関係しているのかな?君の母親が置いていった絵だろ?」
サライの口元が、勝手にヒクリと動く。
あの絵の事情を知っているものは、サライともう一人だけだ。
「それ、じいちゃんから聞いたのか?」
「ピエトロとは深い縁があるからね」
認めたくないがロレンツォの言うとおりだった。
母親は絵を残して消えた。以来、音信不通。
死んでいないのだとしたら、この手で殺してやりたい。
サライの記憶に焼き付いている母親は、鏡を見ながら赤い口紅を塗っている。リップラインからはみ出さないようにとても丁寧に。
顎のラインまである染めたブルネットの髪をふわっと外巻きにし、黒いタートルネックにスカーフを首に結んでまるで女優のよう。
鏡越しに目が合うと、
「買い忘れたものがあるから町に行ってくるわ。いい子にしているのよ」
それが最後の姿だ。
「土曜の朝以降、来客は?」
「質問に答えてくれないのかい?でも、私は大人だから答えるとしよう。玄関からは無かったんじゃないかな」
だったら、空から謎の人物がやってきたとでも?
「息子の名前は天使だから、神様が迎えにきたとかじゃねえだろうな」
何が面白いのか、フフッとロレンツォが笑う。
「食べ終えたかい?じゃあ、そろそろ行こうか」
「どこへ?」
外出の約束などしていないはずだ。
ロレンツォが着ていたジャケットの胸ポケットに手を入れた。
底から出てきたのは、赤ワインの色をした小さな手帳だ。
そして中身を見せてきた。
「何だよ、これ」
行われる場所はイギリス。
サライは忙しくキーボードを叩く。
「あと、もうひとつ、おかしなことがある。この館はどこのセキュリティ会社にも登録していない」
「何、簡単な理由さ。私はセキュリティ会社と契約していない」
「正気か?コレクションがたんまりあるんだろ?泥棒にどうぞ盗みに来てくださいって?」
「盗みにはくるよ。だが、驚いて逃げていく。たまに失禁するのもいて迷惑だ」
ロレンツォの口ぶりは自信満々。
どうやら、自宅には特殊な仕掛けがされているようだ。
「話題を変えようか?君、さっき、絵は嫌いだと吐き捨てるように言ったね。それって、オレノ村の自宅から持ち去られた絵が関係しているのかな?君の母親が置いていった絵だろ?」
サライの口元が、勝手にヒクリと動く。
あの絵の事情を知っているものは、サライともう一人だけだ。
「それ、じいちゃんから聞いたのか?」
「ピエトロとは深い縁があるからね」
認めたくないがロレンツォの言うとおりだった。
母親は絵を残して消えた。以来、音信不通。
死んでいないのだとしたら、この手で殺してやりたい。
サライの記憶に焼き付いている母親は、鏡を見ながら赤い口紅を塗っている。リップラインからはみ出さないようにとても丁寧に。
顎のラインまである染めたブルネットの髪をふわっと外巻きにし、黒いタートルネックにスカーフを首に結んでまるで女優のよう。
鏡越しに目が合うと、
「買い忘れたものがあるから町に行ってくるわ。いい子にしているのよ」
それが最後の姿だ。
「土曜の朝以降、来客は?」
「質問に答えてくれないのかい?でも、私は大人だから答えるとしよう。玄関からは無かったんじゃないかな」
だったら、空から謎の人物がやってきたとでも?
「息子の名前は天使だから、神様が迎えにきたとかじゃねえだろうな」
何が面白いのか、フフッとロレンツォが笑う。
「食べ終えたかい?じゃあ、そろそろ行こうか」
「どこへ?」
外出の約束などしていないはずだ。
ロレンツォが着ていたジャケットの胸ポケットに手を入れた。
底から出てきたのは、赤ワインの色をした小さな手帳だ。
そして中身を見せてきた。
「何だよ、これ」
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