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第五章
92.お前、知っていたのか?ロレンツォ公が正体をアンジェロに秘密にしていたことを
しおりを挟む尋問はレオに託して、死神はノータッチを決め込みたいらしい。逃げるように姿を消していた。
「それと、ヨハネ。サライをお前の部屋に連れていけ。邪魔だ」
「へいへい」
いつの間に帰ってきていたのか、私室代わりに使っている部屋からヨハネの声がした。
彼が扉を開けてやってきて、サライを私室に促す。
「あのおっさん、アンジェロのことをどうするつもりだ」
とヨハネに小声で話しかけると、
「適度に締め上げるんだろ。マエストロとしては、腹の虫が収まらないだろうし」
「自分がオークショナーを努めた席を台無しにされたからか?もう二度と無いって言われるぐらいの注目のオークションだったんだろ?」
「あいつに、愛社精神は無い。いつも、仕事を辞める辞める言っているからな。ご機嫌斜めになっている理由はじっくり観察してりゃあ解る。特定屋はすぐ検索しちゃうから、想像力に欠ける。これを機に鍛えるんだな」
「想像力ぅ??偉そうに」
サライは年若いヨハネに諭されて機嫌を悪くするが、少年の方は構うこと無く話続ける。
「マエストロはアンジェロをロレンツォ公に引き渡す、と思う。人間の姿をした方の」
「お前、知っていたのか?ロレンツォ公が正体をアンジェロに秘密にしていたことを」
「尖塔で出会ったとき、普通だったら息子は、父さんって呼びかけるだろ。そこから推測した」
これは一本取られたとサライは素直に思った。
(想像力を鍛える。まあ、頭の隅に入れておこう)
「秘密をバラしたら、これ以上に酷いことをするつもりらしい」
サライは、包帯が巻かれた首を指差す。
「マエストロが知ったら怒り狂うだろうなあ」
「僕を所有物みたいに」
扉の隙間から覗いていると、レオがロレンツォから受け取った絵を床に立てかけていた。
しばらく眺めている。
鑑賞とは違う雰囲気だ。
自分が勤める会社のオークション商品が戻ってきてほっとした様子でもない。
突き放すような視線で観察している。
サライの隣にいるヨハネは、レオの姿を見て、クククと楽しそうに喉を鳴らし始める。
一体、何が面白いのやら。
じっくり絵を眺めたレオは、ようやくアンジェロの真正面に座った。
ソファーに座るアンジェロは俯いている。
尋問が始まった。
「オレはレオ・セル・ピエーロ。リチャード・クリスティンのオークショナーだ。お前、タワーブリッジに立たされる前、どこにいた?」
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