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第五章

99.違う、違う。あいつは残党の親玉。贋作組織はもっと巨大だ。

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「隠したいのは分かるけど、情報の共有って大事だぞ?」


 だが、アンジェロは首を振るだけで答えようとしない。

 ヨハネが投げ捨てるように、彼の手首を離した。


「これ、贋作組織の管理番号だ。この桁数だと第七かな?」

「第七?でも、俺がいた場所以外にもそんなのあったなんて聞いていない」

「知らされていないだけ。まあ、相手はあのロレンツォ公だし。でも、ボクは違うぜ?あの青い衣の男の使い方も教えてやる」

「いらない。絵の中に戻して。俺から遠ざけてよ。見たくない」

「頑なだなあ」


 サライはヨハネに聞いた。


「贋作組織ってのは、鳥の巣頭が仕切っていたのか?」

「違う、違う。あいつは残党の親玉。贋作組織はもっと巨大だ。神の声を聞くという名目でそっくりの絵を描かせる。絵描きの魂データを引き継いだ子供を使ってな」


 部屋には、沈黙が訪れた。

 居心地が悪い。


(絵に関して、アンジェロはかなりのトラウマ持ちと見た。扱いが、面倒くさそうだ)


 長年、半引きこもりをやってきて、積極的にコミュニケーションを取るのは顔も本名も知らないネットの仲間達。オレノ村の悪友達はサライを利用することしか考えていないから、これまでいい人間関係を築いてきたとは言い難い。だから、はっきりいってどうアンジェロと接していいか分からない。

 アンジェロが伺うようにヨハネと、そしてサライの顔を見比べた。


「君らこそ何者?兄弟?」


 ブハッとヨハネが吹き出す。


「絵描きのくせに、物を捉える力が弱いようだな。ボクの方が断然―――」


 いつもの、ナルシスト節が始まって「ハイハイ。ストップ」とサライは阻む。


「ヨハネはミラノのサンタ・マリア・ディ・グラ―チェ教会の絵の中の住人。最後の晩餐って知っているだろ?信じられないだろうけれど、その壁画の中に住んでいる」

「こんなときにからかわないで欲しい」


 サライは、居心地悪そうにアンジェロの後ろに立っている青い衣の男を指さした。


「お前だって出したじゃないか」

「出した覚えはない。勝手に」

「マテリアを出せるってことは、お前も絵描きの生まれ変わりなんだろ?難しく言えば、絵描きの魂データを引き継いだ人間、なんだとさ」


 すると、アンジェロが猛然とサライに訴えかけてきた。


「俺が、絵描きの生まれ変わり?困るよ、そんなの!!」

「自覚ないのか?どの絵描きの生まれ変わりなのか?こりゃ、飛び抜けて特殊だなあ」


 ヨハネが言葉とは反対に、晴れやかに笑ってみせる。

 サライは、
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