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第七章
143.ここでナイト爆誕
しおりを挟む「ユディト!こっちでまた会ったのか?この女、いまどこに?」
「ちゃんと説明するから、まあ、とにかく見ていろって」
アンジェロがユディトに向かって何か話している。
が、声が小さすぎて聞こえない。
撮影者が集音ボタンをいじったのか、ようやく声が聞こえてきた。
『サライのおじいさんの件は、父さんに罪を着せられたんですよのね?修道士の方は、貴方を描いた絵描きに殺せと命令されたからやっているですよね?貴方はそれが耐えきれなくて俺に助けを求めたんですよね?』
携帯画面を眺めていたサライは眉を曇らせた。
「どうしてここでロレンツォ公が出てくるんだ?」
「正体がバレたってことだろ」
「一体、何を持って断定を?」
「九億ユーロの贋作が描けるお坊ちゃまは、お前のムンディの瞼の傷を見ている。なあ、サライ。よく考えてみろ。ユディトの武器は何だ?」
「剣」
「どんな?」
「ええっと、歯が平らなタイプの」
「そうだ。ユディトの剛腕で剣を振るったなら、まっすぐに斬れるはず。でも、ムンディの目の傷はゆるくカーブしていた。そんな傷を付けられる武器は例えば何だ?」
サライの脳裏に三日月のように円曲した長い取っ手付き刃物がよぎる。ついでに、その武器を持つ人外の姿も。
「まさか」
「そう、そのまさかだ。アンジェロはムンディの瞼についた楕円の傷から、犯人が誰なのか想像したんじゃねえのって僕は言いたいわけ」
画面の中のアンジェロはまた喋りだす。
女は、肯定とも否定ともとれない瞬きを一回しただけだった。
顔からは、小さな破片が溢れる。
ユディトが持っていた剣を脇に挟んだ。画面がさらに上ぶれし、もう片方の手は頭部が詰め込まれたバスケットを持っているのが見えた。
そして、空いた手をアンジェロに向かって伸ばしてくる。
彼は、切なさと申し訳無さが混じり合った表情でユディトの手を恐る恐る掴んだ。
「ここでナイト爆誕」
とヨハネが小馬鹿にした瞬間、動画は終わっていた。
「この後は?お前、逃げたんじゃないだろうな?」
「もちろん、戦いを挑んださ」
ヨハネはDEEP LOVE QATARのTシャツをめくり上げた。
湿布が数枚、肩甲骨が浮き出る背中に張られている。
「ユディトは異常なまでにドメニコ会修道士の頭部集めに執着している。切断された頭部は、今まで一つも見つかっていない。どこかに保管場所があって、そこにはピエトロの首もあるんじゃないかとボクは思ったんだ」
「探しに行ってくれたのか?」
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