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第七章
150.修道士が死ねば死ぬほど嬉しいわけだ。自分のお庭が多少汚れても、目を瞑る
しおりを挟む「気づかない訳ないだろ。現ホラ吹き王は、元豪華王だぞ。絵描きが修復士になったって、修復技術だけで絶対に見抜く。なあ。マエストロ?」
しかし、レオは可愛いマテリアに話しかけられも、眉間にクレジットカードを挟めるんじゃないかというぐらいの深い皺を寄せている。
これまで見たどの顔よりも極悪だ。
ヨハネが、レナトゥスからの回答をあっさり諦め一人で喋り続ける。
「それに、よくよく考えたらロレンツォ公にはお得だよな。ユディトを泳がし続けるのは」
「突拍子もないこと言うなよ。お得ぅぅぅ??ロレンツォ公は今もフィレンツェの支配者みたいなもんなんだろ?そこで、ユディトによる殺人事件が多数起こっているんだぞ?いい気分なもんか」
「絵のことだけじゃなく、歴史も知らねえんだからなあ。サライは。参っちまうよ。忘れたのか?ドメニコ会派がフィレンツェに何をしたかを」
「花の都を殺伐としたものに」
「そうだ。よく覚えていたな。褒めてやる。おまけにサヴォナローラは死にゆく豪華王ロレンツォが、『贅沢は間違えていた。これからは清貧の教えに従う』と告解したと嘘の情報を民衆に流布。これは、ブチギレ案件待ったなし。だから、ロレンツォ公は心の底ではドメニコ会派を恨んでいる。修道士が死ねば死ぬほど嬉しいわけだ。自分のお庭が多少汚れても、目を瞑る」
「まさか、ロレンツォ公がボッティチェリに命じた?」
「豪華王ロレンツォの生まれ変わりがそんなみみっちいことをするものか。たぶん、逆だ。ボッティチェリがメディチ家批判をしたことへの許しが欲しくて、空気を読んでやった。ボクはそう思う」
「五百年も前の裏切りをまだ気にして?」
「ああ。絵描きも出資者も、その関係者も全員、過去って呪いに囚われている。なあ?マエストロ?今度はちゃんと答えろよ。ショックなのは分かるけどさあ」
「嫌味はいい。お前らはもう何もするな」
レオは、二人から離れていこうとする。
「死に体のロレンツォ公を締め上げて吐かせるって?無理無理。マエストロと死神が本気でやり合ったら、イタリアどころかヨーロッパが吹っ飛ぶから止めてくれよ」
「笑えない」
とサライが呟くと、「いや、マジだって」とヨハネが真顔になる。
「そんなことよりさ。ボクらにも情報を流してくれ。サライがここまで調べたから、ボッティチェリの正体を掴めたんだぞ?RCのポンコツ調査部じゃできなかっただろ?それもこれも、このヨハネ様がサライに考えるきっかけを与えてやったからだ」
すると、レオは苦々しい顔。
「他に何を知りたいって言うんだ?」
ヨハネは自分の首にすっと人差し指を走らす。
「切断面だよ。ピエトロの。ミラノ警察から入手してんだろ?首は手元に無くとも胴体は残されているんだから」
「円曲した刃物で、はね飛ばれた形跡があった」
サライはパソコンからバッと顔を上げる。
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