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第六章 エドワード

147:俺の右手に違法な増設をしてくれた、闇ラボの店主です

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「ああ」
そのキーワードだけで、スチュワートはピンと来たようだ。
「可能ですよ。粒子が荒くならないよう鮮明な状態にしてお持ちできますが?」
「出来上がり次第、頼む」
エドワードは次の授与者に向かう、続いの授与者も若かった。
こちらは、きちんと髪を撫でつけ、嬉しそうにエドワードたちを待っている。
「この方は、セキュリティーシステムの開発で功績のあったセドリック様です」
バロンから名前を聞き、エドワードは話しかける。
「若いな。幾つだ」
「十九才です」
「そうか、これからも、励んで……」
とエドワードが言いかけると、「よう。久しぶり」と何故かセドリックがバロンに話しかけはじめた。
「えっと、誰かとお間違えでは?俺に、勲章を頂くような知り合いは」
「全然、覚えてねえのかよ。俺だって」
セドリックはせっかく撫でつけてあった髪をくしゃくしゃにし、右の親指の付け根をトントンと叩く。
「あっ」
バロンが口を押えた。
「ちょっと、待って。君、あの時、十六才だったってこと?」
「そうだよ」
「あの時ですら、二十代だと思っていた」
とバロンは額に手を上げる。
「どうした?」
すると、「お耳を」と言ってエドワードに耳打ちしてくる。
「俺の右手に違法な増設をしてくれた、闇ラボの店主です」
「ケビンの奴、どういう人選なんだ」とエドワードは呆れた。
セドリックは胸ポケットから小さなタブレットを取り出して、バロンのデータ孔に近づけてくる。
「これ、今の店の住所。それに通信番号。困ったことがあれば連絡を」
「え、ええ?特に、今は不具合は……」
エドワードがジロッと眺めるので、バロンがしどろもどろになっている。
しかし、セドリックは引かない。
親し気に、バロンの右手を取って、擦り始める。
「こっちの具合、見せてほしい。俺が店を開いて初めての作品だし、どうなっているのか気になる」
ここまでベタベタと親し気にバロンが触られ、エドワードはさすがにムッとした。
「バロン、次がつかえている」
という声もきつくなる。
授与式が終わると、パーティーだ。
ケビンがシャンパングラスを片手に、渡り鳥のように、色んな勲章授与者の間を行き来しているのをエドワードは見ながら、耳を触ってバロンに合図を送る。
廊下に出て通信をし、ベリルを呼んで来いというサインだ。
バロンが廊下に出ていったので、エドワードは、若い者同士で固まっているスチュワートとセドリックに近づいていく。
ケビンが、彼らと話していたからだ。
「今夜は、勲章授与式に来てくれて嬉しく思うよ。どうだい、勲章を貰った感想は」
「どうって、別に」
とスチュワートは冷ややかだ。一方、セドリックは、
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