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第四章

95.それが奪われたら、神々の世界は崩壊?

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「森が激しく揺れています。……まさか」
 ディンが激しく青ざめた。
「何?原種の森にモンスターでもいるの?」
「怪鳥アンズーです」
「え?それって、ニヌルダさんが倒したんじゃ?」
「確かに倒しました。でも、息の根は止めていません。なぜなら、アンズーは不死身だから。だから、原種の森に封印したんです。土人形が最も近づかない場所だから。これは神々の中でも一部も者しか知らないんです」
「まさか、森のニャーゴ達が掘り返した?」
「いいえ。ニャーゴ達は、監視役。それはありえません」
「じゃあ、誰が」
「見てきます」
 ディンが凄まじい速さで森の中に入っていく。
「危ないって」
 森羅も追いかけた。
「平気です。僕は、スエン様に拾われるまで原種の森で暮らしていたので。ざっと百年ぐらい。だから、怪鳥アンズーがどこに封印されているかも知っています」
 どこをどう駆けたのかも解らないほどの時間が過ぎた。
 木立ちや茂みをかき分けて進んでいくと、急に木がなぎ倒された場所に出て視界が広くなった。
 揺れはさらに激しくなり、地面がひび割れていた。
 周りには、血だらけの土人形が数人倒れていた。
 一人は痛みに呻いている。
 しかし、ディンが、
「おい。何をした?おい!」
と話しかけている最中に絶命した。
 いよいよ揺れが酷くなる。
 世界が避けるのではないかというひび割れが地面に走り、そこから、大きな嘴が飛び出してきた。
「森羅様。逃げましょう。やっぱり怪鳥アンズーです。ここにいる土人形が故意に目覚めさせたようです。辺りにニャーゴ除けの薬草が散らばっていたので、その際に掘り返して目覚めさせたのでしょう。変な匂いもしました。キ国には最近、土人形に降ろされていない薬草が闇で流通しています。もしかしたら、あそれで気つけ薬を作って怪鳥アンズーを目覚めさせたのかも。図書館にはその手の資料があったりしますから」
「そうか。材料が無ければ問題ないって思っていたんだな」
 そうこうしているうちに地面から現れたのは、ライオンの頭。鷲のような胴体。上半身は鎖帷子のような質感。下半身は猫みたいに毛むくじゃらで脚は鋭い鉤爪。
 怪鳥アンズーの周りでは大嵐にみたいに風が巻き起こり、身体は稲光を帯びている。
 その鳥が空に向かって羽ばたくと、森のニャーゴ達も一斉に地面を駆け出す。
「アンズーとニャーゴはどこに向かおうとしてるんだ?どこかに巣が?」
「行き先は、キ国だと思います。天命の書版が神殿にありますので」
「神々の運命や役割が書かれたあれ?それが奪われたら、神々の世界は崩壊?」
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