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第十七話 外出のお誘い
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その日の夕方。
二人で夕食をとっていると、クルトはバルハルトに誘われた。
「明日の朝、街に出かけに行かないか?」
ここに来てから初めてそんなことを言われたクルトは、少し首を傾げた。
「何か買いに行くんですか?」
基本的に彼は忙しいため、よほどの用事がなければわざわざ街に買い物に行かない。
それがクルトを誘ってくるとは、一体どういう風の吹き回しなのだろう。
「別に特に用事はない。ただお前に新しい服が届いただろう。せっかくだからあれを着ていったらどうだ?」
「確かにそうですね!でも私と一緒でいいんですか?せっかくの休みなら婚約者の方と出かけるとか、そちらのほうがいいんじゃないんですか?」
綺麗な器にのったサラダをもぐもぐと食べながら、クルトは彼の様子を伺った。
「婚約者には逃げられた」
「えっ?!」
空耳かと思うほどの、衝撃的な発言が彼の口から飛び出てきて、クルトは耳を疑った。
「婚約者には逃げられた……?」
「そうだ」
ホットミルクに蜂蜜を垂らしたものを啜りながら、バルハルトは頷く。
「何でですか?」
「顔が怖い、ドラゴンが嫌い、軍人は野蛮、顔が好みじゃない、家にあまり帰ってこない。あと最近は好きな男ができたと言ってたな」
指折り数えるバルハルトを尻目に、そんなことを言う令嬢がこの世に存在するのかと、クルトは口をあんぐり開けた。
「あれ噂じゃなくて事実だったんですね」
クルトの言葉をバルハルトはむっつりとした顔で聞いている。
どうやら噂は本人にも届いていたようだ。
「どうせ世間の者は皆私を偏屈で力に頼るしかない、金だけは有り余っている哀れな男だと思っているのだろう」
彼の明らかに拗ねたような口調にクルトは、苦笑いを浮かべることしかできなかった。
(意外と自己分析できているみたいだね……)
世間一般でのバルハルトの印象はまさに、彼が先程言った通りだった。
傲慢、偏屈、無愛想、ケチといえばバルハルト、という言葉が囁かれるくらいだ。
(いや、まあケチの部分は違うかな。私にたくさん物を買ってくれたし、給料も弾んでくれた。傲慢、偏屈、無愛想は………うーん、彼と関わりのない人にはそう見えるんだろうな)
クルト自身も彼と暮らして数日経つが、いまだに彼の考えていることは分からず、性格もいまいち掴めていなかった。
(それにしても婚約者から逃げられるなんて、流石に可哀想すぎるなぁ。私自身も明日は特に予定もないから、一緒に出かけよう)
「じゃあ明日は一緒に街に行きましょう」
多少の同情を込めながら彼の提案に賛成すると、彼は黙って頷いた。
「何か買いたいものとかあるか?連れていってやろう」
「そうですね……、通りに並ぶ屋台の食べ物を食べてみたいです!神殿にいた頃は食事も厳しく管理されていたので、そういうものは口にしたことがないんです」
サラダを食べ終え、タラのムニエルに手をつけながら、クルトは街で何をするか考えてみた。
やはり美味しいものは外せない。特にたっぷりの油で揚げたドーナツや、鶏の串焼きは絶対に食べてみたい。
「神殿では脂分が多いものは健康に良くない、とほとんど食べさせてもらえなかったんです」
野菜ばかりでどう生きろというのか。
あまりに味気ない食生活である、と神殿にいた頃常日頃考えていたクルトは、既にたくさんの食べ物を想像してうっとりとした顔をしていた。
二人で夕食をとっていると、クルトはバルハルトに誘われた。
「明日の朝、街に出かけに行かないか?」
ここに来てから初めてそんなことを言われたクルトは、少し首を傾げた。
「何か買いに行くんですか?」
基本的に彼は忙しいため、よほどの用事がなければわざわざ街に買い物に行かない。
それがクルトを誘ってくるとは、一体どういう風の吹き回しなのだろう。
「別に特に用事はない。ただお前に新しい服が届いただろう。せっかくだからあれを着ていったらどうだ?」
「確かにそうですね!でも私と一緒でいいんですか?せっかくの休みなら婚約者の方と出かけるとか、そちらのほうがいいんじゃないんですか?」
綺麗な器にのったサラダをもぐもぐと食べながら、クルトは彼の様子を伺った。
「婚約者には逃げられた」
「えっ?!」
空耳かと思うほどの、衝撃的な発言が彼の口から飛び出てきて、クルトは耳を疑った。
「婚約者には逃げられた……?」
「そうだ」
ホットミルクに蜂蜜を垂らしたものを啜りながら、バルハルトは頷く。
「何でですか?」
「顔が怖い、ドラゴンが嫌い、軍人は野蛮、顔が好みじゃない、家にあまり帰ってこない。あと最近は好きな男ができたと言ってたな」
指折り数えるバルハルトを尻目に、そんなことを言う令嬢がこの世に存在するのかと、クルトは口をあんぐり開けた。
「あれ噂じゃなくて事実だったんですね」
クルトの言葉をバルハルトはむっつりとした顔で聞いている。
どうやら噂は本人にも届いていたようだ。
「どうせ世間の者は皆私を偏屈で力に頼るしかない、金だけは有り余っている哀れな男だと思っているのだろう」
彼の明らかに拗ねたような口調にクルトは、苦笑いを浮かべることしかできなかった。
(意外と自己分析できているみたいだね……)
世間一般でのバルハルトの印象はまさに、彼が先程言った通りだった。
傲慢、偏屈、無愛想、ケチといえばバルハルト、という言葉が囁かれるくらいだ。
(いや、まあケチの部分は違うかな。私にたくさん物を買ってくれたし、給料も弾んでくれた。傲慢、偏屈、無愛想は………うーん、彼と関わりのない人にはそう見えるんだろうな)
クルト自身も彼と暮らして数日経つが、いまだに彼の考えていることは分からず、性格もいまいち掴めていなかった。
(それにしても婚約者から逃げられるなんて、流石に可哀想すぎるなぁ。私自身も明日は特に予定もないから、一緒に出かけよう)
「じゃあ明日は一緒に街に行きましょう」
多少の同情を込めながら彼の提案に賛成すると、彼は黙って頷いた。
「何か買いたいものとかあるか?連れていってやろう」
「そうですね……、通りに並ぶ屋台の食べ物を食べてみたいです!神殿にいた頃は食事も厳しく管理されていたので、そういうものは口にしたことがないんです」
サラダを食べ終え、タラのムニエルに手をつけながら、クルトは街で何をするか考えてみた。
やはり美味しいものは外せない。特にたっぷりの油で揚げたドーナツや、鶏の串焼きは絶対に食べてみたい。
「神殿では脂分が多いものは健康に良くない、とほとんど食べさせてもらえなかったんです」
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