青春なんて要らないのに

紐下 育

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April

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日曜日。先生がレンジであたためれば食べられるようなものを、いろいろ作ることにした。野菜炒めやハンバーグ、炊き込みご飯…先生はいつも忙しそうだから、手軽に栄養価が高いものを食べられるように考えて作った。誰かのために料理するのってこんなに楽しいんだ。
幸せに浸っていた15時、俺は突然思いだした。
「先生、明後日授業があるので教科書取りにいったん家に戻りたいんですけど…」
「あ、そうか!じゃあ一緒に取りに行こうか。今日も泊まっていくでしょ?パジャマとかも持ってきたらいいよ。」
色々気になるところはある。でも、寝るときは一人より先生と一緒の方が好きだ。今日も泊まらせてもらおう。そして、俺、先生に車出してもらわないと帰れない。

「あ、えと、お願いします…」

日曜日に学部一年生と教授が一緒にいるのはさすがにおかしい。そんな二人で学生寮の近くまで行ったら、誰かに見られたとき言い訳もできない。

「…これでいいの?」
「ばっちりです。ありがとうございます。」
ということで、先生には変装してもらった。サングラスにマスク、普段着なさそうな柄シャツ。大学でスーツを着ている先生しか知らなかったら、別人だと思われるだろう。

住所を伝えて先生がカーナビをセットする。
俺はここで初めて先生の家の場所を知ることになった。
「あっ…」
カーナビに写っていたのは、誰もが知るような高級住宅街の名前。まぁ正直、ちょっと想像はしていたから驚きは少ないけど。

「先生、いつも大学まで車で通ってるんですか?」
「うん。電車だと結構時間がかかっちゃうんだよね。ゆうはいつも大学まで電車で通ってるの?」
「はい。電車で10分くらいなので。」
「東京の電車、混んでて大変じゃない?」
「結構大変です。押されて転んじゃったり。」
「それは危ないね…僕と一緒に住んだら、車で送り迎えしてあげられるのになぁ…」
「…?」

先生、過保護が過ぎませんか、と言おうとして止めた。先生にとってはこれが普通なんだ。

俺の家に着くと、先生も車から降りようとしていた。
「先生、俺一人で荷物とってくるのでここで待っててもらって大丈夫です。」
「ええ…僕もゆうのお家に入ってみたいのに。」
「先生の家みたいにきれいじゃないので恥ずかしいです。」
「そんなの気にしなくていいよ。僕も初めて一人暮らししたときひどかったんだから。」

車内でいろいろ言い合った結果、俺が先に家に入っていろいろ片づけて、ある程度きれいになったら先生を呼ぶということになった。
ぐちゃぐちゃの布団をきれいに直して、掃除機をかける。お菓子の袋とかはしっかりゴミ箱に入れて…よし。
「先生、上がってきてもらって大丈夫です。お待たせしました。」
「わかった!今から行くね!」

なんでそんなにうれしそうなんだ。

「おじゃまします!」
先生がにこにこしながら入ってくる。
「何もないですが、どうぞ…」
こういう時に出せるようなお菓子とかあればよかったのに。あいにく食べかけのポテチしかない。

そういえば、教科書とかパジャマとか取りに帰ってきたんだった。
タンスをぱたっと開けた。そしたらその反動で、上にあったアルバムがぱらっと落ちた。

「あれ…?」
そのアルバムをちらっとみた先生が、はっとした顔をした。
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