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June
先生の独り言(看病編)
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朝起きたら、ゆうを抱きしめて寝ていた。寝顔、天使すぎる。かわいい。愛おしい通り越して尊い。
ひとしきり幸福をかみしめた後、ふと気づいた。昨日は寝ぼけてゆうを困らせたのでは…ゆうが起きたら謝らなければ。
そう思っていたところで、ゆうの身体が異常に熱いことに気が付いた。僕が抱きしめていたから、にしても、熱い。
前髪をあげて、額を触ってみる。熱っ!これは絶対に高熱だ…。
いつだったか、幼いころは病弱だったという話をゆうから聞いたことがある。
そんな考えを巡らせているうちに、うなり声が聞こえだした。
「う、うぁぁあ、」
うなされているようだ。起こした方がいいのかな。対処が全く分からなくてパニックに陥る。
「ゆう?ゆう!」
「せんせ、うぁ、ぁあぁん」
見たことがないほど切迫した顔で僕を呼ぶ声。
しばらく声をかけ続けていたら、ゆうは布団に潜り込んで寝息を立て始めた。
安心すると同時に、心配になる。
もし僕が大学に行った後にうなされたら、ゆうが怖い思いをしていたら、そんなの、あまりにもかわいそうだ。想像するだけで身体を引き裂かれたように苦しくなる。すぐに大学に休講の連絡を入れる。
何が必要なのかスマホで調べないと。
脱水にならないようにお水と、あと冷えピタも。
そっと部屋を出てキッチンに向かう。冷たい水がいいのかな、それとも身体がびっくりしないように常温の水の方がいい?…両方持っていくか。
その時、とん、とん、ととん、と不安定な足音が聞こえた。
はっとして廊下に出てみると、顔を真っ赤にしたゆうがこちらに向かってきている。
いつもより猫背で、小さく見える。パジャマを着ているというより、パジャマに着られている感じ。
慌てて駆け寄ると、ゆうは僕の名前を呼んで倒れこんだ。危ない。
とりあえずコップは置いて、ゆうを抱きかかえてベッドまで運ぶ。
ベッドに置いた瞬間にちょっと顔をゆがめたけれど、しばらく見守っていたらすぅっと穏やかな顔になった。心配だけど、可愛い。愛おしい。
寝息が聞こえてくるようになったところで、急いで水やら冷えピタやら、体温計やら、必要なものをかき集める。
よかった、まだちゃんと寝てくれていた。
体温測ったり水飲ませたりはゆうが起きてくれないとできないけれど、冷えピタは貼れる。
よし。
「失礼します…」
冷たくてごめんね、という思いもありながらも、そっと額に貼らせてもらった。
「んっ」
ゆうから声が漏れる。えっ…r、んんん。
それからまもなくして、ゆうが目を覚ました。
水を飲ませ、体温を測ると39度だった。大人になってからのこの高熱はきつい。
できることなら代わってあげたい、という気持ちを、生まれて初めて知った。
ゆうが作ったご飯は、さすがに高熱向けではなかった。今残っている作り置きは、全部がっつりとした肉料理。多分ゆうが僕に会わせて作ってくれているからなのだろう。
僕のご飯でもいい、とゆうが言ってくれたので、僕は初めてキッチンに立った。
不器用だったせいで親にもキッチンに立つことを禁止されていたが、最愛のゆうのピンチだ。
僕が頑張らなくてはならない。
満を持して作ったおかゆはそれなりに上出来だったと思う。ゆうも食べてくれて、心の底から安心した。
ひとしきり幸福をかみしめた後、ふと気づいた。昨日は寝ぼけてゆうを困らせたのでは…ゆうが起きたら謝らなければ。
そう思っていたところで、ゆうの身体が異常に熱いことに気が付いた。僕が抱きしめていたから、にしても、熱い。
前髪をあげて、額を触ってみる。熱っ!これは絶対に高熱だ…。
いつだったか、幼いころは病弱だったという話をゆうから聞いたことがある。
そんな考えを巡らせているうちに、うなり声が聞こえだした。
「う、うぁぁあ、」
うなされているようだ。起こした方がいいのかな。対処が全く分からなくてパニックに陥る。
「ゆう?ゆう!」
「せんせ、うぁ、ぁあぁん」
見たことがないほど切迫した顔で僕を呼ぶ声。
しばらく声をかけ続けていたら、ゆうは布団に潜り込んで寝息を立て始めた。
安心すると同時に、心配になる。
もし僕が大学に行った後にうなされたら、ゆうが怖い思いをしていたら、そんなの、あまりにもかわいそうだ。想像するだけで身体を引き裂かれたように苦しくなる。すぐに大学に休講の連絡を入れる。
何が必要なのかスマホで調べないと。
脱水にならないようにお水と、あと冷えピタも。
そっと部屋を出てキッチンに向かう。冷たい水がいいのかな、それとも身体がびっくりしないように常温の水の方がいい?…両方持っていくか。
その時、とん、とん、ととん、と不安定な足音が聞こえた。
はっとして廊下に出てみると、顔を真っ赤にしたゆうがこちらに向かってきている。
いつもより猫背で、小さく見える。パジャマを着ているというより、パジャマに着られている感じ。
慌てて駆け寄ると、ゆうは僕の名前を呼んで倒れこんだ。危ない。
とりあえずコップは置いて、ゆうを抱きかかえてベッドまで運ぶ。
ベッドに置いた瞬間にちょっと顔をゆがめたけれど、しばらく見守っていたらすぅっと穏やかな顔になった。心配だけど、可愛い。愛おしい。
寝息が聞こえてくるようになったところで、急いで水やら冷えピタやら、体温計やら、必要なものをかき集める。
よかった、まだちゃんと寝てくれていた。
体温測ったり水飲ませたりはゆうが起きてくれないとできないけれど、冷えピタは貼れる。
よし。
「失礼します…」
冷たくてごめんね、という思いもありながらも、そっと額に貼らせてもらった。
「んっ」
ゆうから声が漏れる。えっ…r、んんん。
それからまもなくして、ゆうが目を覚ました。
水を飲ませ、体温を測ると39度だった。大人になってからのこの高熱はきつい。
できることなら代わってあげたい、という気持ちを、生まれて初めて知った。
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僕のご飯でもいい、とゆうが言ってくれたので、僕は初めてキッチンに立った。
不器用だったせいで親にもキッチンに立つことを禁止されていたが、最愛のゆうのピンチだ。
僕が頑張らなくてはならない。
満を持して作ったおかゆはそれなりに上出来だったと思う。ゆうも食べてくれて、心の底から安心した。
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