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04:戦士セーナ
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夜。レリックは宿泊客が酒盛りしている食堂を通り抜け、宿屋の階段を上る。
二階の一室にノックをし、室内からの返事を待ってから扉を開けて入った。
「おう、帰って来たか。どうだった?」
室内にはベッドが二つ。一つに迎え入れたセーナが、もう一つには無表情でレリックを見つめるウィザリーが腰掛けている。
「一度王都へ戻る必要が出来ました。ご機嫌伺いです」
「ほう……、それはそれは」
レリックの立場について、セーナとウィザリーに詳しく説明している訳ではない。が、今まで勇者シオンのパーティーとして共に旅をして来た仲間である。二人はある程度の事情については察している。
「この街には、シオンが勇者ならばドラゴンくらい一人で倒せるようにならないとと意気込んで来ただけだ。
ドラゴンとの実戦経験を積んだ今、もうここに留まる必要はねぇな」
セーナは王都へ戻る事に対して言外に賛成した。
(十歳でドラゴンに対峙し尻込みすらしない精神力だ、もっともっと大物になるぞ)
セーナはレリックとは違い、どこかの組織から引き抜かれた訳ではない。冒険者組合からの推薦枠である。
そういう意味では冒険者組合所属と言えなくもない。
だが、セーナは冒険者を代表して勇者パーティーに所属しているつもりは全くない。
(次は何を経験させてやるかな。将来のあたいの旦那様だ、もっと経験を積ませてもっともっと強くたくましくなってもらわねぇとな……)
セーナはシオンの妻の座を狙っている訳ではない。セーナは貴族の生まれではなく、平民である。しかし、パーティーメンバーとしてシオンを支えたという実績でもって第二、第三夫人の座を狙っているのである。
パーティーメンバーに選ばれた当初はそんな気などなかったセーナだが、シオンと王都を旅立ってすぐに母性本能をくすぐられ、シオンの虜となってしまった。
もちろんシオンのそばにいると自身の能力が急激に上昇する事には気付いている。勇者の血族にスキルを持って生まれる者がいる事も知っている。
しかしセーナにとってそれは些細な事でしかない。シオンはそのスキルがなかったとしても、強き者としてこの王国の為に戦っただろうと思わせる意思を持っているからだ。
「ウィザリーも、それでよろしいですか?」
「……構わない」
レリックは二人の反応を確認した後、静かに部屋を出て行った。宿屋での部屋の取り方はシオンとレリックで一部屋、そしてセーナとウィザリーでもう一部屋となっている。
勇者パーティーとはいえ、今現在魔王との戦いを繰り広げている訳ではない。あくまで魔王が人族へ牙を剥いた際に討伐出来るよう、修行をする為の旅の最中なのだ。
従って、王都に呼ばれれば戻るし、あちらに強い魔物がいると聞けばそちらへ足を伸ばす。
「セーナ、次はシオンに何をけしかけるつもり?」
「何にしようかねぇ。まぁ何にしたって、あいつは目をキラキラさせて乗って来るだろうさ」
ドラゴンを一人で倒せて一人前の勇者だ、とシオンに吹き込んだのはセーナだ。ちなみにセーナは一人でドラゴンを倒した経験があるので、全く不可能な話ではない。
話した相手が十歳の男の子という事を除けば……。
「無茶ばかりさせないで。あの子は大切な子」
「ん? あぁ、大事に育てるさ」
ウィザリーの心配に対して肩をすくめてみせるセーナ。
(何たってあたいの旦那様だからな)
ウィザリーに背を向けてベッドへ横になる。セーナは窓の外の月を見上げながら一人、ニヤニヤと表情を緩ませる。
(あぁ、早く大きくならねぇかなぁ。いや、あのきゃわいい姿形のまま力だけ強くなるってぇのもいいな。あぁ、でもデカくなってもらわねぇと物足りねぇだろうし……)
あぁでもない、こうでもないと思いにふけるセーナだった。
二階の一室にノックをし、室内からの返事を待ってから扉を開けて入った。
「おう、帰って来たか。どうだった?」
室内にはベッドが二つ。一つに迎え入れたセーナが、もう一つには無表情でレリックを見つめるウィザリーが腰掛けている。
「一度王都へ戻る必要が出来ました。ご機嫌伺いです」
「ほう……、それはそれは」
レリックの立場について、セーナとウィザリーに詳しく説明している訳ではない。が、今まで勇者シオンのパーティーとして共に旅をして来た仲間である。二人はある程度の事情については察している。
「この街には、シオンが勇者ならばドラゴンくらい一人で倒せるようにならないとと意気込んで来ただけだ。
ドラゴンとの実戦経験を積んだ今、もうここに留まる必要はねぇな」
セーナは王都へ戻る事に対して言外に賛成した。
(十歳でドラゴンに対峙し尻込みすらしない精神力だ、もっともっと大物になるぞ)
セーナはレリックとは違い、どこかの組織から引き抜かれた訳ではない。冒険者組合からの推薦枠である。
そういう意味では冒険者組合所属と言えなくもない。
だが、セーナは冒険者を代表して勇者パーティーに所属しているつもりは全くない。
(次は何を経験させてやるかな。将来のあたいの旦那様だ、もっと経験を積ませてもっともっと強くたくましくなってもらわねぇとな……)
セーナはシオンの妻の座を狙っている訳ではない。セーナは貴族の生まれではなく、平民である。しかし、パーティーメンバーとしてシオンを支えたという実績でもって第二、第三夫人の座を狙っているのである。
パーティーメンバーに選ばれた当初はそんな気などなかったセーナだが、シオンと王都を旅立ってすぐに母性本能をくすぐられ、シオンの虜となってしまった。
もちろんシオンのそばにいると自身の能力が急激に上昇する事には気付いている。勇者の血族にスキルを持って生まれる者がいる事も知っている。
しかしセーナにとってそれは些細な事でしかない。シオンはそのスキルがなかったとしても、強き者としてこの王国の為に戦っただろうと思わせる意思を持っているからだ。
「ウィザリーも、それでよろしいですか?」
「……構わない」
レリックは二人の反応を確認した後、静かに部屋を出て行った。宿屋での部屋の取り方はシオンとレリックで一部屋、そしてセーナとウィザリーでもう一部屋となっている。
勇者パーティーとはいえ、今現在魔王との戦いを繰り広げている訳ではない。あくまで魔王が人族へ牙を剥いた際に討伐出来るよう、修行をする為の旅の最中なのだ。
従って、王都に呼ばれれば戻るし、あちらに強い魔物がいると聞けばそちらへ足を伸ばす。
「セーナ、次はシオンに何をけしかけるつもり?」
「何にしようかねぇ。まぁ何にしたって、あいつは目をキラキラさせて乗って来るだろうさ」
ドラゴンを一人で倒せて一人前の勇者だ、とシオンに吹き込んだのはセーナだ。ちなみにセーナは一人でドラゴンを倒した経験があるので、全く不可能な話ではない。
話した相手が十歳の男の子という事を除けば……。
「無茶ばかりさせないで。あの子は大切な子」
「ん? あぁ、大事に育てるさ」
ウィザリーの心配に対して肩をすくめてみせるセーナ。
(何たってあたいの旦那様だからな)
ウィザリーに背を向けてベッドへ横になる。セーナは窓の外の月を見上げながら一人、ニヤニヤと表情を緩ませる。
(あぁ、早く大きくならねぇかなぁ。いや、あのきゃわいい姿形のまま力だけ強くなるってぇのもいいな。あぁ、でもデカくなってもらわねぇと物足りねぇだろうし……)
あぁでもない、こうでもないと思いにふけるセーナだった。
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