隠し称号『追放されし者』が欲しい勇者はパーティーみんなに引き留められる(なおそんな称号はない)

なつのさんち

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14:勇者パーティー意識統一会議(ただし勇者を除く)

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 シオンとレムルが音のない会話を続けている頃、勇者パーティーとして借りた幌付き馬車でレリックとセーナとウィザリーが緊急会議を行っていた。
 御者はレリックが務めている。

「なるほど、それであたい達にあんな事を言い出したのか」

「なかなか面白い展開」

 シオンが突然女遊びも経験だぜ! とはっちゃけた経緯をレリックから聞かされた二人。

「それで? 本当にその隠し称号とやらは嘘だと言い切れるのか?」

 シオンがパーティーメンバーに対する態度を変えて、自分から嫌われてみんなから追い出されるような展開にしようと企んでいるのは分かった。
 しかしリヴェルが言うように本当に”追放されし者”という称号があった場合はどうするのか。

「お二人もお気付きでしょう? シオンと共に旅に出てから、自分の能力が急激に上がっている事に」

「「…………」」

 心当たりがある為に、セーナとウィザリーは黙り込んでしまう。もしかすると自分だけかもしれないと思っていたからだ。
 シオンの持つスキルの影響で、パーティーメンバーの三人は本来の能力以上の力が発揮出来ている。これは事実であるが、互いにその事実を確認し合っていなかったのだ。
 もしもスキルの影響を受けているのが自分だけであれば、他の二人は本来の力だという事。
 つまり、逆説的に自分の本来の力は他の二人の十分の一しかない可能性があるという事だ。
 スキルの影響がいつ切れるか分からない。シオンが気を失った際も効果は続いていると思うが、断言は出来ない。
 そして、シオンと分かれて行動する際にも効果はあるのか。

 勇者の血族にしか発現が確認されていないスキルという未知の力。なおかつ特に珍しい他社に影響を及ぼすタイプのスキル。
 その力が解明されていない以上、スキルに頼らない強さを持った者こそが勇者の仲間に相応しい。三人はそれぞれ同じ事を考えていたのだ。

「その様子だと、私と同じような事を考えていたようですね。ですが、今回で私達の見解は一致した。
 勇者シオンのスキルは、パーティーメンバーの能力を著しく向上させる支援スキルです」

 二人から異論は出なかった。ちなみにレリック自身は勇者シオンのパーティーメンバーである以前に侯爵直属の部下という立ち位置にいる為、逐一自分が知り得たシオンのスキル情報を報告している。
 侯爵はシオンに先天的なスキルがないと判断していたが、レリックの報告によって始めてスキルの存在を確認した形となった。

「ここで重要なのは、この事実を公にしてはならないという事です」

 手綱を握り前を向いたまま、レリックが相談ではなく通達として二人へ語った。

「そうだな、取り入ろうとする奴が出て来ても鬱陶しい」

「試行操作、魅了、洗脳。手段はいくらでもある。危険」

 レリックの口からはっきりと伝えられた事はないが、レリックがシオンの父親と繋がっている事を二人は把握している。これはレリックの考えではなく侯爵の意思。決定事項である。

「お二人が仲間で良かったですよ」

 レリックの口調は変わらないが、それが軽口である事にセーナは気付いている。

「止せよ、白々しい。あたい達はシオンありきのパーティーだ。シオン抜きで仲良しこよしするつもりはねぇよ」

「それは残念ですね」

 まだ共にした時間はそれほど長くはないが、このやり取りはそれなりに信頼関係を築けている証拠である。

「私はシオンとだけ仲良しこよししたい。むしろ何故今別々の馬車に乗っているのか疑問。いち早くシオンと合流すしなければシオン欠乏症に陥ってしまう可能性が大」

 ウィザリーのこの発言が軽口であるかどうか、レリックとセーナにはまだ判断が付かないのであった。

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