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20:侯爵夫人マーテル
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侍女に案内されて、勇者パーティーメンバーに用意された客室から離れて行くシオン。
侍女の向かう先が自室でない事に気付く。
「あの、どこに向かっているの?」
「マーテル様がお待ちですので」
(お母様か……)
シオンは子供ながらに、自分の母親は子離れが出来てないと感じている。
しかし、傷付けたくないから構わないでくれとは言えない。生まれ持っての優しさが邪魔をしているのだ。
(でも、パーティーのみんなに嫌われなきゃいけないんだし、お母様で練習してみるのも……)
子離れ出来ない母親ならば、嫌われるような事をしたとて、時間が経てば許してくれるのではないだろうか。言うなればプチ反抗期か。
そう思い至った時、マーテルの部屋に着いた。侍女がノックをし、扉が開かれる。
寝間着姿のマーテルがソファーに座っていた。扉を開けた侍女はマーテルとシオンへ一礼し、部屋を退出した。
「あらシオン、どうしてお着替えしていないのかしら?」
「パーティーのみんなと今後の話をしたくて」
本当はパーティーメンバーに嫌われるような事をしようと部屋の前まで行ってみたものの、セーナとウィザリーに捕まって抱き締められていただけだが。
(そう言えば、侍女を寄越したのはお母様じゃないか)
母親からの遣いがパーティーメンバーと過ごす時間を邪魔したのではないか。いつもであればそのような考え方をしないシオンであるが、今はプチ反抗期。
少し棘のある言い方をしてみようと、シオンが口を開く。
「パーティーのみんなと話をしたかったのですが、母上に呼ばれたのでこうして参上したのです」
シオンのプチ反抗期。口調を平坦に、声は小さめで、少し他人行儀に話す。
それを受けたマーテルの反応はというと。
(母上……? お母様でも、ママでもなく母上!?)
「ど、どうしたの? 何か嫌な事でもあったの?」
動揺を隠せないマーテル。子離れ出来ていない母親にはダメージが大きかったようだ。
「いえ、何もございません。それで、私に何か御用でしょうか?」
いつもであればニコニコ笑顔を浮かべながら、勧めるまでもなくソファーに座って来るであろうシオン。
そのシオンが扉の前から動かず、何か用かとマーテルに問う。
「どうしたの!? 辛い事でもあったの!? さぁ、こちらに来てお掛けなさい!」
ソファーから立ち上がってシオンを抱き締め、半ば無理矢理ソファーへと座らせるマーテル。その取り乱しようはシオンから見ても異常。
(ふふふっ、焦ってる焦ってる。このまま続けてみよう)
マーテルの変化に手ごたえを感じるシオン。しかし、マーテルがシオンの異変に気付き、心配しているのだという事には思い至らない。
このままの態度を続けたとして、それでシオンがマーテルに嫌われるという事はまずないだろう。
「旅ね? 勇者としての旅が辛いのね!? 大丈夫、お母様がお父様に言って、もうこの屋敷から離れなくて済むようにしてあげますからね!!」
「いえ、強くなる為に修行をするのが私の務め。そのような事は不要です。
必ずや今よりも強くなり、魔王を討伐してみせます」
(あぁ……、どうしましょう。シオンが変わってしまった! 旅なんてさせるからだわ!!)
マーテルは公爵家次女として生まれた。魔法の才能があるとして、フォルツァ侯爵家に雇われた家庭教師からテーヴァスと一緒に魔法や剣の指南を受けて育った。
今でこそシオンが旅に出る事を反対しているが、マーテルは親の反対を押し切って、何度か勇者テーヴァスと共に旅に出ている。
その際は公爵家配下の騎士や兵士を伴っての大移動になり、大変だったとテーヴァスは語っている。
マーテル自身は非常に有能な魔法使いで、魔物の大量発生の際は王家から招集が掛かった事もある程の腕前である。
そんな凄腕魔法使いであるマーテルは、シオンを抱き締めたまま慌てふためいている。
(どうすれば、どうすればいいの? もしかして魔法か呪いか、何か悪いものが掛けられているのではないでしょうね!?)
「解呪! 解放! 奴隷解放! 解毒!」
「母上、最後の魔法だけ種類が違いますが」
「私の魔法が通用しない!?」
シオンが何者かから操られている前提で考えているマーテル。自分の魔法で以前のシオンに戻らない事に驚いている。
シオンの顔を自身の胸に押し付けて、頭に頬擦りする。
(あぁ、何と可哀想なシオン……。大丈夫、絶対に私が助け出してあげるわ!)
シオンを抱き締めたままソファーから立ち上がり、ベッドへと連れて行く。二人でベッドに上がり、シオンはマーテルに抱き締められたまま横になった。
「朝まで魔法を掛け続けるわ! シオン、絶対に助けてあげるわ!!」
「母上、お休みなさい」
この時点でもまだ抵抗しないシオンは、プチであっても反抗期とは言えないだろう
侍女の向かう先が自室でない事に気付く。
「あの、どこに向かっているの?」
「マーテル様がお待ちですので」
(お母様か……)
シオンは子供ながらに、自分の母親は子離れが出来てないと感じている。
しかし、傷付けたくないから構わないでくれとは言えない。生まれ持っての優しさが邪魔をしているのだ。
(でも、パーティーのみんなに嫌われなきゃいけないんだし、お母様で練習してみるのも……)
子離れ出来ない母親ならば、嫌われるような事をしたとて、時間が経てば許してくれるのではないだろうか。言うなればプチ反抗期か。
そう思い至った時、マーテルの部屋に着いた。侍女がノックをし、扉が開かれる。
寝間着姿のマーテルがソファーに座っていた。扉を開けた侍女はマーテルとシオンへ一礼し、部屋を退出した。
「あらシオン、どうしてお着替えしていないのかしら?」
「パーティーのみんなと今後の話をしたくて」
本当はパーティーメンバーに嫌われるような事をしようと部屋の前まで行ってみたものの、セーナとウィザリーに捕まって抱き締められていただけだが。
(そう言えば、侍女を寄越したのはお母様じゃないか)
母親からの遣いがパーティーメンバーと過ごす時間を邪魔したのではないか。いつもであればそのような考え方をしないシオンであるが、今はプチ反抗期。
少し棘のある言い方をしてみようと、シオンが口を開く。
「パーティーのみんなと話をしたかったのですが、母上に呼ばれたのでこうして参上したのです」
シオンのプチ反抗期。口調を平坦に、声は小さめで、少し他人行儀に話す。
それを受けたマーテルの反応はというと。
(母上……? お母様でも、ママでもなく母上!?)
「ど、どうしたの? 何か嫌な事でもあったの?」
動揺を隠せないマーテル。子離れ出来ていない母親にはダメージが大きかったようだ。
「いえ、何もございません。それで、私に何か御用でしょうか?」
いつもであればニコニコ笑顔を浮かべながら、勧めるまでもなくソファーに座って来るであろうシオン。
そのシオンが扉の前から動かず、何か用かとマーテルに問う。
「どうしたの!? 辛い事でもあったの!? さぁ、こちらに来てお掛けなさい!」
ソファーから立ち上がってシオンを抱き締め、半ば無理矢理ソファーへと座らせるマーテル。その取り乱しようはシオンから見ても異常。
(ふふふっ、焦ってる焦ってる。このまま続けてみよう)
マーテルの変化に手ごたえを感じるシオン。しかし、マーテルがシオンの異変に気付き、心配しているのだという事には思い至らない。
このままの態度を続けたとして、それでシオンがマーテルに嫌われるという事はまずないだろう。
「旅ね? 勇者としての旅が辛いのね!? 大丈夫、お母様がお父様に言って、もうこの屋敷から離れなくて済むようにしてあげますからね!!」
「いえ、強くなる為に修行をするのが私の務め。そのような事は不要です。
必ずや今よりも強くなり、魔王を討伐してみせます」
(あぁ……、どうしましょう。シオンが変わってしまった! 旅なんてさせるからだわ!!)
マーテルは公爵家次女として生まれた。魔法の才能があるとして、フォルツァ侯爵家に雇われた家庭教師からテーヴァスと一緒に魔法や剣の指南を受けて育った。
今でこそシオンが旅に出る事を反対しているが、マーテルは親の反対を押し切って、何度か勇者テーヴァスと共に旅に出ている。
その際は公爵家配下の騎士や兵士を伴っての大移動になり、大変だったとテーヴァスは語っている。
マーテル自身は非常に有能な魔法使いで、魔物の大量発生の際は王家から招集が掛かった事もある程の腕前である。
そんな凄腕魔法使いであるマーテルは、シオンを抱き締めたまま慌てふためいている。
(どうすれば、どうすればいいの? もしかして魔法か呪いか、何か悪いものが掛けられているのではないでしょうね!?)
「解呪! 解放! 奴隷解放! 解毒!」
「母上、最後の魔法だけ種類が違いますが」
「私の魔法が通用しない!?」
シオンが何者かから操られている前提で考えているマーテル。自分の魔法で以前のシオンに戻らない事に驚いている。
シオンの顔を自身の胸に押し付けて、頭に頬擦りする。
(あぁ、何と可哀想なシオン……。大丈夫、絶対に私が助け出してあげるわ!)
シオンを抱き締めたままソファーから立ち上がり、ベッドへと連れて行く。二人でベッドに上がり、シオンはマーテルに抱き締められたまま横になった。
「朝まで魔法を掛け続けるわ! シオン、絶対に助けてあげるわ!!」
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この時点でもまだ抵抗しないシオンは、プチであっても反抗期とは言えないだろう
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