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19:女遊びの夜
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レリックは報告を済ませ、すぐにテーヴァスの執務室を辞するつもりだったが酒を勧められてしまった。断るに断れず、一杯だけのつもりがどんどん飲まされて、夜更けになってしまった。
たらふく飲まされたレリックだが、酔い潰れる事はない。解毒の魔法を使えるからだ。
侍女に案内されて用意された客室へ向かっていると、シオンが扉の前でウロウロしているのが見えた。
「お坊ちゃま、いかがなさいました?」
侍女が声を掛けるとその場で飛び上がり、シオンが逃げようと背中を向ける。
「シオン、どうしたのですか?」
さすがに様子がおかしいと、レリックも声を掛ける。その声に反応して振り返り、シオンが手を挙げて何か言おうとした瞬間。
バンッ!
ウロウロしていた客室の扉が開いて中からセーナとウィザリーが手を伸ばし、シオンの腕を掴んでそのまま室内へ引きずり込んでしまった。
「はぁ……。申し訳ありませんが、ここは私に任せて頂いてもよろしいでしょうか?」
侍女にそう断って、念の為三人が入って行った客室の扉をノックするレリック。
「皆さん、私です。入ってもよろしいですか?」
部屋の中からはバタバタと音がするだけで、誰も返事をしない。
この客室はセーナとウィザリーに用意された部屋で、レリックに用意されたのはこの隣の部屋だ。
女性用にと用意された客室の為、未だ少し離れた場所で待機している侍女に任せるべきかと考えたが、レリックは同じパーティーのメンバーとして、自分が開けるべきと考えた。
(御曹司の乱心している姿など見たくないでしょうからね)
もう一度ノックをした後、小さく侍女へ向けて頭を下げてから扉を開けて身体を滑り込ませる。
室内にはベッドが二つ。ソファーとテーブルが一組。ソファーにはセーナが腰掛けて、その上で向かい合った形でシオンが抱き締められており、さらのその背中を包み込むようにウィザリーが抱き着いていた。
「何をしているのですか……?」
「見て分からねーのか?」
「女遊びの仕方を教えてあげている」
「レリック、これって楽しいの?」
シオンがされるまま大人しくしているのは、姉と妹、そして母親の普段からの行いのせいだろう。抱き着かれるのには慣れており、抱き着かれる理由は親愛の情だと思っているからだ。
「楽しい、とは?」
「だって、これって遊びなのにじっとしてるだけだよ?」
問題なのはシオンが女遊びとはどういう事を指すのか知らないまま口にしていた事だろう。シオンはセーナとウィザリーに言われるがまま、女遊びをさせらてしまっている。
「からかわれているだけですよ。セーナもウィザリーも、そのへんにしておいて下さい」
この程度で引き下がる二人ではない。
「せっかくシオンがあたい達と遊びに来てくれたんだ。どうしたら楽しいのかもっと教えてやらねーと」
「夜はこれから。いっぱい遊ぶべき」
シオンの首筋に鼻を付けてスーハーしたり、サラサラの髪の毛に手を通したり、頭をよしよしと撫で回したり、好き放題続ける二人。
「シオン、それは遊んでいるのではなく遊ばれているのです」
だよねー、とシオンが笑う。プライドの高い貴族子女であれば騙されたとカンカンになって怒っても不思議ではない。
レリックはそんな優しく純粋なシオンの性格を好ましく思うが、しかし自分が憧れる英雄の息子がどこの馬の骨とも分からないような女に好き放題されているのを黙って見てはいられない。
「ここは侯爵家のお屋敷、外には侍女が控えています。何かあればすぐに閣下のお耳に入る事でしょう。
このような仲間は勇者に相応しくないと、パーティーから追放されるかもしれませんよ」
その言葉を聞いて三人がパッと離れる。
シオンから離されるのを恐れる二人。
自分が追放してほしい側なのに仲間が追放されてしまえば隠し称号“追放されし者”が手に入らなくなる事に気付いた一人。
それぞれの表情を確認し、レリックがちょいちょいとシオンを手招きする。フラフラと歩み寄って来たシオンの肩を抱き、レリックは扉を開ける。
「レリック!? もしかしてお前、シオンを独り占めにしようと……?」
「まさかそんな趣味が……」
「違いますよ!」
シオンは何の話か分からずにポカンとした表情。レリックは詳しい説明をする事なく、外でまだ待機していた侍女にシオンを任せ、用意された自分用の客室へ入ったのだった。
たらふく飲まされたレリックだが、酔い潰れる事はない。解毒の魔法を使えるからだ。
侍女に案内されて用意された客室へ向かっていると、シオンが扉の前でウロウロしているのが見えた。
「お坊ちゃま、いかがなさいました?」
侍女が声を掛けるとその場で飛び上がり、シオンが逃げようと背中を向ける。
「シオン、どうしたのですか?」
さすがに様子がおかしいと、レリックも声を掛ける。その声に反応して振り返り、シオンが手を挙げて何か言おうとした瞬間。
バンッ!
ウロウロしていた客室の扉が開いて中からセーナとウィザリーが手を伸ばし、シオンの腕を掴んでそのまま室内へ引きずり込んでしまった。
「はぁ……。申し訳ありませんが、ここは私に任せて頂いてもよろしいでしょうか?」
侍女にそう断って、念の為三人が入って行った客室の扉をノックするレリック。
「皆さん、私です。入ってもよろしいですか?」
部屋の中からはバタバタと音がするだけで、誰も返事をしない。
この客室はセーナとウィザリーに用意された部屋で、レリックに用意されたのはこの隣の部屋だ。
女性用にと用意された客室の為、未だ少し離れた場所で待機している侍女に任せるべきかと考えたが、レリックは同じパーティーのメンバーとして、自分が開けるべきと考えた。
(御曹司の乱心している姿など見たくないでしょうからね)
もう一度ノックをした後、小さく侍女へ向けて頭を下げてから扉を開けて身体を滑り込ませる。
室内にはベッドが二つ。ソファーとテーブルが一組。ソファーにはセーナが腰掛けて、その上で向かい合った形でシオンが抱き締められており、さらのその背中を包み込むようにウィザリーが抱き着いていた。
「何をしているのですか……?」
「見て分からねーのか?」
「女遊びの仕方を教えてあげている」
「レリック、これって楽しいの?」
シオンがされるまま大人しくしているのは、姉と妹、そして母親の普段からの行いのせいだろう。抱き着かれるのには慣れており、抱き着かれる理由は親愛の情だと思っているからだ。
「楽しい、とは?」
「だって、これって遊びなのにじっとしてるだけだよ?」
問題なのはシオンが女遊びとはどういう事を指すのか知らないまま口にしていた事だろう。シオンはセーナとウィザリーに言われるがまま、女遊びをさせらてしまっている。
「からかわれているだけですよ。セーナもウィザリーも、そのへんにしておいて下さい」
この程度で引き下がる二人ではない。
「せっかくシオンがあたい達と遊びに来てくれたんだ。どうしたら楽しいのかもっと教えてやらねーと」
「夜はこれから。いっぱい遊ぶべき」
シオンの首筋に鼻を付けてスーハーしたり、サラサラの髪の毛に手を通したり、頭をよしよしと撫で回したり、好き放題続ける二人。
「シオン、それは遊んでいるのではなく遊ばれているのです」
だよねー、とシオンが笑う。プライドの高い貴族子女であれば騙されたとカンカンになって怒っても不思議ではない。
レリックはそんな優しく純粋なシオンの性格を好ましく思うが、しかし自分が憧れる英雄の息子がどこの馬の骨とも分からないような女に好き放題されているのを黙って見てはいられない。
「ここは侯爵家のお屋敷、外には侍女が控えています。何かあればすぐに閣下のお耳に入る事でしょう。
このような仲間は勇者に相応しくないと、パーティーから追放されるかもしれませんよ」
その言葉を聞いて三人がパッと離れる。
シオンから離されるのを恐れる二人。
自分が追放してほしい側なのに仲間が追放されてしまえば隠し称号“追放されし者”が手に入らなくなる事に気付いた一人。
それぞれの表情を確認し、レリックがちょいちょいとシオンを手招きする。フラフラと歩み寄って来たシオンの肩を抱き、レリックは扉を開ける。
「レリック!? もしかしてお前、シオンを独り占めにしようと……?」
「まさかそんな趣味が……」
「違いますよ!」
シオンは何の話か分からずにポカンとした表情。レリックは詳しい説明をする事なく、外でまだ待機していた侍女にシオンを任せ、用意された自分用の客室へ入ったのだった。
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