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24:戦士VS勇者と聖女
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朝食を終えて、スーは兄であるシオンに遊んでもらおうと抱き着いた。しかし、シオンはどうしてもしなければならない事があるから、と構ってくれなかった。
しばらく腰に纏わりついていたスーだが、シオンの様子がいつもと違う事に気付いた姉、サラから止められて、剥がされてしまった。
「シオンは大事なお仕事があるのよ。スーもお手伝い出来るようにお勉強しなさいな」
スーはシオンが勇者である事、そしていずれは父の跡を継いで侯爵となると知っている。兄の力になれるならと、家庭教師の話をよく聞いているし、時々稽古に付き合ってくれる父を負かすほどの実力があると思っている。
テーヴァスは娘に甘い為、いつも大袈裟にやられたフリをしているだけだが、スーはそれが本当の自分の実力だと信じている。
先代勇者をやっつける力があるのだから、自分も勇者パーティーに入ってもいいのではないか。そう思い、事あるごとに父親に掛け合うのだが、良い返事をもらえないでいる。
(お父様では話になりません。お母様もダメだって仰るだけ。アルジャンはお兄様に負けてしまったそうだし)
誰に言えば勇者パーティーに入れるのか。六歳児は考える。
(そうだ、レリック様ならどうでしょう。お兄様を支えておられるようだし、レリック様からお兄様に言って頂きましょう)
スーは近くにいた侍女にレリックのいる客室へ案内するようお願いしたが、先ほどシオンに言われて庭へとお連れした、と教えてもらった。
「あら、お庭でお稽古の続きでしょうか? でしたら私も行きます」
侍女の案内で庭へ出たスー。まず最初に目に入ったのは、シオンが女戦士に胸を蹴られている場面だった。
「お兄様!?」
シオンはセーナに真正面から斬りかかったところを、胸を蹴られる事で間合いを取られた形だ。すでに両者の身体には小さな傷がいくつかついており、この戦闘が始まってしばらく経っている事を窺わせる。
(何故みんな止めないのですか!?)
スーが探していたレリックは向こうの方で腕を組んで、やり合う二人を見つめている。隣には魔法使いが無表情で立っているし、スーは今の状況が理解出来なかった。
「止めなくては!」
兄想いのスーは、身を挺してでもこの戦闘を止めさせなければと走り出す。自分は先代勇者である父親を打ち負かすだけの実力があると信じて疑わない。
(精霊様!? どうしたというのです?)
スーの目の前で精霊達がパタパタと羽を震わせて飛び回っている。まるでスーを邪魔するかのような飛び方。
『ダメ! 違う、戦い、大事!』
『シオン、信じる、仲間』
『旅、仲間、大事!』
小鳥程度の大きさの精霊達が、口々にスーへ語り掛ける。しかし、スーは精霊が話す言葉を聞いても、何を伝えたいのかよく分からないのだ。
(シオンの仲間として旅するには、戦うのが大事……?)
精霊達から聞こえた単語を組み合わせて、スーが導き出した答え。
「私がお兄様の仲間として認められる為には、お兄様の隣で一緒に戦う事だという事ですね!」
そうに違いないと思い込んだスーは、未だ止める精霊達を振り切ってシオンの隣へと駆ける。
「お兄様、スーも戦います!」
「え、スー!?」
妹が自分の隣に来た事により、セーナの攻め手が緩む。仕切り直すべきかどうか窺っているようなセーナの顔を見て、シオンは今がチャンスだと判断した。
「スー! そこで応援しててね!!」
シオンがそう言い残して走り出す。スーはシオンに一緒に戦う事を認められたのだと受け取った。
スーが見つめる先、セーナが動揺したのは一瞬で、今はまたシオンが押されている。
(このままではお兄様が……。私に出来る事は何でしょうか)
シオンもセーナも剣を構えているが、スーは自分の剣を持って来ていない。武器もなく打ち合っている二人の間に入るのは危険であり、シオンの邪魔にもなりかねない。
今ここで、自分のやり方でシオンの助けになるにはどうすれば良いか……。
(そうだ、精霊様!)
「火の精霊様、お兄様を守って!」
スーがそう叫ぶと、シオンの隣に炎を身に纏った人型の精霊が出現した。
「あの女戦士をやっつけて!!」
「いや、だからこれは模擬戦だから手出ししちゃダメなのよ?」
炎の精霊は、スーにそう言い返した。
「ストーップ!!! セーナ、シオンも! 模擬戦は終了! 終了です!!」
レリックが必死に両手を振って試合を終了させたのだった。
しばらく腰に纏わりついていたスーだが、シオンの様子がいつもと違う事に気付いた姉、サラから止められて、剥がされてしまった。
「シオンは大事なお仕事があるのよ。スーもお手伝い出来るようにお勉強しなさいな」
スーはシオンが勇者である事、そしていずれは父の跡を継いで侯爵となると知っている。兄の力になれるならと、家庭教師の話をよく聞いているし、時々稽古に付き合ってくれる父を負かすほどの実力があると思っている。
テーヴァスは娘に甘い為、いつも大袈裟にやられたフリをしているだけだが、スーはそれが本当の自分の実力だと信じている。
先代勇者をやっつける力があるのだから、自分も勇者パーティーに入ってもいいのではないか。そう思い、事あるごとに父親に掛け合うのだが、良い返事をもらえないでいる。
(お父様では話になりません。お母様もダメだって仰るだけ。アルジャンはお兄様に負けてしまったそうだし)
誰に言えば勇者パーティーに入れるのか。六歳児は考える。
(そうだ、レリック様ならどうでしょう。お兄様を支えておられるようだし、レリック様からお兄様に言って頂きましょう)
スーは近くにいた侍女にレリックのいる客室へ案内するようお願いしたが、先ほどシオンに言われて庭へとお連れした、と教えてもらった。
「あら、お庭でお稽古の続きでしょうか? でしたら私も行きます」
侍女の案内で庭へ出たスー。まず最初に目に入ったのは、シオンが女戦士に胸を蹴られている場面だった。
「お兄様!?」
シオンはセーナに真正面から斬りかかったところを、胸を蹴られる事で間合いを取られた形だ。すでに両者の身体には小さな傷がいくつかついており、この戦闘が始まってしばらく経っている事を窺わせる。
(何故みんな止めないのですか!?)
スーが探していたレリックは向こうの方で腕を組んで、やり合う二人を見つめている。隣には魔法使いが無表情で立っているし、スーは今の状況が理解出来なかった。
「止めなくては!」
兄想いのスーは、身を挺してでもこの戦闘を止めさせなければと走り出す。自分は先代勇者である父親を打ち負かすだけの実力があると信じて疑わない。
(精霊様!? どうしたというのです?)
スーの目の前で精霊達がパタパタと羽を震わせて飛び回っている。まるでスーを邪魔するかのような飛び方。
『ダメ! 違う、戦い、大事!』
『シオン、信じる、仲間』
『旅、仲間、大事!』
小鳥程度の大きさの精霊達が、口々にスーへ語り掛ける。しかし、スーは精霊が話す言葉を聞いても、何を伝えたいのかよく分からないのだ。
(シオンの仲間として旅するには、戦うのが大事……?)
精霊達から聞こえた単語を組み合わせて、スーが導き出した答え。
「私がお兄様の仲間として認められる為には、お兄様の隣で一緒に戦う事だという事ですね!」
そうに違いないと思い込んだスーは、未だ止める精霊達を振り切ってシオンの隣へと駆ける。
「お兄様、スーも戦います!」
「え、スー!?」
妹が自分の隣に来た事により、セーナの攻め手が緩む。仕切り直すべきかどうか窺っているようなセーナの顔を見て、シオンは今がチャンスだと判断した。
「スー! そこで応援しててね!!」
シオンがそう言い残して走り出す。スーはシオンに一緒に戦う事を認められたのだと受け取った。
スーが見つめる先、セーナが動揺したのは一瞬で、今はまたシオンが押されている。
(このままではお兄様が……。私に出来る事は何でしょうか)
シオンもセーナも剣を構えているが、スーは自分の剣を持って来ていない。武器もなく打ち合っている二人の間に入るのは危険であり、シオンの邪魔にもなりかねない。
今ここで、自分のやり方でシオンの助けになるにはどうすれば良いか……。
(そうだ、精霊様!)
「火の精霊様、お兄様を守って!」
スーがそう叫ぶと、シオンの隣に炎を身に纏った人型の精霊が出現した。
「あの女戦士をやっつけて!!」
「いや、だからこれは模擬戦だから手出ししちゃダメなのよ?」
炎の精霊は、スーにそう言い返した。
「ストーップ!!! セーナ、シオンも! 模擬戦は終了! 終了です!!」
レリックが必死に両手を振って試合を終了させたのだった。
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