上 下
13 / 52

13:騒動

しおりを挟む
 何となく釈然としないながらも、テキパキと社長のデスクを片付けていく。
 その間、社長はテーブルに足を乗せて雑誌を読んでいた。
 眉間に皺を寄せ、難しい表情をしている。
 もしかして、今みたいな隙間時間で世の中の景気動向や各業界の情報を把握しておられるのかもしれない。
 そう思って雑誌の表紙をよく見てみると、ただの写真週刊誌だった。
 そう言えば、老眼鏡がデスクに置きっぱなしになっている。
 横着せず眼鏡かければいいのに……。

「社長、社長のパソコンや私物などはどちらへお持ちしたらよろしいですか?」

「ん? あぁ~、……専務の部屋に持って行ってくれ」

「分かりました」

 分かりましたと言ったものの、専務に事前にちゃんと伝えてあるんだろうな?

「困るよ、そんなの聞いていないもの」

 迷惑そうな専務の表情。
 ですよねー。
 社長のパソコンを抱えたままさぁどうするかと考えていると、社長が専務の部屋へ入って来た。

田沼たぬま君、置いとくだけでいいから。
 たまに使いに来るだけだから」

 それ置いとくだけじゃないじゃん。
 専務が何やら言いたそうにしておられるが、結局社長に丸め込まれていた。
 ここに置くように、と渋々専務が場所を指定されたのは専務のデスクのサイドテーブル。
 パソコンの本体と液晶モニターとキーボードとマウスを置くには少し狭いくらいか。

「ちょっと小さいな」

 置いておくだけでいいと言った割に、文句を言う社長。
 後はお二人で話し合って下さい。
 俺は社長に言われた通りこの部屋にパソコンを移動させ、専務に言われた通りサイドテーブルに設置していく。
 専務の部屋は社長室の隣だし、一日に何度もパソコンを触りに来るんだろうな。

 パソコンの設置完了。
 失礼しました、と俺は専務の部屋を辞したが、社長は早速専務の部屋でパソコンを起動して自分が個人的に投資している会社の株価のチェックを始めた。
 俺は一人で社長室へ戻り、経理課から持って来たパソコンを置き、ケーブル等を繋いでいく。
 ノートパソコンだからそんなに時間はかからない。

 そう言えば社長、デスクの中身については何も言ってなかったな。
 引き出しを開けてみると、あまり整理がされているとは言えない雰囲気。
 これはさすがに俺が片付けていく訳にはいかないよなぁ。

コンコンコンッ

 形だけのノックの後、誰も返事していないのにドアが開く。
 入って来たのはお盆に社長の湯飲みを乗せた営業事務のおばちゃん社員。

「あれ?
 ……ちょっとあなた、社長の部屋で何してるの!?
 どういうつもり!?
 あ、もしかしてドロボー!!?」

「いやいやいや違うんです!
 僕がここにいるのはちゃんとした理由があって……」

「泥棒は皆そう言うのよ!
 誰かぁ~~~!! 誰かぁぁぁ~~~!!!」

 うっわ面倒臭い展開になって来た。
しおりを挟む

処理中です...