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第一章:土下座女と男装の麗人(男)
伊吹の申し出
スライディング土下座をかまし、ゆっくりと身の上話を聞かせた上で再度頭を下げたものの、藍子は自分のお願いがそのまま伊吹に受け入れられるとは思っていない。
(交渉が必要であるとすれば、やっぱり収益配分についてになるかしら……)
YourTunesから支払われる収益の配分比率まで打ち明けたのだ。
今まで通りのVividColorsの取り分が四割では話にならない。三割でも多いと感じるだろう。
しかし二割では会社の発展が見込めない。落としどころは二割五分か。
脳内で交渉内容を詰めている藍子に向かって、伊吹が声を掛ける。
「とりあえず話にくいので頭を上げて下さい」
「……分かりました。
話を続けても、よろしいでしょうか?」
「僕は前向きに検討したいと思っています」
「それでは……!?」
ガバっと頭を上げて、伊吹の目を食い入るように見つめる藍子。
「ただし、条件があります」
やはり収益配分を突っ込まれるか、いやそれよりももっとどぎつい要求をされるか。
ここまで自ら身の上話を長々としたが、よく考えると伊吹の話を全く聞いていない事に今さら気付く藍子。伊吹が僕という一人称を使ったのも先ほどが初めてだ。
(彼女の事を、私はまだ何にも知らないじゃない……)
ようやく藍子は自分が再び猪突猛進していた事を自覚し、反省する。
「条件とは、どのような?」
藍子の問いにすぐには答えず、伊吹はカバンからスマートフォンを取り出して手早く操作した。目当てのアプリを立ち上げて、藍子へ画面を向ける。
「銀行の預金残高、ですか?
いちじゅうひゃく……、七億!?」
スマートフォンに表示されている預金残高を目にし、藍子は驚愕する。
いくら親が金持ちであると言っても、藍子自身の個人口座がそんな残高になった事は一度もない。そして、そんな預金残高を伊吹が自分に見せつける意図も把握出来ず、藍子は戸惑ってしまう。
「VividColorsの会社株式、全部とは言いません。四十九パーセントを購入させて下さい。
何なら新規発行して頂いても構いません」
「はぁ?
……はぁ~~~!?」
(乗っ取り? ハゲタカファンド? もしかして反社会的勢力のフロント企業化!?)
様々な嫌な想像が脳内を巡るが、藍子は今のVividColorsにそこまでの客観的価値がない事を見落としている。
「ちょっと。アイスコーヒー二杯で粘るのは許しても大声上げるのは許してないんだけど」
ツカツカツカとママさんが二人が座るテーブルへ歩いて来る。伊吹はスマートフォンを伏せてテーブルに置き、小さく頭を下げる。
「だってママさん!」
「声が大きいって言ってるでしょこのお転婆娘!
お連れさんに気を遣わすんじゃないわよ」
居心地悪そうにしている伊吹を見やり、ようやく少し冷静になる藍子。
いくらママさんと血縁関係にある気安い間柄だと言っても、初対面の伊吹がそこまで察せる訳がない。
「込み入った話になるんなら自分の会社でしなさいな。近くに車を待たせてるから」
「車? うちの会社なら歩いて五分だよ?」
はぁ……、とため息を吐き、ママさんは藍子の頭に軽く手刀をかます。批難の声を上げる藍子を無視して告げる。
「理由は後でよくよく考えるんだね」
ママさんは伊吹へウインクを送る。苦笑いを浮かべる伊吹。
「バレてましたか」
「バレいでか、これでも旦那と何年も一緒に暮らした身だよ」
伊吹はママさんが悪い人でなくて良かったと、今さらになってそう思うのだった。
(交渉が必要であるとすれば、やっぱり収益配分についてになるかしら……)
YourTunesから支払われる収益の配分比率まで打ち明けたのだ。
今まで通りのVividColorsの取り分が四割では話にならない。三割でも多いと感じるだろう。
しかし二割では会社の発展が見込めない。落としどころは二割五分か。
脳内で交渉内容を詰めている藍子に向かって、伊吹が声を掛ける。
「とりあえず話にくいので頭を上げて下さい」
「……分かりました。
話を続けても、よろしいでしょうか?」
「僕は前向きに検討したいと思っています」
「それでは……!?」
ガバっと頭を上げて、伊吹の目を食い入るように見つめる藍子。
「ただし、条件があります」
やはり収益配分を突っ込まれるか、いやそれよりももっとどぎつい要求をされるか。
ここまで自ら身の上話を長々としたが、よく考えると伊吹の話を全く聞いていない事に今さら気付く藍子。伊吹が僕という一人称を使ったのも先ほどが初めてだ。
(彼女の事を、私はまだ何にも知らないじゃない……)
ようやく藍子は自分が再び猪突猛進していた事を自覚し、反省する。
「条件とは、どのような?」
藍子の問いにすぐには答えず、伊吹はカバンからスマートフォンを取り出して手早く操作した。目当てのアプリを立ち上げて、藍子へ画面を向ける。
「銀行の預金残高、ですか?
いちじゅうひゃく……、七億!?」
スマートフォンに表示されている預金残高を目にし、藍子は驚愕する。
いくら親が金持ちであると言っても、藍子自身の個人口座がそんな残高になった事は一度もない。そして、そんな預金残高を伊吹が自分に見せつける意図も把握出来ず、藍子は戸惑ってしまう。
「VividColorsの会社株式、全部とは言いません。四十九パーセントを購入させて下さい。
何なら新規発行して頂いても構いません」
「はぁ?
……はぁ~~~!?」
(乗っ取り? ハゲタカファンド? もしかして反社会的勢力のフロント企業化!?)
様々な嫌な想像が脳内を巡るが、藍子は今のVividColorsにそこまでの客観的価値がない事を見落としている。
「ちょっと。アイスコーヒー二杯で粘るのは許しても大声上げるのは許してないんだけど」
ツカツカツカとママさんが二人が座るテーブルへ歩いて来る。伊吹はスマートフォンを伏せてテーブルに置き、小さく頭を下げる。
「だってママさん!」
「声が大きいって言ってるでしょこのお転婆娘!
お連れさんに気を遣わすんじゃないわよ」
居心地悪そうにしている伊吹を見やり、ようやく少し冷静になる藍子。
いくらママさんと血縁関係にある気安い間柄だと言っても、初対面の伊吹がそこまで察せる訳がない。
「込み入った話になるんなら自分の会社でしなさいな。近くに車を待たせてるから」
「車? うちの会社なら歩いて五分だよ?」
はぁ……、とため息を吐き、ママさんは藍子の頭に軽く手刀をかます。批難の声を上げる藍子を無視して告げる。
「理由は後でよくよく考えるんだね」
ママさんは伊吹へウインクを送る。苦笑いを浮かべる伊吹。
「バレてましたか」
「バレいでか、これでも旦那と何年も一緒に暮らした身だよ」
伊吹はママさんが悪い人でなくて良かったと、今さらになってそう思うのだった。
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