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第二章:転生先は並行世界
そしてスライディング土下座へと至る
伊吹は山道を走る車の中で、少しずつ現実逃避をする。
(実は大規模な避難訓練で、車が向かった先に美子さんと京香さんが待っている)
(実はご近所さん達は俺の身を守る忍の一族で、襲撃犯を返り討ちにする)
(避難した核シェルターに入った途端、冷凍睡眠装置に入れられて気付いたら百五十年後)
だんだんと非現実的な空想へと思考が偏って行くが、伊吹は自分の身の安全はもちろん、美子と京香の身も何らかの意思が働いて無事に脱出出来るはずだ、と思い込み、最悪な結末を考えないように、考えないようにとしていた。
「おっと、あの車も追手だな」
運転手から外から姿を見られないようにと言われ、伊吹は後部座席で伏せている。
かなり長時間移動しており、現在地がどこなのか伊吹には判断が付かない。
(そう言えば、運転手は誰なんだ? 聞き覚えがない声がけど、まさか運転手が実は襲撃犯の一味だった、なんて結末はないだろうな?)
「このまま新幹線の駅まで向かおう」
最寄り駅は一日に止まる本数が少ないので、追手に見つかる危険性が高い。新幹線の停まる駅であれば、人混みに紛れて逃れる事が出来るだろうと運転手は説明した。
「分かりました」
自分に対して敬語を使わず話す運転手に若干の違和感を覚えながらも、今は従うしかないと思い直し、伊吹は素直に返事をした。
新幹線の停車駅に到着し、運転手が駐車場に車を停めた。
「新幹線の切符の買い方は分かるか?」
「え? ええ、多分大丈夫だと思います」
運転席から振り返った運転手の顔を見て、伊吹はどこかで見た顔だと感じたが、どこで見たのかは思い出せない。
「新幹線に乗る前に、一度スマートフォンを起動して無事である事だけでも伝えておいた方が良い」
「なるほど、そうします」
伊吹は運転手に言われた通り、スマートフォンを起動して美子と京香、そして美哉と橘香へと無事である事だけメッセージを送る。
万が一美子と京香のスマートフォンが襲撃犯の手に渡っている可能性を考えて、どこにいるかとこれからどこへ向かうかについては伏せておいた。
「喋らなければ男であるとバレる事はない。多少は東京観光をしても問題ないと思うぞ」
車を降りる伊吹に対し、運転手は微笑みながらそう話した。伊吹は、自分を元気付ける為の冗談だろうと思い、笑って礼を伝え、手を振り別れた。
新幹線に乗って初めて、伊吹は肌着が汗でぐしゃぐしゃになっている事に気付く。
一度興奮が冷めてしまうと、本当にこれは現実なのかと、映画を見ているかのような不思議な感覚に陥る。
前世でトラックに轢かれ、生まれ変わった自分。
母親の死。
祖母の死。
美哉と橘香とは離れ離れの寂しい毎日。
山奥の隠れ住むように暮らす日々。
さらには自分を攫いに来た襲撃者から逃れるという非現実感な状況。今世ではほぼ山奥から出ず、新幹線など乗った事はおろか見た事もなかった。
(二人は俺の師匠だ。誰であろうと負ける訳がない)
美子と京香の無事を祈り、ただただ窓の外を眺める伊吹。気を抜くと最悪の未来を想像してしまい、胸が締め付けられる。
(大丈夫、すぐに屋敷に帰っていつも通りの生活に戻れる。大丈夫)
『喋らなければ男であるとバレる事はない。多少は東京観光をしても問題ないと思うぞ』
運転手が話した冗談を思い出し、伊吹は自分が空腹である事に気付く。
(そうだ、ついでだしラーメンでも食べに行こう。こってりラーメンはあるだろうか。
ここまで来ればスマホを起動しても問題ないだろう)
スマートフォンで検索し、伊吹は前世で好きだった全国展開しているこってりラーメン屋さんに似た店を検索する。
(みぃねぇときぃねぇはまだ研修時間中だろうから、連絡を取るのはラーメンを食べた後でも良いかな)
新幹線が東京駅に到着し、スマートフォンの画面と観光案内を見比べながら在来線へと乗り換え、目的のラーメン屋へ辿り着く。
人は満腹になると気分が高揚したり、陶酔感や幸福感で痛みや疲労感、ストレスなどが和らぐ。
気が緩み、伊吹が独り言を零してしまった事をきっかけとして、スライディング土下座女に出会ったのだった。
(実は大規模な避難訓練で、車が向かった先に美子さんと京香さんが待っている)
(実はご近所さん達は俺の身を守る忍の一族で、襲撃犯を返り討ちにする)
(避難した核シェルターに入った途端、冷凍睡眠装置に入れられて気付いたら百五十年後)
だんだんと非現実的な空想へと思考が偏って行くが、伊吹は自分の身の安全はもちろん、美子と京香の身も何らかの意思が働いて無事に脱出出来るはずだ、と思い込み、最悪な結末を考えないように、考えないようにとしていた。
「おっと、あの車も追手だな」
運転手から外から姿を見られないようにと言われ、伊吹は後部座席で伏せている。
かなり長時間移動しており、現在地がどこなのか伊吹には判断が付かない。
(そう言えば、運転手は誰なんだ? 聞き覚えがない声がけど、まさか運転手が実は襲撃犯の一味だった、なんて結末はないだろうな?)
「このまま新幹線の駅まで向かおう」
最寄り駅は一日に止まる本数が少ないので、追手に見つかる危険性が高い。新幹線の停まる駅であれば、人混みに紛れて逃れる事が出来るだろうと運転手は説明した。
「分かりました」
自分に対して敬語を使わず話す運転手に若干の違和感を覚えながらも、今は従うしかないと思い直し、伊吹は素直に返事をした。
新幹線の停車駅に到着し、運転手が駐車場に車を停めた。
「新幹線の切符の買い方は分かるか?」
「え? ええ、多分大丈夫だと思います」
運転席から振り返った運転手の顔を見て、伊吹はどこかで見た顔だと感じたが、どこで見たのかは思い出せない。
「新幹線に乗る前に、一度スマートフォンを起動して無事である事だけでも伝えておいた方が良い」
「なるほど、そうします」
伊吹は運転手に言われた通り、スマートフォンを起動して美子と京香、そして美哉と橘香へと無事である事だけメッセージを送る。
万が一美子と京香のスマートフォンが襲撃犯の手に渡っている可能性を考えて、どこにいるかとこれからどこへ向かうかについては伏せておいた。
「喋らなければ男であるとバレる事はない。多少は東京観光をしても問題ないと思うぞ」
車を降りる伊吹に対し、運転手は微笑みながらそう話した。伊吹は、自分を元気付ける為の冗談だろうと思い、笑って礼を伝え、手を振り別れた。
新幹線に乗って初めて、伊吹は肌着が汗でぐしゃぐしゃになっている事に気付く。
一度興奮が冷めてしまうと、本当にこれは現実なのかと、映画を見ているかのような不思議な感覚に陥る。
前世でトラックに轢かれ、生まれ変わった自分。
母親の死。
祖母の死。
美哉と橘香とは離れ離れの寂しい毎日。
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さらには自分を攫いに来た襲撃者から逃れるという非現実感な状況。今世ではほぼ山奥から出ず、新幹線など乗った事はおろか見た事もなかった。
(二人は俺の師匠だ。誰であろうと負ける訳がない)
美子と京香の無事を祈り、ただただ窓の外を眺める伊吹。気を抜くと最悪の未来を想像してしまい、胸が締め付けられる。
(大丈夫、すぐに屋敷に帰っていつも通りの生活に戻れる。大丈夫)
『喋らなければ男であるとバレる事はない。多少は東京観光をしても問題ないと思うぞ』
運転手が話した冗談を思い出し、伊吹は自分が空腹である事に気付く。
(そうだ、ついでだしラーメンでも食べに行こう。こってりラーメンはあるだろうか。
ここまで来ればスマホを起動しても問題ないだろう)
スマートフォンで検索し、伊吹は前世で好きだった全国展開しているこってりラーメン屋さんに似た店を検索する。
(みぃねぇときぃねぇはまだ研修時間中だろうから、連絡を取るのはラーメンを食べた後でも良いかな)
新幹線が東京駅に到着し、スマートフォンの画面と観光案内を見比べながら在来線へと乗り換え、目的のラーメン屋へ辿り着く。
人は満腹になると気分が高揚したり、陶酔感や幸福感で痛みや疲労感、ストレスなどが和らぐ。
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