仔羊が狼になって帰って来た

なつのさんち

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無口な大学生

隣の部屋

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 「そろそろお風呂入っちゃうねー、明日早いし」

 祖母と父親が洋太の今後について好き勝手話している合間を狙って、真智子は居間を後にする。
 お風呂、と言った時に洋太がぴくっと肩を動かしたような気がしたが、真智子はそれを考え過ぎであると思い込む事にした。
 一度自室へ戻り下着の替えを用意する。寝間着は今着ているままで良しとした。
 しかし下着だけを手に持って家をウロウロするのは憚られるので、Tシャツの替えも用意してそれで下着を包み込む。
 ややオシャレな、鮮やかな赤い下着を選んだのは無意識か。それとも何かしら意図があってか。
 見られないように包んでいるのに、見られても恥ずかしくないような物を選ぶのが真智子の中の女心なのだろう。

 浴槽に湯が張られておらず、ちゃちゃっとシャワーで済ました真智子は、頭からバスタオルを被った状態で食卓へ向かった。
 居間には祖母を除く3人が残っており、ぎこちないながらも会話が続いていたように見える。
 真智子はそれを眺めながらコップにお茶を入れ、背を反らしてコクコクと飲み干す。
 ふーっ、と息を吐いた時、目の前に熊のような大男が立っていた。

「きゃっ!?」

 いきなり目の前に現れた洋太に驚き声を上げる真智子。その真智子を見て洋太も焦ったような表情を浮かべる。

「す、すみません……」

「いえいえ大丈夫よ! 立ってる姿見るの初めてだから、ついね」

 ペコペコ頭を下げる洋太の肩を叩き、真智子は洋太の分のお茶を入れる。

「はい、どうぞ。お茶が飲みたかったんでしょ?」

「……っス」

 曖昧に頷き、コップを受け取る洋太。

「必要な物は揃ってる? もしまだ買い揃えないといけない物があるなら、休みの日に連れてってあげるから言ってね」

 じゃ、お休み。と会話を終わらせて洋太から離れる真智子。
 未だに鳴りやまない心臓を抑えつつ、自室へ戻る。

(しまった、歯磨きするの忘れてた……)

 みなが寝静まってから改めて洗面所へ向かう真智子。その際、自分の隣の部屋を洋太が使う事になったのだと、中から聞こえて来る低いいびきで初めて気付いたのだった。
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