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獲物を追い詰める狼

試着室

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「私が強くなれって言ってたから、柔道を始めたって事」

「っス」

 自信あり気な洋太の表情。真っ直ぐに真智子の目を見つめて来る。
 どう? 僕強くなったよ! 褒めて褒めて!!
 洋太の表情はあの時の小さな男の子のように見えた。

(心はいつまでの少年のままってか)

 しかし真智子からすれば、熊のような体格の男性。表情と体格にギャップがあり過ぎる。

「これとこれ、試着して来て」

「……っス」

 望んでいた反応ではなかった為か、少し拗ねたような顔でズボンを受け取る洋太。その表情こそに真智子は目を奪われてしまう。

(女子の気を引きたい男子って感じ?)

 どことなく胸が締め付けられるような感覚を覚える。もっといじめてやりたい。そんなイタズラ心が芽生える真智子。
 その時点で真智子女子洋太男子に気を引かれてしまっているんだが、本人は気付いていない。

「どう? 太ももパツンパツンじゃない?」

「ちょっとキツイっス」

「じゃあもう1サイズ大きいの持って来るから待ってて」

 試着室に声を掛けて、ズボンを取りに行く真智子。

(何か奇抜な柄のズボンはないかなー。ピンクとか紫とかのは派手な色のでも良いけど)

 しかしわざと変なズボンを持って行って、これが真智子の好みのファッションなのだと洋太に思われる可能性もある。
 もしそうなった時、いやいやこれはイタズラで、と自ら説明する恥ずかしさを考えると、そんなバカな行動は取らない方が自分の為だと思い直す真智子。
 結局同じ柄の物をそれぞれ1本ずつ手に取り、試着室へと戻った。

「開けるよー。はい、これ…………!?」

「ちょっ!? 何で開けるんスか!」

 ちょっとしたイタズラ心だった。変なズボンを渡す代わりに、いきなり試着室のカーテンを開けてビックリさせてやろうという可愛い嫌がらせのつもりだったのに。
 真智子が試着室の中に見たのは、パンパンにテントを張った洋太のピンクと紫が配色されたボクサーパンツだった。

(何で試着室の中で勃起させてんのよ!?)

 結果、落ち着いていた真智子の心が再びかき乱される事となった。
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