リープ・ザ・ループ ~時を戻す少女~

なつのさんち

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X+1回目のループ

両思いの2人

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 階段途中で立ち止まり、夢子ゆめこ心音ここねに向き直る。

(心音、あたしの心の声が聞こえるの?)

「うん、聞こえるよ。でも聞こえるだけ。心が全部読めるような感じではないんだよね~」

 使える、と夢子は判断した。

「一緒に来て! あたしが見た予知夢を現実の物にするわっ!」

 心音の手を取り、階段上を目指す。素直について歩く心音。


 心音も今朝早く、急に人の心が読める超能力が発現した事を自覚した。
 ただし、全ての人の思考を読み取れるようなものではなく、呟くような心の声であれば心音に届くようになるらしい。

 らしい、というのも、あくまで心音が自然と自分の能力を自覚しただけであり、実践をしていない為に確証はないからだ。
 有効距離もそれほど広くないだろうという程度しか把握していない。
 通学中、そして授業中と絶え間なく届く他人の心の声。超能力が発現した最初の日だから面白いと感じているが、このままこの状態が続けば人間不信になるかも知れないなと、心音はそう思っていた。

(こんな話、時恵ときえちゃんにしたら信じてくれるかな? そう言えば今日は通学中に会わなかったけど)

 もう1人の仲の良い、大好きな友達。時恵ならば自分の話を聞いてどんな反応をするだろうか。心音は夢子に手を引かれながら、そんな事を考えていた。


「何とかあたしがとおるに白状させるからさ、それでもダメなら心を読んでよ」

「え~、ボクは心の声が聞こえるだけで、その人が考えてる事全部分かる訳じゃないんだよ?」

「えっと、その違いって何かあるの?」

「つまり、心で呟いた事が本当にそう思っている事かどうかの判断は出来ない、的な?」

「そこは私が何とかするから! ね、お願いっ」

 夢子と心音が屋上に辿り着いた。扉を開けて透を探す。
 この学校の屋上は常に解放されており、ここで弁当を食べる者もいる共有スペースとなっている。
 とはいえフェンスが張り巡らされているのでさほど広くないこの場所で、探し人はすぐに見つける事が出来た。

 ベンチに腰掛けてガツガツと弁当を食べている透の前に、夢子と心音が歩み寄る。

「透、何で逃げたのか正直に言いなさい?」

 腰に手を当てて仁王立ちする夢子をちらりと見て、また箸を動かす透。口に物を入れたままもごもごと答える。

「昼休みも無限じゃないんだ、お前らも早く食べろよ」

 目で自分の隣を見やり、座るように促す透。
 心音も透と友達である為、食事を共にするのに気を使うような間柄ではない。

「あ~、パン持って来てないや。どうしよっかな」

「あたしの弁当分けてあげるから、ほら座って座って」

 少し機嫌の良さそうな夢子。
 しかし心音には何故機嫌が良いのか、心を読む事で原因を探るような事は出来ない。あくまで心の声が聞こえる、程度の能力であり、意識して使うものではないのだ。

(絶対に白状させるんだからねっ! ふんっふんっふ~~~んっ♪)

 夢子のそんな心の声を聞いて、便利なのか不便なのかよく分からないなぁと思いつつ、心音もベンチに腰を下ろした。

「で、何で逃げたのかねっ? 大人しく白状したまえ!」

 あくまで白状するまで問い詰める形を変えない夢子に、悪びれた様子のない口調で透が答える。

「なぁ、何で見られるの分かってて俺の目の前で黒板を消そうと思ったんだ?
 普通嫌だろ、男にパンツ見られるの」

 見られるのを分かっていながら、わざわざ黒マジックで文字を書いたパンツを履いて登校して来た夢子。透からすれば不思議で仕方がない。
 見られる事を分かっているならば、その未来を回避しようとするものなんじゃないのか。それこそ学校を休めば、予知した夢は現実にならないはずだ。

「だって、あんたの能力がどれだけの物なのか分かんないじゃない。タイツを履こうが、短パンを履こうが透視されるかも知れないじゃん。
 どうせ見られるなら、見られたタイミングを把握してやろうと思った訳。
 どうっ? ビックリしたでしょ!」

 パンツを見られた当の本人が得意げな表情で自分の顔を覗き込んでいる。
 その状況に透は思わず、

(可愛過ぎだろ……)

 と心の声を呟く。

「良かったね、夢ちゃん。可愛いってさ、両想いだね!」

「「なっ!!?」」

 同時に心音を見て声を上げる両想いの2人。すでに息がぴったりである。

「心音、透の心の声が聞こえたの!?」

 ん~、と小首を傾げながら心音は答える。

「確かに可愛過ぎだろって透君の声は聞こえたけどさ、2人を見てると心の声とか関係なく気付くと思うんだ。ってかボクはだいぶ前から気付いてたもん。
 夢ちゃんは好きな人だからパンツ見られてもそこまで嫌だって思わないし、見られた瞬間を知りたかったんでしょ?」

「きゃーーー! ち、違うのよ透! これはその、あのっ……、
 はいドッキリー!!!」

 ブーッ! っと透が口に頬張っていたハンバーグを吹き出す。
 この状態でドッキリだと言われても誰も信じないだろ、とツッコミを入れつつ、この声も聞こえてんのかと心音を意識する。

「ほら夢ちゃん、落ちたのは汚いからダメだよ? 透が好きだからってそこまでは……」

「わぁ~~~っ! 何言ってんのよ心音! それじゃあまるであたしが変態みたいじゃないっ!!」

 夢子が心音にどんな心の声を聞かれたのか気になりつつも、透は口をハンカチでキレイに拭ってから夢子に向き直る。

「夢子、もう今さらだからハッキリ言うわ。
 俺、お前の事が好きだ」

 驚きの表情を浮かべつつ、夢子が隣に座る心音の服の裾をくいくいっと引っ張る。

「ごめんね、ボク嘘発見器じゃないんだ。
 透君の気持ちを確かめたいんならさっ、2人でゆっくりとお話すればいいんだよ」

 じゃあね、お幸せにぃ~と手をパタパタと振りながら立ち上がり、心音がベンチから離れて行く。
 その姿を手で掴もうとしつつ、透の顔から目線を外せないでいる夢子。
 そして真っ赤な澄まし顔の透。

(超能力で恋のドキドキがなくなっちゃったらもったいないよね~)

 屋上の扉を閉める際に、2人をちらりと確認しながら心音はその場を後にした。
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