1 / 12
01:夢の中の異世界
しおりを挟む
うん、これは夢だな。夢に違いない。私は今、愛する娘と一緒にベッドで寝ているはずなのだ。
人の頭にあんな長い角は生えないし、紫色の肌をした人種も存在しない。
ケンタウルスもミノタウルスも想像上の生き物だし、翼を羽ばたかせて飛び回る幼女がいるわけない。
そして、エルフは私のようなオッサンの服をクイクイってしない。
「どうしました?」
うん、たぶんエルフ。
黒いフードをすっぽりと被っているけど、尖った耳を隠しきれていない。
髪の毛は緑色で、丸い銀縁のメガネを掛けている、しわっしわのおばあちゃん。
「ふにゅふにゅふにゅふにゅへりゃへりゃほりゃほりゃ」
うん、何言ってんのか分かんない。
仕事柄、言語障害を持った高齢者相手でも割と会話が出来る方だと思っているけど、さすがにこれは分かんない。
しわっしわだけど品のある、可愛らしいおばあちゃん。
おいしいシチュー作ってくれそうな雰囲気。
「りょりょりゅりゅりぇりぇほほほほぺしゅー」
大きな、とても重そうな杖で身体を支えながら、通りの向こうを指さす。
う~ん、連れてってほしいんだろうか。何となくそんな気がする。
「家に帰るんですか?」
杖をついていない方、おばあちゃんの左手を自分の左手で握り、左脇に私の右手を添えて歩き出す。
「こっちでいいの?」
左耳の近くで少し大きめの声で話し掛ける。
「ひゃうん!」
あ、ゴメンね、こそばかったね。ひゃうんだけ正確に聞き取れたよ。
エルフは耳が敏感らしいからね、次から気を付けるね。
おばあちゃんの歩行介助をしながら街を見回す。
異国というより、異世界っぽいなぁ。
夢は自分の願望や記憶を元に見るらしいけど、こんな街並みの記憶なんてないよ。深層心理の願望だって言われれば否定は出来ないけども。
「ガーダルウフーンバラリバラリョリョリョセッスー!」
「アーネンバラリトフジコピッピースルットー!」
「ダンスダンダンリリルルパヴォードゥルッ、ブー!」 ボォーー!!
お店のような建物の前で、腕が4本ある生き物が呼び込みみたいな事をしている。
道の反対側では目が3つある女性らしき生き物が大鍋を混ぜている。
その隣ではトカゲ頭が火を吹いている。
私の深層心理は一体どうなっているんだろうか。
おばあちゃんはニコニコしているけど、こんな街でも平和なんだろうか。
その割におばあちゃんを気遣うような人物が1人もいないけど。
あ、比較的人間っぽい人物が近寄って来た。
「マリョルヌロリバッハププヌブンバボアルエリ?」
どうやら私に何かを問い掛けているような感じけど、何が言いたいのかさっぱり分からん。
曖昧に笑顔を浮かべて頷くのは日本人の悲しい性だな、ついついやってしまった。
比較的人間っぽいその女性は私の肩をバンッ! と叩いて離れて行った。
「とるりぬんぽりっぷうぷぅぺれぽぃ」
大きな屋敷の前で、おばあちゃんが歩みを止めた。
ここがお家なんだろうか?
「ここがお家でいいんですか?
お家の人いるかな、さすがに門の前でバイバイするには広過ぎるお屋敷だな」
仕方がない、一度手を取ったからには玄関までお送り致しましょう。
玄関に辿り着くまでに転倒でもされたら夢見が悪くなる。うん、これは夢だけど。
屋敷の門をくぐると、草木で彩られた庭園が見えた。
庭園の手入れをしていたのだろうか、若いエルフの女性がこちらに気付き、立ち上がって歩いて来た。
「コマイウゴントンチェックス? ハグタハッンキン?」
私に問い掛けているようだけど、またも曖昧に笑顔を浮かべてしまった。
女性に構わずおばあちゃんは屋敷の玄関へと歩を進めているので、知り合いなんだろう。
髪の毛の色も同じく緑だし、子供か孫かだろうか。
若い女性が先を行き、玄関を開けてくれた。
私も入っていいんだろうか? 屋敷の中へと入る。靴のまま入ったけど、洋風建築だからいいよね?
入ってすぐの部屋にソファーがあり、おばあちゃんは私の手を掴んだまま座ってしまった。
私にも座れと言われているような気がするので、隣に腰掛ける。
「おばあちゃん、ここに住んでるの?」
ニコニコしたまま私の顔を見つめるおばあちゃん。癖で、曲がった腰を撫でてしまっていたので、手を引っ込める。
引っ込めた手を両手で握り締め、私の目を見つめるおばあちゃん。
とても品のある笑顔。ここが異世界ならば、恐らくこのおばあちゃんはお貴族様だ。
私のような庶民がこの高そうなソファーに座っていていいのだろうか。
いいんです、だって夢だから。
大手メーカーをリストラされ、ヘルパー2級を取って介護士として働いてもうすぐ5年。
ケアマネージャーの資格試験の勉強、仕事をしながらだとなかなか身が入りません。
そんなオッサンでもお貴族様のお屋敷にいてもいいんです、だって夢だから。
「トシャルアルゲパデンティスエ、アンアンジェルヌイキトレーヌリー」
若い女性が紅茶っぽい匂いのする飲み物をテーブルへと置いてくれた。
私とおばあちゃんの前に1つずつ。おばあちゃんがふ~ふ~してからカップに口を付ける。
これは私も飲んでもいいんだよね? 頂きます。ずずずっ
不思議な味だけど、やっぱり紅茶っぽい。とてもいい香りだけど、お砂糖が欲しい。
おばあちゃんが私が持っているカップを取り、テーブルへと戻した。
あれ? 飲んじゃダメだった?
おばあちゃんが両手で私の顔をがしりと掴んだ。
何だろうこの展開は……。
ブチュ! 突如奪われる唇。侵入する老婆の舌。蹂躙される私の口内。鼻から抜ける紅茶っぽい香り。
わ、私には妻も娘もいるんですよ!?
ソファーに押し倒される。何という怪力、多分今の私はレイプ目になっていると思う。抵抗しようにも、おばあちゃんに怪我をさせてはならぬと力が入れられない。
目がチカチカし、頭がズキズキと痛む。若い女性の叫ぶ声。
私は意識を失った。
人の頭にあんな長い角は生えないし、紫色の肌をした人種も存在しない。
ケンタウルスもミノタウルスも想像上の生き物だし、翼を羽ばたかせて飛び回る幼女がいるわけない。
そして、エルフは私のようなオッサンの服をクイクイってしない。
「どうしました?」
うん、たぶんエルフ。
黒いフードをすっぽりと被っているけど、尖った耳を隠しきれていない。
髪の毛は緑色で、丸い銀縁のメガネを掛けている、しわっしわのおばあちゃん。
「ふにゅふにゅふにゅふにゅへりゃへりゃほりゃほりゃ」
うん、何言ってんのか分かんない。
仕事柄、言語障害を持った高齢者相手でも割と会話が出来る方だと思っているけど、さすがにこれは分かんない。
しわっしわだけど品のある、可愛らしいおばあちゃん。
おいしいシチュー作ってくれそうな雰囲気。
「りょりょりゅりゅりぇりぇほほほほぺしゅー」
大きな、とても重そうな杖で身体を支えながら、通りの向こうを指さす。
う~ん、連れてってほしいんだろうか。何となくそんな気がする。
「家に帰るんですか?」
杖をついていない方、おばあちゃんの左手を自分の左手で握り、左脇に私の右手を添えて歩き出す。
「こっちでいいの?」
左耳の近くで少し大きめの声で話し掛ける。
「ひゃうん!」
あ、ゴメンね、こそばかったね。ひゃうんだけ正確に聞き取れたよ。
エルフは耳が敏感らしいからね、次から気を付けるね。
おばあちゃんの歩行介助をしながら街を見回す。
異国というより、異世界っぽいなぁ。
夢は自分の願望や記憶を元に見るらしいけど、こんな街並みの記憶なんてないよ。深層心理の願望だって言われれば否定は出来ないけども。
「ガーダルウフーンバラリバラリョリョリョセッスー!」
「アーネンバラリトフジコピッピースルットー!」
「ダンスダンダンリリルルパヴォードゥルッ、ブー!」 ボォーー!!
お店のような建物の前で、腕が4本ある生き物が呼び込みみたいな事をしている。
道の反対側では目が3つある女性らしき生き物が大鍋を混ぜている。
その隣ではトカゲ頭が火を吹いている。
私の深層心理は一体どうなっているんだろうか。
おばあちゃんはニコニコしているけど、こんな街でも平和なんだろうか。
その割におばあちゃんを気遣うような人物が1人もいないけど。
あ、比較的人間っぽい人物が近寄って来た。
「マリョルヌロリバッハププヌブンバボアルエリ?」
どうやら私に何かを問い掛けているような感じけど、何が言いたいのかさっぱり分からん。
曖昧に笑顔を浮かべて頷くのは日本人の悲しい性だな、ついついやってしまった。
比較的人間っぽいその女性は私の肩をバンッ! と叩いて離れて行った。
「とるりぬんぽりっぷうぷぅぺれぽぃ」
大きな屋敷の前で、おばあちゃんが歩みを止めた。
ここがお家なんだろうか?
「ここがお家でいいんですか?
お家の人いるかな、さすがに門の前でバイバイするには広過ぎるお屋敷だな」
仕方がない、一度手を取ったからには玄関までお送り致しましょう。
玄関に辿り着くまでに転倒でもされたら夢見が悪くなる。うん、これは夢だけど。
屋敷の門をくぐると、草木で彩られた庭園が見えた。
庭園の手入れをしていたのだろうか、若いエルフの女性がこちらに気付き、立ち上がって歩いて来た。
「コマイウゴントンチェックス? ハグタハッンキン?」
私に問い掛けているようだけど、またも曖昧に笑顔を浮かべてしまった。
女性に構わずおばあちゃんは屋敷の玄関へと歩を進めているので、知り合いなんだろう。
髪の毛の色も同じく緑だし、子供か孫かだろうか。
若い女性が先を行き、玄関を開けてくれた。
私も入っていいんだろうか? 屋敷の中へと入る。靴のまま入ったけど、洋風建築だからいいよね?
入ってすぐの部屋にソファーがあり、おばあちゃんは私の手を掴んだまま座ってしまった。
私にも座れと言われているような気がするので、隣に腰掛ける。
「おばあちゃん、ここに住んでるの?」
ニコニコしたまま私の顔を見つめるおばあちゃん。癖で、曲がった腰を撫でてしまっていたので、手を引っ込める。
引っ込めた手を両手で握り締め、私の目を見つめるおばあちゃん。
とても品のある笑顔。ここが異世界ならば、恐らくこのおばあちゃんはお貴族様だ。
私のような庶民がこの高そうなソファーに座っていていいのだろうか。
いいんです、だって夢だから。
大手メーカーをリストラされ、ヘルパー2級を取って介護士として働いてもうすぐ5年。
ケアマネージャーの資格試験の勉強、仕事をしながらだとなかなか身が入りません。
そんなオッサンでもお貴族様のお屋敷にいてもいいんです、だって夢だから。
「トシャルアルゲパデンティスエ、アンアンジェルヌイキトレーヌリー」
若い女性が紅茶っぽい匂いのする飲み物をテーブルへと置いてくれた。
私とおばあちゃんの前に1つずつ。おばあちゃんがふ~ふ~してからカップに口を付ける。
これは私も飲んでもいいんだよね? 頂きます。ずずずっ
不思議な味だけど、やっぱり紅茶っぽい。とてもいい香りだけど、お砂糖が欲しい。
おばあちゃんが私が持っているカップを取り、テーブルへと戻した。
あれ? 飲んじゃダメだった?
おばあちゃんが両手で私の顔をがしりと掴んだ。
何だろうこの展開は……。
ブチュ! 突如奪われる唇。侵入する老婆の舌。蹂躙される私の口内。鼻から抜ける紅茶っぽい香り。
わ、私には妻も娘もいるんですよ!?
ソファーに押し倒される。何という怪力、多分今の私はレイプ目になっていると思う。抵抗しようにも、おばあちゃんに怪我をさせてはならぬと力が入れられない。
目がチカチカし、頭がズキズキと痛む。若い女性の叫ぶ声。
私は意識を失った。
0
あなたにおすすめの小説
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
異世界ランドへようこそ
来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。
中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。
26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。
勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。
同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。
――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。
「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。
だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった!
経営者は魔族、同僚はガチの魔物。
魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活!
やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。
笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。
現代×異世界×職場コメディ、開園!
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる