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03:幼女を魔王城へ送り届ける
しおりを挟む「パパ! パパ!!」
少しの間ボーっとしていたようだ。
頬に当たる鋭い痛みで我に返る。
私は一体どうなってしまったのだろうか。
視界左上の文字が“ Emergency ”から“ Now Loading ”へと戻っている。
いつになったら“ Stand by ”になるのやら。
「パパ、助けてくれてありがとう! 大好き!!」
私はパパ派ではなくお父さん派なんだが、まぁ今はそんな事はどうでもいい。
擦り付けられる頬っぺたがぷにぷにして気持ちいい。これで角さえなければな~。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい? 怖かったね」
ゆっくりと地面に降ろそうとするが、幼女は抱き着いたまま離れようとしない。両脚を私の腰に巻き付けて来る。
首を振り振りしている。細長いシッポを私の右腕に絡めている。
器用だな。まぁいいか。
それよりも。
「おばあちゃん、私に何をしたんですか?」
私の身に起こった重大な変化。
意識が戻ってから急に通じるようになった言葉と視界左上に出現した文字。
そして、人間4人を簡単に消し去った魔法のような力。
キッカケは、おばあちゃんから受けたディープなキッスじゃないか?
それくらいしか心当たりがない。
私の問い掛けに、おばあちゃんが真剣な表情で口を開く。
「存在は越えた壁の複製で移すのが簡単な時間の定着だわさ。およそ理解は1回朝昼夜の起きたら理解が、理解が……、
昼ご飯はまだかいね」
「お昼ならさっき食べましたよ?」
エリナさんがややうんざりした表情で答える。
ダメだ、言葉は分かるようになったけど話が通じない。
「む~、最近おばあちゃん何言ってるか分かんないよね~」
「あの人はお嬢ちゃんのおばあちゃんなのかい?」
「その子、マオリーちゃんはこの魔王国の魔王で、祖母は少し前まで筆頭宮廷魔術師をしておりました。
先代魔王はマオリーちゃんの父親だったのですが、先代勇者に殺されてしまいました」
こんな小さな幼女が、魔王だって? ハハ、ナイスジョーク。
いや、でもさっき私が消し去った勇者も魔王を殺すうんぬん言ってたし、やっぱり本当なのかも。
魔王討伐に来た勇者パーティーを全滅させてしまったけど、この世界は暗黒に支配される事になるのだろうか。
んな訳ない。こんな可愛らしい幼女が世界を恐怖に陥れるような事をするだろうかいやしない。
私の夢なのであれば絶対にしないと言い切れる。
幼女は保護の対象であって、討伐対象ではない。あるはずがない。
「パパ、お顔変わったぁ?」
「う~ん、私は君のパパではないんだよ。何か申し訳ないけど」
「でも何となくパパと似てるもん。ふっかつ? したから顔が違うの?」
「マオリーちゃん……。
『百万回ふっかつしたまおう』のように、復活したらいいのにね」
ため息と共に漏れるエリナさんの呟き。
マオリーちゃんは父親が勇者に倒され、殺されてしまった事を受け入れられていないのだろう。
何だか悲しいな。初めて会ったとはいえ、自分に出来る事はないだろうかと考えてしまう。
ん? おばあちゃんが庭園に落ちているキラキラ剣を指さしている。
取れって言ってるんだろうか。
はいはいっと。歩いて近付く。
うわっ、この剣よく見たら何か黒い瘴気みたいなのが出てるけど触っても大丈夫なんだろうか。
ちょん、大丈夫そうだ。
左手で持ち上げると、見た目ほど重たくなかった。
「それは代々の魔王の生き血を吸った、魔王にとっては呪いのアイテムのようなものです。
あまりマオリーちゃんの目に触れさせたくないのですが……」
エリナさんはそう言うけど、どうしたらいいんだろうか。
「異次元空間収納」 ずずずっ
またですか、おばあちゃん。
そんな一言だけ伝えられても分からんよ?
でも異次元へ収納する、というイメージならば……。
「異次元空間収納」
シュンっ! と左手のキラキラ剣がなくなった。
なくなったが、私の把握している別の空間へと移動したと感覚で理解した。
よく分からないけど、そう理解した。
夢だから分かるんだろうか。自分の夢だからな。そういうもんだと思っておこう。
「すごい! 収納魔法まで使えるなんて、どこかの国のお抱え魔術師なんですか?」
「いえ、エリナさん。多分ですけど、おばあちゃんに唇を奪われた時に何かされたんだと思います。
魔法なんて使った事ないんですよ、私は」
おっと、腕の中のマオリーちゃんがウトウトし出した。
勇者から逃げる為に空を飛び回って疲れてたんだろう。
そしてその緊張と恐怖から解放されたから、安心したのかな?
「この子を家まで送ります。
大通りを行った先の、あのお城へ行けばいいでしょうか?」
おばあちゃんがすくっと立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。
大きな杖を突き突き歩いてこちらを振り返り、私をニコニコと見つめている。
もしかして、ついて来いって言っているんだろうか。
「エリナさん、おばあちゃんが案内してくれるみたいなんですが、手を引いてあげてくれませんか?」
私が歩行介助したいところだが、腕にはこの子がいるからね。
小さな魔王様を送る為、私達はゆっくりと歩いて魔王城を目指した。
魔王城は静かだった。
ケルベロスやゴーレムみたいな門番もいないし、四天王の間のようなものもなかった。
おばあちゃんの歩みに合わせてゆっくりと、清潔感溢れる城内を進む。
すぐに玉座に到着。
こうもすんなりボス部屋に辿り着けて大丈夫なんだろうか。
あ、大丈夫じゃなかったわ。
がっつりマオリーちゃんが勇者に襲われてたんだった。
「誰かいませんか~」
大きな声で人を呼ぶも、何の返事もない。
おばあちゃんがトコトコと玉座の前まで歩いて行き、手に持っている大きな杖で床をコツコツと鳴らす。
リズムがついていたので、何かの合図のようだ。
と、玉座がゴゴゴゴゴと横にスライドして、隠し階段が出現。
おばあちゃんが先に降りて行ったので後に続く。
「たわけっ! 腑抜け! 馬鹿者! 恩知らず! 外道! おたんこなす!」
おばあちゃんが誰かを杖の先で叩きまくっている。
「も、申し訳ございません! 申し訳ございません!!」
そこにはおばあちゃんに土下座する4人の人物がいた。
「はぁ……、この人達は魔王軍の四天王です」
四天王? 勇者が攻めて来たってのに何してたの!?
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