9 / 12
09:マオリーの父親になるまでの経緯を説明
しおりを挟む
「勇者の聖剣、魔王殺しの剣に封じられていた魔王になり得る血筋の因子、魔王因子を取り込んでそのような姿になった、と」
「ええ、そうなんです」
勢い込んでジュモーグス王国からの行軍へ斥候、つまりスパイをしに行こうとしていたら、ちょうどハイエルフのおばあちゃんとそのお孫さんである、レイラさんとエリナさんに鉢合わせた。
私の様子を見に魔王城まで来てくれたところだった。
魔王因子を取り込んだ私の姿を見て、先代魔王陛下!? ってなったので、今までの経緯を簡単に説明していたところだ。
いきなり跪かれると困る。
認知症を患っていると思われるおばあちゃんは杖を放り投げて全速力で走って来たのだから非常に驚いた。
現在、エリナさんは終始びっくりされており、レイラさんは無表情でまじまじと私の顔を眺めている。
ニコニコ顔が印象的なレイラさんだけに、無表情で見つめ続けるのはとても居心地が悪い。
先代魔王陛下に仕えていた時の事を、何となく覚えているからだろうか。
「魔力吸収で魔王因子を取り込むなんて、よく思い付きましたね……」
あー……、これについては詳しく説明する必要があるのだろか。
出来ちゃいました、では済まないんだろうなってのは分かるんだけど、自分の身に起こった事を自分自身が信じ切れていないので、どうやって説明したものか迷ってしまう。
“よろしければ私の方から説明致しますが”
そっか、私の魔力を使う事で、アルフェを他の人にも見えるようになるんだったか。
説明してすんなりと信じてもらえるかは分からないけど、有耶無耶にするよりはいいかも知れない。
アルフェの存在自体が原因はレイラさんからのディープなキッスな訳だし。
“ただしハイエルフの2人のみへの説明に留めたいと思います。
マオリー陛下と四天王の面々のいない場所へ移動して頂きたいです”
うん、じゃあ移動しよう。
マオリーも一緒に行く、と少しだけ駄々をこねたが、すぐに戻るからと伝えて、新たに用意された筆頭宮廷魔術師用の私室へと場所を移した。
「初めまして、レイラ様、エリナ様。私はアルフェと申します」
私の目から見て、今までとアルフェの見え方が変わらないのだが、エリナさんが小さく驚きの声を漏らした事で、あぁ他の人に見える状態になったんだなと推測出来た。
アルフェは空中に浮かんだ状態で、ワンピースのスカートの裾を摘まんでお辞儀、カーテシーをしている。
「私はレイラ様から魔力・魔術・知識をこの方へ転写された際に生まれた存在です。
ご存じの通り、人族の脳とハイエルフの脳では構造が違う為、レイラ様の知識を司る司書のような存在としてマスターの補佐を務めております」
補佐というよりも私が指図を受けているだけのような気がしなくもない。
“…………”
いや、そこは否定してほしいところだし、無言をテレパシーで伝えられるという器用な事は別にする必要はないよね。
「へぇ、そんな事が出来るとは……。
あっ、おばあちゃん!」
レイラさんが手を伸ばしてアルフェを捕まえようとしているのをエリナさんが止めている。
「大丈夫です、私に実体はございませんので」
あ、そうなんだ。私の魔力で作られたホログラム的な存在なのかな。
「私を消したければ、マスターからそう指示を受けるか、もしくはマスターもろとも消し去る必要がございます」
さらっと恐ろしい事を言うな。別に用事が終わればまた私にだけ見える状態に戻るんだろうに。
「マスターと呼ばれているのですね。
あっ、そう言えばまだお名前を伺っておりませんでしたね」
「最初からバタバタし続けてましたからね。
ただ、この姿になってしまい、そしてマオリーの父親になると決めたので、元々持っていた名前は捨てました。
今はテーヴァス・イニティウム・ゲオルガングと名乗っています」
「まぁ! 初代魔王陛下のお名前ではないですか……。
思い切った事をされましたね」
ええ、してやられましたよ。
「私が提案し、マスターが自ら名乗られました」
いや、あれは完全にしてやられたと思っている。
「名前などどうとでもなりますし、今のお姿も元々のお姿に戻す事も出来ます。
マスターにとっては何も問題はございません」
「お姿を戻せるというのは、昨日の人のお姿に戻れるという事ですか?」
肯定しつつ、姿を人間へ戻す。
細胞レベルで魔力が浸透しているから出来るんだとか何とかアルフェが説明しているが、私自身は出来るから出来るんだという程度の理解しかしていない。
元は夢だと思っており、そして夢ではなく現実であると説明された後、今までの人生自体が他人の夢のようなものであると分かった今、私に残されるのはマオリーの事だけだ。
私は異世界召喚でオリジナルの私から複製された存在。
妻も娘も、私のオリジナルの妻と娘なのだ。
いや娘とはDNAでは繋がっていないけどね。妻の連れ子だし。
でも生まれる前から知っているし、自分の娘であると心から思っている。いや、思っていたんだが……。
家族を思う気持ちは当然まだあるが、その感情を持ち続けても虚しいだけなのではないだろか。
この気持ちすらもオリジナルの私のモノであり、私が思っているのはコピーされた気持ちなのではないか。
そういった葛藤から、血が繋がっている訳でもなく、赤子の頃から面倒を見ている訳でもないが、マオリーは本当の娘のように大事な存在へとなってしまったのだと思う。
“血は繋がっていますよ”
魔王因子を取り込んだ為にそうなのかも知れないが、血を分けたという感覚はないからな。
本当の娘のような存在ではあるが、本当の娘だとは思えない。マオリーはあくまで先代魔王の娘である。
おっと、そう言えば。マオリーがいない今、しっかりと確認しておこう。
「マオリーの母親はどうしているんだ?」
恐らく先代魔王と共に亡くなったのだろうと思うが、せめて母親だけでも生きていてほしいという思いから、どうしているんだという聞き方になった。
「現在国元にお帰りになって、静養中です」
国元というと、他国の姫君だったのかな?
マオリーだけを残して故郷に帰ったのか……。
私の表情が曇ったのを察したのか、エリナさんが説明してくれる。
「先代魔王陛下を目の前で亡くされて……、報復をする為に魔法を使われまして、勇者パーティーを退却させるまで追い込んだのですが、その影響でお身体が……」
何やら事情があるらしい。
あまり深く事情を知るのは憚られたので、暗い現状よりも明るい未来の話をしようと思う。
「魔王城へ向けてジュモーグス王国の軍隊が進行中らしいので、ちょっと行って殲滅して来ます」
エリナさんに全力で止められた。
「ええ、そうなんです」
勢い込んでジュモーグス王国からの行軍へ斥候、つまりスパイをしに行こうとしていたら、ちょうどハイエルフのおばあちゃんとそのお孫さんである、レイラさんとエリナさんに鉢合わせた。
私の様子を見に魔王城まで来てくれたところだった。
魔王因子を取り込んだ私の姿を見て、先代魔王陛下!? ってなったので、今までの経緯を簡単に説明していたところだ。
いきなり跪かれると困る。
認知症を患っていると思われるおばあちゃんは杖を放り投げて全速力で走って来たのだから非常に驚いた。
現在、エリナさんは終始びっくりされており、レイラさんは無表情でまじまじと私の顔を眺めている。
ニコニコ顔が印象的なレイラさんだけに、無表情で見つめ続けるのはとても居心地が悪い。
先代魔王陛下に仕えていた時の事を、何となく覚えているからだろうか。
「魔力吸収で魔王因子を取り込むなんて、よく思い付きましたね……」
あー……、これについては詳しく説明する必要があるのだろか。
出来ちゃいました、では済まないんだろうなってのは分かるんだけど、自分の身に起こった事を自分自身が信じ切れていないので、どうやって説明したものか迷ってしまう。
“よろしければ私の方から説明致しますが”
そっか、私の魔力を使う事で、アルフェを他の人にも見えるようになるんだったか。
説明してすんなりと信じてもらえるかは分からないけど、有耶無耶にするよりはいいかも知れない。
アルフェの存在自体が原因はレイラさんからのディープなキッスな訳だし。
“ただしハイエルフの2人のみへの説明に留めたいと思います。
マオリー陛下と四天王の面々のいない場所へ移動して頂きたいです”
うん、じゃあ移動しよう。
マオリーも一緒に行く、と少しだけ駄々をこねたが、すぐに戻るからと伝えて、新たに用意された筆頭宮廷魔術師用の私室へと場所を移した。
「初めまして、レイラ様、エリナ様。私はアルフェと申します」
私の目から見て、今までとアルフェの見え方が変わらないのだが、エリナさんが小さく驚きの声を漏らした事で、あぁ他の人に見える状態になったんだなと推測出来た。
アルフェは空中に浮かんだ状態で、ワンピースのスカートの裾を摘まんでお辞儀、カーテシーをしている。
「私はレイラ様から魔力・魔術・知識をこの方へ転写された際に生まれた存在です。
ご存じの通り、人族の脳とハイエルフの脳では構造が違う為、レイラ様の知識を司る司書のような存在としてマスターの補佐を務めております」
補佐というよりも私が指図を受けているだけのような気がしなくもない。
“…………”
いや、そこは否定してほしいところだし、無言をテレパシーで伝えられるという器用な事は別にする必要はないよね。
「へぇ、そんな事が出来るとは……。
あっ、おばあちゃん!」
レイラさんが手を伸ばしてアルフェを捕まえようとしているのをエリナさんが止めている。
「大丈夫です、私に実体はございませんので」
あ、そうなんだ。私の魔力で作られたホログラム的な存在なのかな。
「私を消したければ、マスターからそう指示を受けるか、もしくはマスターもろとも消し去る必要がございます」
さらっと恐ろしい事を言うな。別に用事が終わればまた私にだけ見える状態に戻るんだろうに。
「マスターと呼ばれているのですね。
あっ、そう言えばまだお名前を伺っておりませんでしたね」
「最初からバタバタし続けてましたからね。
ただ、この姿になってしまい、そしてマオリーの父親になると決めたので、元々持っていた名前は捨てました。
今はテーヴァス・イニティウム・ゲオルガングと名乗っています」
「まぁ! 初代魔王陛下のお名前ではないですか……。
思い切った事をされましたね」
ええ、してやられましたよ。
「私が提案し、マスターが自ら名乗られました」
いや、あれは完全にしてやられたと思っている。
「名前などどうとでもなりますし、今のお姿も元々のお姿に戻す事も出来ます。
マスターにとっては何も問題はございません」
「お姿を戻せるというのは、昨日の人のお姿に戻れるという事ですか?」
肯定しつつ、姿を人間へ戻す。
細胞レベルで魔力が浸透しているから出来るんだとか何とかアルフェが説明しているが、私自身は出来るから出来るんだという程度の理解しかしていない。
元は夢だと思っており、そして夢ではなく現実であると説明された後、今までの人生自体が他人の夢のようなものであると分かった今、私に残されるのはマオリーの事だけだ。
私は異世界召喚でオリジナルの私から複製された存在。
妻も娘も、私のオリジナルの妻と娘なのだ。
いや娘とはDNAでは繋がっていないけどね。妻の連れ子だし。
でも生まれる前から知っているし、自分の娘であると心から思っている。いや、思っていたんだが……。
家族を思う気持ちは当然まだあるが、その感情を持ち続けても虚しいだけなのではないだろか。
この気持ちすらもオリジナルの私のモノであり、私が思っているのはコピーされた気持ちなのではないか。
そういった葛藤から、血が繋がっている訳でもなく、赤子の頃から面倒を見ている訳でもないが、マオリーは本当の娘のように大事な存在へとなってしまったのだと思う。
“血は繋がっていますよ”
魔王因子を取り込んだ為にそうなのかも知れないが、血を分けたという感覚はないからな。
本当の娘のような存在ではあるが、本当の娘だとは思えない。マオリーはあくまで先代魔王の娘である。
おっと、そう言えば。マオリーがいない今、しっかりと確認しておこう。
「マオリーの母親はどうしているんだ?」
恐らく先代魔王と共に亡くなったのだろうと思うが、せめて母親だけでも生きていてほしいという思いから、どうしているんだという聞き方になった。
「現在国元にお帰りになって、静養中です」
国元というと、他国の姫君だったのかな?
マオリーだけを残して故郷に帰ったのか……。
私の表情が曇ったのを察したのか、エリナさんが説明してくれる。
「先代魔王陛下を目の前で亡くされて……、報復をする為に魔法を使われまして、勇者パーティーを退却させるまで追い込んだのですが、その影響でお身体が……」
何やら事情があるらしい。
あまり深く事情を知るのは憚られたので、暗い現状よりも明るい未来の話をしようと思う。
「魔王城へ向けてジュモーグス王国の軍隊が進行中らしいので、ちょっと行って殲滅して来ます」
エリナさんに全力で止められた。
0
あなたにおすすめの小説
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
異世界ランドへようこそ
来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。
中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。
26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。
勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。
同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。
――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。
「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。
だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった!
経営者は魔族、同僚はガチの魔物。
魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活!
やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。
笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。
現代×異世界×職場コメディ、開園!
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる