幼女魔王がパパと呼ぶ

なつのさんち

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12:魔王と勇者の父親

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 結子ゆいこ、10歳。妻の連れ子。
 私の親友と妻の子供。
 親友が不治の病に侵され、妻と生まれたばかりの娘を託された。
 お前なら幸せにしてくれるはずだと、だから頼むと。
 そして私は妻と結婚し、結子の父親となった。
 必ず幸せにすると。立派に育ててみせると。親友に誓ったのに。
 結子は今、私の胸で泣いている。

「あのね、気付いたらね、真っ暗な部屋にいてね。
 お前は魔王を倒す為にこの世界に来たんだって。魔王を倒せば元の世界に戻してやるって。
 だから、言われた通りにしてたの。馬車に乗れって言われて乗ったの。
 そしたらお父さんの声が……」

 異世界召喚の術の結果、私だけでなく結子までこの世界に来てしまったのか。

“来たというか、まぁこの世界にクローンとして作られてしまったと言うか”

 決定。ジュモーグス王国を消滅させる。

“その前に一度魔王城に戻られては?”

「何事だ!?」

 結子の泣き声を聞きつけて様子を見に来た兵士達が騒ぎ始めた。
 地面に兵士と衛生兵が倒れているからな、不審に思うのも仕方ない。
 この場でこの軍隊を蹴散らすのは簡単だけど、結子の目の前でそんな事をする訳にはいかない。

「結子、ちょっと事情があってね。
 お父さん、ちょっと変身しちゃうけど驚かないでくれると嬉しい」

「……?
 うん、何があってもあたしはお父さんの事、大好きだよ?」

 何という優しい娘だろうか……。
 この子の為なら私は、魔王にもなろう!

“いや元々なってましたけどね”

 結子を抱っこしたまま、人間の姿から魔族としての姿へ変わる。
 目の前で人の姿が1.5倍ほど大きくなり、見た目も魔族のそれとなったものだから、兵士達が慌てふためいている。

「敵襲! 敵襲だ!!
 魔族が勇者を狙いに来たんだ、勇者を守れー!!」

 勇者だと?
 結子は優しい子だから、国の為にと頼まれれば戦ってしまうかもしれん。
 しかし私がここにいる以上、そんな事はさせん、絶対にさせんぞ!

“あの、やり過ぎないようにして下さいね?”

 何もせん。この場を離れるだけだ。
 結子の体勢を抱っこからお姫様抱っこに変える。
 目が合った。その瞳に怯えは感じられない。

「あとで、ちゃんと説明してくれるんだよね?」

「もちろんだとも。
 それより、ちょっと空を飛ぶからな」

「えっ!!?」

 翼をはためかせ、飛んで来る矢を打ち落とす。
 魔法による攻撃はアルフェが自動で防いでくれている。
 しかし飛ぶとは言っても、マオリーの身体と違い結子は生身の人間だ。
 高低差や速度で内臓を傷付けてしまうかもしれない。

“ちゃんと魔法でお守り致しましょう”

 頼もしい限りだ。
 では、行こうか。

「と、飛んだぞ! 矢を放て! 魔法を撃てー!」

 そんな声はすぐに遠ざかり、軍隊を遥か彼方へ取り残し、私達は魔王城へ向かった。
 私の胸にがっしりと両手を回して離さない結子。
 大丈夫、私がお前を守ってやるとも。


 魔王城へ戻ると、すぐにマオリーとレイラさんとエリナさんが出迎えてくれた。
 事情を説明する為、私の私室へ入る。
 心配させないようマオリーに断ってから、人間の姿へ戻った。
 今は結子の慣れた姿でいてやりたい。

「パパ、その子、誰?」

「私の娘なんだ。
 マオリーに言ったよね? 私は別の世界から来たと。
 呼び出された場所は別々だったけど、この子も一緒に連れて来られたみたいなんだ」

「ふーん」

 ちょっと面白くなさそうなマオリーの表情。嫉妬かな?
 父親を独り占め出来ないからかな。でも、その分を差し引いても新しい友達が出来る喜びは大きいのだという事を教えてあげたいものだ。

「結子、この子はマオリー。
 マオリー、この子は結子だ。
 2人とも、仲良くな」

「初めまして、マオリーちゃん。そのしっぽ可愛いね! 触ってもいい?」

「えっ!? う、うーん。いい、けど……」

 大人はきっかけを作ってやるだけでいい。あとは子供同士の方が上手く行くだろう。
 レヴェリーに頼んで私達のテーブルから少しだけ離れた場所にもう1つテーブルを用意してもらい、飲み物とお茶菓子を用意してもらう。
 レイラさんやエリナさんに話す内容を、結子に聞かせたくないからだ。


「……なるほど。おかしな話ではありませんね。
 召喚する際に同じベッドで寝ていたから、範囲座標内に2人とも入ってしまっていて、術式自体が完璧ではなかったから離れ離れになってしまったと」

 エリナさんが私が話した内容を整理していると、レイラさんも大きく頷いている。
 うーん、正直このおばあちゃんがどこまで理解してくれているのか想像出来ないでいる。

「何にしても、お2人は魔王城で暮らすしかないですね。
 結子ちゃんがそれを理解されるかどうか……」

 そうだな、お前はクローンだなんて言ってもまだ理解出来る年齢ではない。
 いや、理解出来たとしても、受け入れる事なんて出来ないだろう。
 しばらくは、いや出来ればずっと、その話は伏せておきたい。
 となると、元の世界へと帰れない現状をどう受け入れてもらうか、だな。

“その点は意外と何とかなるのではないでしょうか”

 アルフェが結子とマオリーの方を見つめる。
 2人とも笑顔だ。仲良くやっていけそうだな。

「破棄優先」

 ん? どうしました、おばあちゃん。

「召喚魔法」

「あ、そうですね。
 これ以上異世界召喚魔法の犠牲になる人が増える前に、召喚魔法そのものを破棄させなくては」

 なるほど。そういう事か。

「でしたら、ちょっくら行ってジュモーグス王国をこの世から消滅させてきますよ」

「それはさすがにやり過ぎです! 悪いのは召喚魔法を使うよう指示した人間と、実際に行使した人間だけです。
 王国で暮らしている国民全てが悪い訳ではありません」

「冗談ですよ。
 ですが、二度と異世界から勇者を召喚出来ないよう徹底的に破壊して来ます」

「頼んだ」

 レイラさんが私の両手を取り、ぎゅっと握って来た。
 おばあちゃんが責任を感じる事はないですよ。悪いのは召喚魔法を使った人達なのですから。
 召喚魔法をどこで行っているのか、どれだけに人間が関わっているのかは分からないが、アルフェに任せておけば大丈夫だろう。 

“お任せ下さい”

 笑顔でカーテシーをするアルフェ。
 よし、じゃあ2人の娘に留守番をお願いしないとな。
 ちょっと愚図られるかもしれないが、我慢してもらわないと。

 これも、お父さんパパの大事なお仕事だからね。

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